第5話  ミズリアとダレンの接点

 約10年前、ダレンが士官学校を卒業した頃の話をしよう。


 ・

 ・

 ・


 配属は参謀要員で、第15駐留艦隊の参謀の1人を努めたが、司令官は平凡な男で、戦略や戦術よりも政治的な駆け引きが得意だった。

 コネを使い、戦闘指揮の実力よりも、舌先三寸で出世してきた男だった。

 異星人との戦闘で、当直の参謀として再三に渡り当時少尉だったダレンが、待ち伏せを警告するも無視された。

 何度も警告するダレンが鬱陶しくなり、待ち伏せ攻撃をされる少し前に自室待機を命じた。

 

 その後敵による奇襲にあい、旗艦に侵入された。

 トイレと食堂の間しか行き来できなかったが、侵入した敵と遭遇。

 銃を取り上げられており、徒手空拳で闘う。

 ミズリアが見たという怪我をこの時負い、侵入した敵の半分をダレンが倒すも重症を負ってそのまま本国送り。

 しかも見え据えた罠に掛かったのは、参謀の怠慢だとされ、敵を撃退した功績から他の参謀役程ひどくはなかったが、譴責初文となり出世街道からはじき出された。

 そんな中、怪我の治療を終え、リハビリを兼ねて旅行をしていた時ににロッテンウルと出会う。

 ロッテンウルは家族と共に休暇を利用して旅行中だった。

 ロッテンウルが家族と共にバスに乗って移動している途中、そのバスは賊に襲われた。

 偶々ダレンがその現場に居合わせたのだ。

 その時同じバスに家族と一緒に乗り合わせていたのがミズリアだった。

 自分達を助けてくれたダレンが、キラキラと輝く超絶イケメンに映っていた。

 異常な状態に、恋したのだ。

 しかし、当時まだ10歳のミズリアは異性として相手にされず、ただの小さいおませな女の子として軽く扱われていた。

 名前を聞く前に彼は去っていった。

 聞こえてきた話から、彼は航宙艦の少尉と分った。

 左肩には酷い傷があった。

 戦闘で負った傷だと言い、古傷から出血したからミズリアも消毒と包帯を巻くのを手伝った。

 去ったのは正確ではない。

 どうやら偉い軍人がいて、手配したヘリに乗せて病院に送ったと分った。

 その時その偉い人も一緒に行ってしまい、軍事機密にされ誰が関わっていたのか分からなかった。

 ミズリアは会えば分かる!そう思っていたが甘かった。

 会いたい一心で勉学に励んだ。

 小柄な体は体力はあるも、肉弾戦はからっきしだった。

 あの人にお礼を言いたい!

 あの人の役に立ちたい!

 その思いが、やがて士官学校に足を踏み入れさせた。

 実はダレンとは1度士官学校で会っている。

 偶々士官学校を訪れていたダレンが格闘技の訓練について特別講師をしたのだ。

 ミズリアは小柄な自分が身を守るアドバイスを直接受けた(航宙軍で男性と比べての事)。

 その時ミズリアは15歳。

 あの人は出世街道を進んでいるのだと思い、講師について当時中佐だったダレンは工廠勤務なのだと聞かされ、興味を持たなかった。

 髪型も違うし、あの人とは違い軽薄だった。

 最上級生をナンパしていたり、訓練と称しやたらと触れてくる!【この事は真面目にやっておりミズリアの自意識過剰】

 生徒5人で一斉に向かうも、ただの一撃も当てられなかった。

 確かに強くはあったが、あの人とは気並べられないくらい軽薄な男に思えた。

 しかし、妙に気になりはした。

 肩に傷がありませんか?

 そう聞けば王子様がダレンだと分かったのに、微塵もあの人=ダレンとは思わなかったのだ。

 ダレンが偶々休暇で校長を訪ねたが、子供達をもんでくれと頼まれ、昔色々やらかした迷惑もあり引き受けた時の事だ。


 ミズリアがあの時の特別講師がダレンだったと知るのは先の話し。

 ミズリアはミズリアで、【あの人】を見つける事が出来、副官にまでなれた事を僥倖とし、どうやったらこの人は自分に振り向くかしら?と、女性のブリッジクルーがダレンに向ける視線もあり、ライバルが多いわね!と、それでも焦らず、こちらからは告白せず、ダレンから好きだと言わせたいなと思うミズリアだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る