第144話 九份


 「はい。お疲れ様でしたー」


 「「「「………」」」」


 一週間後。台湾の1級の狭間は無事に攻略された。


 「なんかあたし達の苦労が全部無駄になった感があるよね〜」


 「がっはっはっは! 上は果てしないな!」


 時間がきたという事でね。

 約束通り魔法でささっと攻略させてもらいました。


 「ひえー! ドロップ品がたくさんですっ!」


 「一緒に回収しましょうねぇ」


 闇魔法でフィールド全体を覆って呑む感じで。

 所要時間は十分。簡単なお仕事でした。

 残るのは闇の穴からドバドバと出てくるドロップ品だけ。ちゃんと全部呑んだから。せっかくの資源は無駄にしませんとも。ボスってなんだったんだろうね。姿すら見てないや。


 台湾の上位ギルドの人達やカメラマンさん達が唖然として動かないのはさておき。

 まぁ、気持ちは分かるけども。あれだけボコボコにしてやられた1級の魔物がこんな形で攻略されるのは心にクるものがあるだろう。


 でもね。俺ちゃんは良い加減飽きたのだ。

 大阪でもずっと見てるだけ。この一週間も指導はしてたものの、基本的には手出しをせずに『シークレット』の面々に任せてた訳で。

 ウズウズしちゃったのである。


 魅せプの意味も込めてカッコよく討伐してやったぜ。すっきりした。


 「よし。台湾観光だ!」


 「いえ〜い!」


 うちの面々もこの一週間中々苦労してたからね。

 これを機にしっかりと羽を伸ばして、次の韓国に向けて英気を養ってほしいものですな。




 狭間から出て、適当に野次馬に応対しつつインタビューも受けて。

 協会でドロップ品を全部売り払う。今回の台湾で攻略した1級のドロップ品は台湾で売る約束だったし。

 で、その査定待ちをしてる間は観光だ。


 「とにかく九份に行くぞ。話はそれからだ」


 台湾の上位ギルドの名前のせいで、更に行きたい欲が高まってるんだ。もしかしたら、彼らの自国アピールも兼ねてたのかもしれんな。

 ジブリ側が実際にここをモデルにしたとは言ってないんだけど。まぁ、そっくりすぎるもんね。

 多分ここをモデルにしたのは間違いないだろう。





 「おおーすげー!」


 「綺麗〜!!」


 で、やって来ました九份。

 時刻は既に夕方。攻略してそのまま来たからな。

 ライトアップもされてて、かなり綺麗。


 昔は金鉱発掘の街だったらしいけど、このレトロな街並みが良いですなぁ。

 時代が便利な様相になっていく中、こういう場所が残ってるってのは良いよねぇ。


 「有名なお茶屋さんがあるって聞いたんだけど」


 「あたしが案内してしんぜよ〜う!」


 マップ片手に桜がドヤ顔で言ってくる。

 いかにも訳知り顔だけど、マップ片手なんだよ。

 まぁ、俺はマップの使い方がいまいち良く分からんからお願いしますけどもね。


 「おおー! 良い席だな! 海が一望出来るぞ!」


 「すっごいです! どこの海なんでしょうか?」


 知らん。太平洋とかじゃないの? 俺はそれと日本海しか名前は知らないので。


 「東シナ海だな! 基隆外港も見えるぞ!」


 なんだ? 公英の賢いムーブは解釈が違うんだが? なんだよ東シナ海って。太平洋じゃないの?

 こういう時中卒は困るね。中学も卒業してないけど。


 「まぁ! お茶のお酒なんてのもあるんですねぇ」


 陽花は陽花でもうメニュー表に夢中で景色なんて見てないし。幸せそうで何よりです。


 「だんちょ〜! 甘味処で有名な場所もあるみたいだよ〜。次はそこに行こうよ〜!」


 ほう。台湾の甘味。興味あります。

 とりあえずお茶を頂きますけども。


 そして優雅にお茶をしばいた後は桜が言っていた甘味処へ。

 台湾の伝統的なお菓子『芋圓うえん』が美味しいらしいので、みんなでそれを注文。

 なんかたくさんの種類のイモ団子らしい。


 「え、うまっ」


 「うむ! 筋肉が喜んでおる! 俺様の筋肉細胞と相性が良いのかもしれんな!」


 イモかーって思ってたけど、舐めてたね。

 俺、スイートポテトとかちょっぴり苦手だったんだから、あんまり期待してなかったんだけど。

 美味である。非常に美味である。


 公英がグルメ細胞みたいな事言ってるけど、それは無視しておく。真面目に取り合ったら負けなのであるからして。


 「あ、これこれ」


 その後も食べ歩きを続けてるとお目当てのモノを見つけた。ジブリに似た様なのが出てくる事からジブリ飯って言われてる、『肉圓』。読み方は分からん。バーワンで良いと思う多分。


 「なんかぷにぷにしてるね〜」


 「不思議な食感ですっ」


 うん。うんまい。環境補正も入ってるだろうが、美味いのでよし。ジブリの世界に入った気分だ。

 これでジブリキャラでも出て来てくれたら文句ないんだけどな。ニギニギ・コハクンチョスなんてパチモンじゃなくてさ。湯婆○とかさ。


 その後もツミレスープを頂いたり、パクチーが入ってるクレープにキレそうになったり。

 ちょっとえづいちゃったもんね。別にパクチーはそこまで嫌いじゃないけど、クレープに入れないで欲しい。準備出来てないパクチーはきつい。


 「はぁ。台湾最高」


 「九份だけで満足出来るよね〜」


 九份の近くのホテルに来た。

 協会側が気を使ってくれたのである。攻略したらすぐに行くって言ってたしね。


 「まだ博物館にも行ってないし、他にも色々回りたい所はあるんだ。まだまだ楽しみ尽くすぞ」


 せっかく旅行に来たんだからね。

 思う存分観光させてもらいますよ、ええ。

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