2人の少女は終わってしまった世界を旅する

月夜るな

雨降る花畑


 世界の終わりって何だと思う?

 世界で戦争が勃発して相打ちで全ての人間が死んだ時? はたまた、空から謎の物体が降り注ぎ地球に暮らす全てのものを溶かしてしまった時? それとも恐竜時代の終わり……隕石が降り注ぎ地球が滅んだ時?


 どれもあり得ない話ではない。

 他にも世界規模の地震で崩壊するなんてこともあるかもしれない。世界が終わる時、とは非常に曖昧だ。でもいつ来てもおかしくはないものでもある。そういった災害とかは唐突に来るものだから。


「……」


 黒ずんだ空にぱらぱらと降り続ける雨。

 この雨は至って正常で普通のもの。触っても害はないし、溶けることもない。こんな世界でも雨は降るらしい。


「ここも……誰も居ない、か」


 期待はしてなかったけど。

 一面に広がる花畑には虫一匹も飛んでいない。青や黄色に白とカラフルな花たちはそんなことを気にせず蕾を開き、綺麗な花びらを見せている。


「ふぅ」


 こんな世界でも雨は降るし、花も咲くようだ。あれ……? さっきも似たようなことを言ったような気がする。……まあここには私しかいないからそんなこともあるだろう。


「自然は生きているんだなあ」


 ここまでの道中、人っ子一人、虫すら見なかったのに植物たちは多く存在していた。だかこうやって私も生きていられる。

 だって植物が居なければ、酸素を作れない。酸素がなければ人間である私は生きていけない。そのまま窒息してあっさり死んでしまうだろう。人間とはそんなものである。


 相変わらず空はどんよりとしていて雨も降っている。もちろん、私は傘をさしているので濡れることはないけど。……大雨と強風とかが混ざると傘は意味を成さなくなるが。


「スフィア」


 そんなことを思っているとふと後ろから声がした。いつもの聞き慣れた声。


「どうかしたの? ルナ」

「ん。また外出てるの?」

「時々自然を感じないとね」

「そっか」


 そう言うと少女……ルナはちゃっかり私の隣に移動して同じようにしゃがんで花を見始めた。


「世界は終わっても植物は無事、なんだね」

「そうね。よく分からないけど……でもまあ、植物が生き残っているから私達は生きていられる訳だけど」

「ん」


 終わった世界。

 私達はそう呼んでいる。気付いた時には既にこの世界の文明は滅んでおり、私は取り残されていた訳だ。ルナも同じだろう。

 ルナの場合は道中で瀕死になっていたところを助けたというのが始まりだった。なんやかんやあって、私と共に行動することになりそれなりの時間が過ぎたけど、仲良くなっていると思うよ?


「今何時だろ……」


 スマホ……を見ても圏外なので意味はないけど、一応充電があるうちは生きている。というか充電は一応できているので見ることは出来る、


「11時過ぎ、か」


 スマホの画面には11時を少し過ぎたくらいの数字が表示されている。


「毎度思うけど……圏外なのに持ってる意味、ある? 時間も正しいものとは限らないし」


 そう言うのはルナだ。私のスマホを隣から覗き込んでいた。


「まあ、目安として、ね。何となくこの時間って言うのは分かるし」

「それはそうだけど」


 どんよりした空とはいえ、普通に明るい方なのでまだ昼間ということくらいは分かる。夜になればもっと真っ暗になるからね。


「こう見ると、さ。地球以外の惑星は生きているんだなって」

「……月は惑星じゃなくて衛星だよ? 太陽は恒星だし」

「そうだっけ?」

「そうだよ」

「そっか。まあ冗談だけど……でもさ、恒星も衛星も生きている訳でしょ」

「まあそれは……うん」


 不思議なものだなって思う。

 地球は……ご覧の通りだけど、太陽の光は届いてくるし夜になれば月だって姿を見せる。太陽も月も無事なら太陽系の他の惑星も同じなんだろうなって。


「車、戻ろっか」

「ん」


 十分自然を感じれたのでそう提案するとルナは頷いた。

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