第136話 一段落して


 「ほなまたなー!」


 結局、全てのギルドが再始動するのに一週間掛かった。それだけ激戦だったという事だろう。

 メディアやらマスコミは早く攻略インタビューがしたくて囃し立ててきたが、どのギルドも体を回復させるので精一杯。

 攻略が終わった三日後に、ボス戦の攻略映像がアップされたお陰でそれも収束したが、もう少し遅かったらマスゴミが暴走してたんじゃなかろうか。

 あいつらにモラルとかないからね。まともなところなんてごく一部だし。


 で、再始動した後は大阪の蟹の模型がでかでかとあるお店で祝勝会。

 その後報酬を分配して解散だ。この後も生産者学校の事で顔を合わせる機会は多いと思うが。


 「さって。俺達も帰るか。ポテが俺達を待ってるぜ」


 今回は転移で戻るような事もしていない。

 たまにTV電話で顔を見たりはしてたけど。

 向こうではうちのギルド員に相当甘やかされてるようで、少し太って見えた。

 これは帰ってからしっかり運動せねばなるまい。

 デブ猫はダメですよ。


 こうして日本の1級攻略は終わった。

 これで少しはゆっくり出来ると良いなぁ。



 ☆★☆★☆★


 アメリカ


 「日本の1級が攻略されたそうです」


 「……そうか」


 アメリカ陣営はかなり焦燥していた。

 昨今は日本に差を広げられているが、それまでは特級探索者を抱えて世界随一の探索者王国だったのだ。しかし、約1年前に織田天魔が出てきてからは一転。あっという間に1級の狭間を三つ攻略して探索者のトップに躍り出た。


 「我が国単独で攻略出来そうかね?」


 「現状では難しいと言わざるを得ません」


 織田天魔の攻略映像を見たが、あれは参考にならない。入った瞬間に魔法をぶっ放して、はい終わり。なんて事は出来ないのだ。

 だから、今回の日本の1級攻略映像はかなり参考になった。アメリカもこれを参考に少しずつ戦力を削っていき、最終的にボスを討伐。


 日本に出来てアメリカが出来ない訳がない。国の威信を掛けて攻略するために、有名どころのギルドは全て招集した。

 しかし結果は惨敗。今では死傷者数も世界トップになっており、国民からはかなり突き上げをくらっている。


 「1級とはこれほど強いのか? 過去に崩壊した狭間の魔物より強そうに見えるぞ」


 「1級はなにぶんデータが少なく…。我々では判断しかねます」


 「テンマ・オダに攻略要請するしかないか…」


 天魔から見れば、アメリカに出現した1級の狭間は禁忌領域であり、御愁傷様としか思ってない。なんなら要請があれば、優先して攻略してあげようと思ってるくらいだ。自分が結界を張ったせいで、難易度が誤魔化されてるゆえに。

 しかしそれはアメリカ陣営には分からない。

 早く要請するという決断が出来ればいいのだが、果たしてどうなるか…。



 中国


 「隊列を崩すな! 複数で当たれ! 決して単独で挑むなよ!!」


 中国での狭間攻略は意外と順調に進んでいた。

 中国の探索者は協会に登録してるものの、全員軍属である。国が全てを主導して狭間攻略を行なっており、他国のようにギルド等もない。

 英雄のような人材は生まれないが、日々の厳しい訓練で連携力はかなりのもの。

 数にモノを言わせて攻略していた。


 「日本が既に攻略を終わらせたようです」


 朝から晩まで狭間に入り、近くにある駐屯地で指揮官が休んでいると、副官がタブレット片手にやってきた。


 「早いな。また織田か?」


 「いえ。ギルド連合ですね。織田はほぼ手出ししてません。一度ピンチの時に結界を張ったぐらいですね」


 「ふむ…。まぁ、よそはよそ。うちはうちだ。このまま進めていけば我が国も遠からず攻略出来るだろう。日本に先を越されたのは業腹だが、あそこには織田というイレギュラーが居る。我が国は我が国のやり方で攻略するのみ」


 指揮官はそう言って副官を下がらせる。

 1級の狭間攻略と聞いて、流石に今回は死ぬかと思っていたが、思ったよりも大した事がない。

 日本以外でも攻略出来るという所を見せつける。

 指揮官は明日からの攻略に一層気合いを入れて、眠りについた。



 バチカン市国


 「日本。無事攻略したとの報告が」


 「当然だ。神から天使の力を貸し与えられている人間が居るのだぞ。それで? 織田天魔からのアクションはないのか?」


 「未だ何も」


 バチカン市国は天魔が天使の能力を公にしてから、すぐにコンタクトを取ろうと、ずっと日本に対して圧力をかけてきた。

 しかし、日本からの返事はかたくなだった。


 『本人の承諾がない限りは直接会うのは差し控えて頂きたい』


 どれだけ圧力をかけてもこの返事のみ。

 こちらが教皇直々に動こうとすれば、あちらは天皇が動こうとする。天魔はそこまで深く知らないが、水面下でかなりバチバチにやり合っていた。


 「なんとか我が国に招聘したいところだが…」


 「どうしようもありませんな。どうやら聞いたところによると、織田天魔は宗教を苦手にしてる様子。無理に動くと更に悪化する可能性があります」


 「うーむ…。日本人はそういう人間が多いな…。仕方あるまい。勝手に動こうとする者の牽制をしておこう。なんとか友好的に招く手段がないか考えておいてくれ」


 「かしこまりました」


 こうして話し合いが終わる。

 教皇が無理矢理行動を起こす様な人間じゃなくてバチカンは命拾いである。

 天魔は異世界で最大の宗教国家の首都を爆撃してるのだから。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 はい。6章終了です。お疲れ様でした。

 『シークレット』が本格稼働して、早速狭間探知機を発明したのも束の間。

 1級の狭間が大量発生という大混乱になりました。天魔君はウハウハですけどね。


 日本の探索者のレベルも上がってきて、天魔君の楽隠居も近いかも?

 そんな事をさせるつもりはありませんがw


 次章は生産者学校関連についてと、世界の情勢についてがメインになるかなと。

 果たして天魔君に攻略要請はくるのか。

 お楽しみに。


 ではではまた次章で〜。


 あ、作者は他にも作品を更新してますので、良ければそちらもご覧下さーい。

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