第119話 1級出現


 「うはー! マジで出来るじゃん! すげぇ! すげぇよ!」


 「夢が叶いました!!」


 部屋を変えて複数のモニターにコードをブッ刺しマップを起動。

 するとピコンピコンと忙しく世界中の狭間出現が表示されていく。

 しかも攻略されたらちゃんと消えるらしく、これが画期的な発明である事は間違いない。

 出現した日付と時間まで表示されてるし。


 どういう原理なのかは全く分からないが、正直その辺はどうでもいい。

 これはえげつない値段で売れるぞ。


 「織田さんこれいくらぐらいで売れますかね?」


 「値段つけれるのかなぁ」


 問題はそこだ。

 未だに誰も発明出来なかった魔道具。

 辺鄙なところに狭間が出現しようが、これさえあればすぐさま感知できるし、崩壊時期を読み誤る事もない。崩壊が減れば、人命を救う事にもなるだろうし、こんなの値段のつけようがない。


 「とりあえず協会に売り込むのが正解だよな。こんなの一個人のギルドが抱え込んでても仕方ないし、狭間を管理してるのは協会だ」


 「人類発展の為に寄贈しろとか言われませんかね? 私は別に良いんですけど、正直お金も欲しくて。まだまだ作りたい魔道具はいっぱいありますし、素材がたくさん買えるようになれたら嬉しいんですが」


 「それは大丈夫だろ。今の俺にそんな馬鹿な事を言うやつはいないだろうし」


 言って来たら肉体言語でのお話し合いになる。

 それに。


 「素材が欲しいなら遠慮なく申請してくれて良いんだぞ? この生産部門には膨大な予算を取ってるんだし」


 俺達が積極的に攻略しないからね。

 ここの発明が我がギルドの収入源になる予定なのです。今回の狭間探知機はほぼこの魔道具師の手柄だから、交渉とかその他諸々の手数料以外は全部ボーナスとしてあげる予定だけど。

 

 「いや、流石に成功するかも分からない実験にギルドのお金を無駄にする訳には…。趣味みたいなもんですし」


 「発明なんてそんなもんじゃないの? 数え切れない失敗をして稀に大発明が生み出されるとか。最初から成功するなんて俺も思ってないし。だから気にせず申請するといいよ」


 「あ、ありがとうございます!」


 さってと。とりあえず朝倉さんに連絡か?

 これは日本の事だけじゃないし、世界探索者協会の領分か? あそこが管理するのが一番面倒が少なそうなもんだけど。

 ツテがないし、とりあえず朝倉さんでいいか。


 俺はポケットからスマホを取り出して電話帳を開く。いくら機械オンチな俺でもこれぐらいの操作なら出来るってもんよ。

 ゲームだって出来るんだしね。

 そんな事を考えてると…。


 ビーッ! ビーッ! ビーッ! ビーッ!


 「ぎょえー!!」


 モニターからなんか緊急的な警告音が流れ始めた。魔道具師の女も素っ頓狂な声を上げてびっくりしている。もしかして潰れました?


 「何の音?」


 「こ、こ、これは万が一にも見逃さないようにと設定した警告音なんです! 1級が出現した時にしか鳴らないようにしてたんですが…」


 「ほう!」


 1級とな? なんたるご都合主義!

 ブートキャンプ組を放り込みたいと思ってたんだ。特に『スキナー』の上杉さん。

 あの人が1級の魔物を召喚出来るようになったら、かなり強くなるはずなのだ。


 「場所は…おぅ…」


 「台湾ですね」


 そうだよね。日本じゃないよね。

 この前三つもあったし。これじゃあ要請がない限り遠征に行けない。

 俺達は一応日本所属の探索者なので、海外の狭間は要請がない限り入ってはいけないのだ。

 自国の資源になるんだから当然なんだけど。

 しかも要請するとしたら『シークレット』単体だけになるだろう。


 「タダで攻略するからってお願いして入れてくれないもんか」


 「それをすると他国に出現した時にうちもタダでって言われちゃいますよ」


 だよなぁ。残念。

 日本に1級の狭間が出現するのを気長に待つしかないか。まぁ、出ない事が一番良いのかもしれないが。

 まぁ、いいや。とりあえず朝倉さんに電話しよう。



 「いやはや。とんでもないものを発明されましたね」


 「俺じゃなくてうちのギルド員ですけどね」


 電話してから一時間で事務所にやってきた朝倉さん。この人もかなり忙しいのに、全ての予定をキャンセルきてすっ飛んで来たらしい。

 今は魔道具師の女、良い加減名前を出すと、山田花子さんが用意してくれた資料を交えて、朝倉さんに狭間探知機の説明をしてるところだ。


 出来れば山田花子さんに直接説明して欲しかったんだけど、お偉いさんとのお喋りは遠慮したいらしい。まぁ、こういう面倒事を請け負うのもギルド長としての役目。

 全然意味のわからない言葉を羅列して頑張って説明しました。


 「どうしましょうか、これ。探索者協会に売るのが1番手っ取り早いかなと思ったんですけど」


 「そうして頂けるとありがたいですね。こちらから世界探索者協会の方と交渉しましょうか?」


 「あ、お願いしていいですか?」


 「ええ。幸い向こうとはそれなりにツテがありまして。悪いようにはならないと思います。まぁ、織田さんを騙そうなんてする人が居るのか疑問ですが」


 フランスの件があるからね。

 そこはあんまり信用していない。

 朝倉さんは信用してるけどね。

 ってか、この人は本当に人脈チートだな。

 こういう人を敵に回すのが一番怖いんだよ。

 

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