第138話 忘れた頃に
「がっはっはっは! 1着は俺様だ! んなにぃ!?」
「ごめんね〜たんぽぽちゃ〜ん。お先〜」
公英の操作していたキャラに赤甲羅がぶつけられて、桜が追い抜く。
「や、やった! 無敵スターです! まだ追い上げれば間に合いまする!」
「あらあら? いつの間にか最下位だわぁ」
スターをゲットした神田さんが最後方から一気に追い上げて、陽花を追い抜かす。
はい。俺達はゲーセンに来ています。
みんなで有名なレースゲームをやってます。
あ、みんなじゃないな。俺はしてないから。これ、四人プレイなんだよね。5人で行動してる俺達は必然的に誰かがハブられる訳で。
それが今回は俺になった訳です。普通にじゃんけんで負けました。楽しそうで羨ましいです。
「使徒様は次は台湾か韓国ですか?」
「その予定だな。契約に合意したらだけど」
しかし俺は寂しくない。
野次馬と交流出来るからね。今もサインに写真にと大人気だ。まぁ、よく来るゲーセンってだけあって、見知った顔ばっかりなんだけど。
「や、やりました! 一番です!」
「もう〜! 最後の最後でたんぽぽちゃんが邪魔するから〜!」
「ち、違うぞ! あれは陽花がだな!」
「うふふ。ごめんなさいねぇ」
結果は神田さんが1着、陽花が2着、公英が3着、桜が4着になったらしい。
ちょっと目を離した隙にガラッと順位が入れ替わってらっしゃる。何があったんだろうか。
「もういいよ〜。あたしは峠を攻めてくる〜」
「わ、私はシューティングゲームをやってみたいであります!」
「じゃあ私は七海ちゃんと一緒に行きましょうねぇ」
「ほう。腕相撲対決があるではないか! 能力の使用厳禁と書いてあるが…。がっはっはっは! 俺様の鍛え上げた筋肉で圧勝してくれるわ!」
あ、あれ?
次は俺が参加する番だったんだけど?
みんなあちこちに行っちゃった。対戦するのを楽しみにしてたんだけど。しゅんである。天魔しゅんである。
「え、えーっと…。使徒様、俺達と一緒にやりますか?」
「お願い出来る?」
俺がしょげてると野次馬さん達に気を使われてしまった。でもやりたかったんだ。
ほんと自分勝手なメンバーばっかりで困るぜ。
その後滅茶苦茶レースした。
「ゲーセンも悪くないな! 中々に楽しめたぞ! むっ! このハツを頼む!」
「あたしはぼんじりと〜ねぎま〜」
「生大をお願い出来るかしら?」
「きゅうりが食べたいですっ」
ゲーセン帰りに鳥貴品へ。
陽花がずっと行きたいって言ってるのに、中々タイミングが無かったからな。
陽花はニコニコしながらビールを頼んでらっしゃる。玉将とやってる事が変わらん。お酒があったらどこでも良いんじゃないでしょうか。
「あ〜。そういえばあたし来週ちょっと予定があるんだ〜。韓国と台湾に行くならその日は避けてね〜」
両手に大量の焼き鳥を抱えてもぐもぐしながら桜が言う。お行儀が悪いですよ。一つ一つ食べなさい。あ、ミックスジュースうまっ。
「予定? 桜だけ?」
「そうだよ〜。最初はだんちょ〜もお願いされてたんだけど〜今は忙しそうだからって先方さんが〜」
まぁ、忙しいっちゃ忙しいけど。
なんかゲーセン帰りに居酒屋で晩飯を食べてると嫌味を言われてる感じになるのはなんでなんだろうね。
「なにすんの? 犯罪とかはやめておけよ? お金が足りないならあげるから」
「も〜う! あたしをなんだと思ってるのさ〜! 結構前に吉野さんの社長と会ったでしょ〜? その時のお話が本格的に動き始めたんだよ〜」
あー。なるほど。オリジナルの牛丼やらCMやらそんな話をしてたな。あれ、マジでやるんだ。
その場限りのリップサービスだと思ってた。
「そう頑張っておいでよ」
「んふふ〜! 楽しみ〜!」
桜は顔を蕩けさせてニマニマしている。
本当に好きだな。そういえば俺は最近牛丼食べてないな。桜は良くデリバリーしたり、ギルド事務所の食堂で食べてたりするんだが。
そしてこの話に公英と陽花も興味を持った。
「ほう! 俺様も玉将のCMやイメージキャラクターに抜擢されないものか!」
「私も鳥貴品のをしてみたいわぁ」
ふむ。陽花はともかく、公英はどうだろうか。
こんな筋肉ハゲダルマを起用するなんて中々に冒険だと思うが。それに桜はほんと毎日の様に通ってたからってのもあると思うんだよな。
お前達、まだ一回しか来てないじゃん。
「ふむ! ではこれから頻繁に通うとしよう!」
「団長さん? ギルドの前に鳥貴品を誘致してくれませんか?」
おお…。こいつらガチじゃん。
そんなにCMとかに出たいか? なんかめんどくさそうなイメージしかないんだけど。
「とりあえず次の攻略でも活躍して、知名度を上げる。で、頻繁にお店に通ってアピールするしかないな」
まぁ、こっちからアプローチしても良いけど。
そこまでするほどかなぁって思っちゃってるのが本音です。これで狭間攻略にやる気を出してくれたら良いでしょう。
「わ、私もどこかご贔屓さんを見つけるべきでしょうか…?」
おずおずと神田さんが聞いてくる。
ほんと、小動物みたいで可愛いな。保護したくなる。君はずっとそのままで居てほしい。
「いや、そんな無理する事じゃないよ」
滅茶苦茶好きなお店があるなら狙ってみても良いだろうけど。神田さんは特にこれといってないからね。
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