第11話 ライナン星系激戦の行方

 そして時間は流れ、交戦宙域が近付いてきた。


「大佐、敵本隊と駐留艦隊まであと10分です」


 航法士が報告したが、これは最大射程での時間だ。


「了解した。各部署、準備を整えろ。新造艦と旧艦の隊列の入れ替えを完了させろ」


「了解しました」


 ダレン大佐が命令すると、各部署、艦から返事が返ってきた。


 ダレン大佐は深呼吸をし、自分が今何をするべきかを考えた。


 彼は自分がこの任務に適任かどうかを疑った。

 しかし、彼は自分に言い聞かせた。


「俺はできる。俺はこの艦隊を勝利に導く。俺はこの戦争を終わらせる!」


 彼はそう信じていた、いや、自己暗示を掛けたのだ。


「大佐、主砲発射準備完了です」


 程なくして戦術士が報告した。


「了解した。艦内の全クルーに告げる。本艦はこれより主砲を発射する。全員主砲発射に備えよ!これは訓練ではない。1度全電源が落ちる。無重力に備えよ!目標は敵本隊中央部。発射せよ!」


 ダレン大佐は照準を指示し、確認すると戦術士に命令した。


「了解しました。発射します。5、4、3、2、1、ファイヤ!」


 戦術士がカウントダウンの後、主砲発射用のトリガーを引いた。


 すると4つに開かれた砲身の中に貯められたエネルギーが集束され、フェニックスクラウンの主砲から超陽子共鳴ビームが発射された。


 その光は太陽よりも眩しく、宇宙に轟音を響かせ、その光の奔流は敵本隊の中心部に襲い掛かり、見方のすぐ近くにまで達していた。


 ビームがターゲットの敵艦に当たると、そこから光が弾け細かい網のように光が暴れ狂い、次々と敵艦を飲み込んでいく。


 敵の中心部の艦は精々握りこぶし大の破片に分解され、7割を消失させた。


 光に包まれた敵艦は一瞬だけ耐えるも、すぐさま爆散し、或いは枯れ葉を握りつぶすが如く細かく砕けていった。

 渾身の一撃を放った側のフェニックスクラウンだが、停電に見舞われた。

 艦内は一瞬真っ暗になるも、数秒後に非常電力に切り替わったが、しかしながらこれは想定内の出来事だ。


 ダレン大佐はそのままブリッジで指揮を執った。

 彼は残った3割の敵本隊の残りのうち、7割程がフェニックスクラウンに襲いかかってくると予測していた。

 今のフェニックスクラウンは、砲身やエネルギー関連装置の冷却にほぼすべてのエネルギーを使わざるを得なく、生命維持に必要な分以外が冷却に回されており、慣性で進んでいるに過ぎない。

 進路変更も不可だった。


「大佐、敵の7割の消失を確認。しかし敵本隊の残存艦の大多数が我々に接近して来ます」


「了解した。新造艦のうち1番から20番艦は旗艦護衛艦隊として旗艦を死守せよ!以後護衛艦隊はマクスロイ艦長が指揮せよ!新造艦の21番艦以降は敵本隊の残存艦と交戦せよ。尚21番艦に艦長がいれば分岐艦隊として指揮せよ!いなければ22番艦以降に指揮権を譲渡せよ!旧艦は敵を追撃する新造艦を援護せ。旧艦の戦艦のみによる分岐艦隊の指揮は1番艦の艦長、いなければ2番艦以降へ指揮権を譲渡せよ!、同様に巡航艦隊、駆逐艦隊も同様に1番艦の艦長が、いなければ以降の若番艦の艦長が指揮せよ!駐留艦隊は新造艦と逆側から敵本隊の残存艦を追撃し、戦闘能力か防御力を失った艦は防御に専念せよ!」


 戦術士が報告するとダレン大佐は直ぐに命令を出した。

 大まかな指示を出し、即席で艦種により分隊と分隊指揮官を決め、その分艦隊の指揮を任せた投。

 ダレンが指揮する第12特別輸送艦隊の艦種により安直な符号で呼んでいる。

 もちろん正式な符号もあるが、いちいちKDE28075は・・・等は長くてやっていられないので、艦種に対し1番からの通し番号が自動で割り振られていた。

 

「了解しました。命令を受理し、実行します」


 各部署や艦から返事が返ってきた。 

 何故今現在もダレン大佐が駐留艦隊へ命令を出しているかと言うと、旗艦が大破し、大佐以上の者と連絡が付かなくなっていた。

 どうやったのかはともかく、情報によると指揮艦がことごとく体当たりにて撃破されたのだ。

 真っ先に沈められたのは旗艦だった。

 正確には数艦に体当たりが成功すると、動きが変わったそうだ。


 旗艦の次に各分隊にいる少将以上の指揮官の乗る艦が沈められ、最先任が戦艦の艦長となった。

 戦艦の艦長は少佐から大佐で構成され、半分の艦が大破した段階で大佐が指揮する艦は全滅しており、この星系にいる航宙艦の指揮権を持つ中で最先任がダレンとなったからだ。


 そしてダレン大佐の指揮の下、敵本隊の残存艦との交戦が始まった。


 ダレン大佐は明かりの消えたブリッジで指揮を執った。

 元の3割にまで減った敵艦を問題なく撃破することができると確信していた。


 駐留艦隊は敵本隊との戦闘で大きな損害を受けていたが、それでも戦意を失わなかった。


「倒された駐留艦隊の敵討ちを!」


 新造艦のクルーも士気は高かった。


 まだ全滅していないんだがなあと思うも、そこは突っ込んだらだめだろうな!ダレンはぼそっと呟いた。


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