第225話 さらば
「で、結局来ちゃうと」
自家用ジェットからアメリカの地に降り立った。
「自由の国アメリカだよ〜!」
今回アメリカに来たのは俺と桜の二人。
他は日本に残った。犀の護衛の為に一人残しておこうと思ったんだけど、まさか桜以外全員残るとは。
よほどアメリカに来たくないらしい。まあ、俺も渋々だしな。観光もする予定はないし。桜はそこそこ楽しんでるみたいだけど。
「まさか大統領もこんなにあっさりオッケーするとは思ってなかっただろうね〜」
「まあ、生放送の場で謝罪して、上層部は自分を含めて全員更迭するみたいだし。もう良いでしょ。まだ同じ事をしようとしたら、次は警告なしに隕石ズドンだ。それは言っておいたし、次の旗振り役に期待しよう」
「期待薄だと思うけど〜」
「俺からしたらどっちでも良い事だし」
次は一般人の保護なんてしないし、線引きも緩くなってる。これからのこの国は大変だぞー。
アメリカからどんどん企業は撤退したりしてるからな。経済的にも大打撃だろう。いつ俺に隕石ドッカンをやられるか分からないところに住みたいと思わないよね。
逆に日本には色んな所が参入してきてる。これが良い事なのか、悪い事なのか。優秀な人達が日本に流れてくるのはいいけど、まずは自国民の事を考えた政治をしてもらいたいもんですな。
俺のせいって言われたらなんにも言えないんだけど。とりあえず露骨に外国人を優遇しまくるのは無しにしてもらいたい。
俺が異世界に転移する前はそれで結構問題になってたから。
そんなこんなでアメリカにある特級の狭間に到着。因みに、さっきまでの話はアメリカ側が用意してくれた送迎車の中で行われてる。
俺と桜が英語でペラペラと話すもんだから、案内する人と運転手さんは冷や汗を流しっぱなしだ。これで俺達がアメリカの事を心底どうでも良いと思ってくれたら良いんだけど。
これ以上面倒事があったら容赦はしないよって。
「そう思ってたんだけどなぁ」
「あはは〜! 全然歓迎されてないね〜」
車を降りたらデモ隊みたいなのがたくさん。案内者さんは気絶しそうだぞ。
なんかプラカードみたいなのに、色々書かれてる。『守銭奴』だとか『人命よりお金を優先した』だとか『悪魔』だとか。最後は間違ってないな。
後は単純にアジア人を馬鹿にするような感じの何かしらが。
警察も出動して制圧に動いてるけど、物凄い数がいますねぇ。こういうのは俺が来る前に対処しておくべきでは? まだ俺の事を舐めてるのか。
ここまでくると感心しちゃうね。
「まあ、良いか。どうでも」
「良いの〜?」
「ああ。帰るぞ」
「ういうい〜」
せっかく大統領さんが公の場で謝って、俺を招集したのにね。まあ、それは自分達の対応が悪かったから自業自得だとしても、国民の大半は俺を呼べって言って、暴動寸前だったんだろ?
で、いざ呼んだらこれである。一体君達は何がしたいのかね。呼んだらアジア人に助けられるのは気に食わない、呼ばなかったら、国家の危機なのに何をしてるんだと、上層部を批判してデモ運動をする。
これぞ感情で動く人間って感じがするね。
「じゃあそういう事で」
「えっ?」
俺は桜を掴んで空港に転移した。望まれてないのに攻略する意味なんてありませんね。
あの狭間が崩壊したら、アメリカ大陸両方やばい事になるだろうけど。知ったこっちゃないね。
「あれ? 織田さん、もうお戻りで?」
「うん。出せる?」
「はい。既に燃料の補給や、航路の確保は済ませてあります」
「じゃあお願い」
飛行機の中に入ると、パイロット二人がびっくりしてた。まあ、流石に戻って来るのが早すぎるもんね。
さらばアメリカ。もう来る事はないでしょう。
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