26話。
「なんっ……何なんだよお前はぁ!!!」
「生憎名乗る名を持ち合わせておりません、今の私は
「こ……っの……!!!」
奴隷商は最初は恐怖に怯えた表情だったが、吸血鬼の彼が敵前でありながら剣を納めたこともあり、雑魚に名乗る名前は無いと馬鹿にしているように聞こえたのだろう。今度は怒りで顔を真っ赤にさせている。まぁ実際は本当にまだ名前が無いだけなのだが。
ちなみに私はこっそりと第一階層に増設した部屋でオリゴス、そして
少し物思いに耽っていると、何やら奴隷商側が騒がしくなった。
「テメェら、俺にありったけの
どうやら連れて来た約二百名のうち数十名は魔法が扱える者だったらしく、奴隷商の長らしき男は全員に
「ぐぉぉおおおおおおおお!!!!!!!」
男の苦痛に呻く声が響く。人間というのは受けられる
一気に様々な
……す、素晴らしい!!!今まであそこまで大量の
興奮して目に炎を宿しきらきらと輝かせる私を見て、
「はぁ……はぁっ……っくくく、どうだ見たか!これが俺のとっておきだ!こうなった俺はもう誰にも止められねえ!後悔しても遅えからなクソ爺!!」
筋骨隆々、いや、最早筋肉達磨と化した男は勝ち誇った顔で執事と
「ぶははははっ!!!どうした爺、俺のこの姿を見て怖気付いたか?最初から俺達の方に付いたままなら多少は融通効かせてやったのによぉ!!テメェは俺を舐め腐った代わりに命で支払って貰うからなぁ!!!!」
「……言いたいことはそれだけですか?」
「…………は?」
銀髪の翁がただ一言だけ放った言葉に、男は愉快気に歪めていた表情を固める。勝ち誇った所に冷水をぶち撒けられたのだ、そんな表情をするのも無理はない。しかも、翁の顔には恐怖も怒りもなく、呆れ。駄々をこねる子供を見るような諦観。くだらない、と言いたげな様子が男の神経を逆撫でした。そして何を言われたのかようやく頭が理解したのか、赤黒く変色した顔を更に赤く染めながら動き出した。
「テメェ……ぶっ殺す!!!!!」
そう言って常人を遥かに超える速度で駆け出した先は、当然先ほどから怒りを買いまくっていた老人……ではなく、特別な商品と評されていた
「ひゃーっはっはっは!!!!こいつらを守ってるってことは何か俺達が知ってること以外の価値があるんだろ!!ならいっそ殺────」
「
「っな、ぁ!?!?」
森人達の下へと一息に詰め寄る男がご丁寧に女二人を狙う理由を喋りつつ、その丸太の如く太くなった腕を振り上げ今にも命を刈り取ろうとした時、突然男の身体が老人の方へ向き直り、振り下ろした拳は空ぶったことで勢いそのままに地面へと叩きつけられる。拳は土へとめり込むだけでなく、周囲に亀裂を走らせその威力を知らしめる。
その拳が本来振り下ろされていたはずだった
そして思うような結果に至らなかった理由が目の前の執事であることは明白であり、男は敵意を剝き出しにしたまま心底忌々しそうに睨み付ける。
「ジジイ……!!」
「おや、腰を痛めでもしましたか?それはいけませんな、まだまだ若いというのに。」
彼は誰がどう見ても煽ってることが分かるセリフを極めてにこやかに言い放つ。男は額に青筋を浮かべ、完全に余裕はなくなっているようだ。
「さ、掛かって来なさい。
片手を前に差し出し、くい、と軽く引いてみせる。先手は譲るとばかりに待ちの姿勢を見せる彼に、男は怒りの余り我を失い、
────────
観戦席という名の別室はマジックミラー号的なイメージです。
あと今更ですが、もうちょいダンジョン内政回をじっくりやるのと吸血鬼名付け回を先にやっとけばよかったな~と思いました。本当に今更ですが。男だとか彼だとか呼び方が分かりにくくてすみません。
一応、
彼、老人、吸血鬼、老執事、執事→全部お爺ちゃん執事
男、奴隷商→奴隷商の長
という書き分けをしてるつもりです。
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