第110話 魔道具


 「動画アップ完了〜! みんなの反応が楽しみだね〜!」


 4級の狭間をあっさりと攻略して、俺達は既に家に帰って来ていた。

 神田さんは我が家に住む訳じゃなくて、家族と一緒に社宅に住むので、そこでお別れしている。

 そして俺とガチャ組はまたもやラウンジで酒を飲み交わしつつ、わいわいと雑談をしていた。


 「二人とも強かったなぁ。ガチャから出てくる人間はみんな強いのかね」


 「強いというか強くなったというか〜」


 「複雑ですねぇ」


 「がっはっはっは!」


 なんとも煮え切らない返事。

 なんか理由があるのかね。

 まぁ、深入りする気はありませんが。

 俺は主人公的な人種じゃないので。頼まれてもないのに、相手のプライベートにずけずけと入り込み、問題を解決する勇者みたいな人間じゃないの。


 頼られれば力は貸すけどさ。

 実際異世界救いましたし? それも報酬に釣られつつみたいな感じだけど。


 「明日からは当分自由に過ごしてくれていいよ。俺の面倒になりそうな秘密は喋らないように。それ以外は聞かれても好きに答えてくれ」


 「うふふ。分かりました。なら明日は桜ちゃんとお買い物に行きましょうか」


 「行く行く〜!」


 「俺様はジムに行こう! 少しでも筋肉を育てねばな!!」


 異世界の事とか、悪魔の事とか。

 それ以外の事なら聞かれても困る事はないはず。

 本当に秘密にして欲しいのは悪魔ぐらいかな。

 異世界なんてどうせ誰も信じないし。


 「にゃーご」


 ラウンジで各々喋ってたら、扉を器用に開けてリビングからポテがやって来た。

 相変わらず公英相手にはふしゃってるけど、それ以外はいつも通り。

 甘えた声を出せば刺身を貰えると勉強したのか、愛想を振り撒いて刺身をゲットしている。


 「リビングとラウンジの扉。下の方に猫が通れる様な小窓的なのを作ろうか」


 「そうだね〜。これからこっちでお酒を飲む機会も増えるだろうし〜。ポテちゃんもわざわざ扉を開けなくても通れる小窓があった方が嬉しいと思うよ〜」


 天魔君の日曜大工スキルが火を吹くぜ!

 ……せっかく綺麗な家なんだし、失敗したら嫌だな。ギルド員の生産系能力者にお願いしよう。




 翌日の昼過ぎ。

 そういえば、陽花とのあんな事やこんな事を忘れてたなと軽く後悔をしつつ、エレベーターで生産部屋に向かう。


 既に俺が起きた時には、桜と陽花は出掛けていて、公英はジムに行っていた。

 リビングに誰も居なくて寂しかったです。

 あ、ポテは居たか。キャットウォークを歩いてました。

 


 「たのもー」


 始動したての真新しい生産部屋に入り、せかせかと慌ただしく動いてるギルド員に声をかけていく。

 既に俺のアイテムボックスにある、適当な素材を供給してして、それはもうみんな狂喜乱舞して研究に励んでいる。

 何か面白い魔道具が出来上がるといいなぁ。


 俺からは特に何々を作って欲しいとお願いはしていない。一人を除いて。

 各々に好きな研究開発をしてもらっている。余りにも成果が出ない研究に熱を入れられるのは困るが、とりあえずは始めたてという事で様子見。

 もう少ししてから、少しずつ口出しをしようかなと思ってます。


 「あ、織田さん」


 まず俺がやって来たのは、俺が魔道具作りをお願いした一人の女性。

 この人は面接で狭間を即座に発見する魔道具を作りたいと熱弁していた魔道具師の人だ。


 「お願いしたのは出来てる?」


 「はい。織田さんに光属性を付与した魔石を頂けたので。簡単に作れました」


 お願いしてたのは浄化の魔道具。

 別名・掃除の魔道具。


 我が家は広いんだけど掃除する人が居ないから。

 いや、桜はやろうと思えばやれるし、陽花も出来そうだけど。公英は多分しない。

 って事で、俺が適当に浄化をして回ってたんだけど、やっぱりめんどくさい。

 なので、一部屋に一つ、広い部屋には複数の浄化の魔道具を置く為に作る様お願いしてたのだ。


 「このボタンを押すと浄化してくれます。魔力がなくなると補充する必要がありますが、その際は光属性は必要ありません。織田さんにお願いされたから作りましたけど、これ普通に売れそうですね」


 「能力者しか魔力補充出来ないのがなぁ。電気とかでなんとかならない?」


 「いえ、普通に魔石を使えば補充出来ますよ。等級も8級ぐらいので充分ですし」


 「売れるじゃん」


 最初に光属性を付与した魔石を大量に用意しないといけないのは難点だけど。

 それさえ除けば簡単に作れるらしい。

 しれっと良いモノを作ってもらっちゃったな。


 「うちは魔道具師少ないのがなぁ。レシピを公開して作ってもらう方がいいかも。光属性の魔石を売るだけでも相当な利益になるだろ」


 「ですねぇ。私もこればっかり作るのは嫌ですし」


 だよね。あなたには狭間発見装置の開発も頑張ってもらいたいし。

 よし。後で広報の部署に連絡しておこう。

 早速うちの資金源が出来たな。

 問題は今の所俺しか魔石に付与出来る人が居ない事か。光魔法って結構レアなのか、世界でも能力持ちが少なめなんだよねぇ。


 次の面接とかで都合よく光魔法の能力者がこないもんか。魔道具師ももう少し欲しいところです。

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