18話。
辺り一面、真っ白い部屋の中で私は一人、物思いに耽っていた。何故ならば冒険者達の記憶から得られる物が、私がこの姿になる前の時に持っていた知識とほとんど相違がなかった、いや、なさ過ぎたからである。
てっきり私は以前の場所とは似てはいるものの、根本的には何かが違うような世界に新たに生を得たのだと勝手に想像していた。例えば私の知らない土地だとか、私の知らない死霊術だとか、私の知らない魔術だとか、私の知らない
しかし蓋を開けてみれば、土地、魔術、技術、全て私の記憶にある物と一致した。どうやら私は異世界ではなく、私の知る世界、私が生きていた世界にて第二の生を得たらしい。それはそれで色々と疑問が残る。そもそも今は私の死からどれくらいの年月が経っているのか?私の築いた
冒険者達の記憶を読んでもダンジョンとは突発的に出現し、それぞれに個性のある迷宮のようなもので、何故ダンジョンが発生するのか等根本的な部分に触れる知識は一切なかった。彼らは知識の探究者という訳でもなかったし、さもありなんといった所か。
とりあえず冒険者達の大まかな記憶の確認は終えたところで、早速作業に取り掛かろうと思う。まずは大本になる魂を選ぶ、まぁこれはリーダーだった男のものでいいだろう。人間の中でも特に強い部類に入るくらいだったし、オリゴスを見ても完全に戦意喪失しなかったところを見るにもしかしたら英雄に足る器だったかもしれん。それなりの経験を積むことができたなら、という条件は付くが。
まずはこの魂から不要な記憶を削り取る。生まれてからの生い立ちや冒険者稼業の大半の時間は不要だからごっそりそぎ落とそう。剣技や
次は残り二人の男からも不要な記憶を削り、役に立ちそうな物のみ残す。
最後に
これで魂への下処理は無事に終わった。後は元となる魂の空いた箇所に他の魂を詰め込む。切り取る際は慎重に扱わなければならないが、入れる際には少しだけ適当でも一応完成したりはする。しかしそれで機能に齟齬が発生すれば苦労が水の泡なため、ここも丁寧な処理を心掛ける。感覚としては、箱の中に手で持てるような粘度の高い液体を詰めていくような感じだ。境目となる部分には魔力で薄く膜を張り、いきなり混ざり合わないように境界線を作っておく。膜を張らずに詰め込むと、混ぜ始める前に記憶の一部が関係のない別の記憶と結びついてしまう場合がある。一度膜を張った状態で元となる魂の内側に詰めることで別の魂の入り込む土壌を整えられ、魂に確固たる記憶として刻むことができるのだ。
すべての魂を空いた箇所に隙間なく詰め終え、膜を越えて別の魂と混ざり合うことがないと確認すれば、魔力の膜を消して魂の中身をゆっくりと均一に混ぜていく。この時点で魂が変色したり、弾け飛んだりした場合は拒絶反応が起きているという証拠なのだが、四つの魂は無事に溶けて一つの魂へと収まった。よほどこの四人は相性が良かったらしい。そんなメンバーで冒険者をしていたのだから、生前の彼らは余程運が良かったのだろう。今となっては運の良さは関係ないが、死後も彼らは一つになって生きていけるのだからきっと幸福に違いない。
後は受肉するための器を用意するのみ。これは非常に簡単で、元にしたい器を用意した後、その器の周囲に他に使用したい物があれば適当に並べるだけ!実に簡単だ。というわけで今回はリーダーの男の肉体を器に、残りの三人の肉体を適当に置く。使用する物は器に触れていなければならないため、適当に身体の一部を重ねておけばいい。
さあ、全ての準備は整った。あ、その前に最後に自分の魔力ちょっと足しておこう。
さあ、全ての準備は整った。魂をこの器に入れることで、今回の術は完成する。術が完成した後どのような姿が現れるかは不明なのが唯一の難点だが、人型の器を用いた場合はまず間違いなく人型の姿で現れる。だが性別も性格も生前の物とは程遠いことがほとんどである。
新たに仲間に加わる者の誕生を心から祝いながら、私は魂を器へと捧げた。
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お待たせしてすみません、ようやくの更新です。
用事が積み重なった結果、三連休明けになっちゃいました。
また、更新が滞っているうちになんと、10000PV行きました!
正直こんなに読んで貰えると思っていなかったので、とても嬉しいです!
今後とも拙作をよろしくお願いいたします!
あと前回の告知通り、次回は新しい仲間加入予定です。
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