第95話 単独行動


 「帰ってきたぞ日本!!」


 「なんだかんだあっという間だったね〜」


 フランスから日本に帰国した。

 報酬もしっかり振り込んでもらったし、懐はかなりあったかい。

 それに。


 「では御用の際はいつでも連絡を下さい」


 「当分は日本に居ると思うんでゆっくりしてて下さい」


 俺達のフライトを担当してくれた二人のパイロットの引き抜きに成功した。

 中々に高給取りだけど、『シークレット』専属になってくれたのだ。


 「ソフィーとマリオンを連れて来れなかったのが悔やまれるぜ」


 「そんなに積極的に誘ってなかったくせに〜」


 まぁ、そうだけどさ。軽くお声がけはしたんだよ? このまま『シークレット』に入りませんかって。やんわりと断れたんだよね。


 「まっ、『シークレット』に入ると日本に住む事になるからな。慣れ親しんだ土地を離れるのは嫌だったんだろう」


 「だんちょ〜の事が嫌いだっただけかもしれないよ〜」


 それを言うなよ。ちょっとそうかなって気にしてるんだから。特に粗相とかもしてないつもりなんだけど、人間どこでやらかしてるか分からないからね。




 「ポテちゃ〜ん!!」


 「にゃ」


 日本に帰ってきてまず向かった場所はポテを預けていたペットホテル。

 桜はポテを見た瞬間ダッシュで駆け寄っていた。


 「大物感丸出しだな。まさか本当に一鳴きとは」


 「寂しかったでしょ〜? 今日からはずっと一緒だよ〜!!」


 「にゃごにゃご」


 やれやれみたいな素振りを見せないでくれ。

 桜が可哀想じゃないか。


 「さっ、帰るぞ。学校巡りは一週間後から再開だし、とりあえず引きこもろう」


 ゲームでも買って帰ろうかな。

 今回はほとんど観光しかしてないとはいえ、ちょっと疲れたし。

 家でゆっくり英気を養いたい。


 「んふ〜。もふもふだね〜」


 無視ですか。そうですか。天魔君拗ねるぞ?

 俺が拗ねたら面倒だぞ?



 翌日。

 起きたら昼前だった。

 久々にこんなにがっつり寝たかもしれない。


 「にゃおーん」


 「んふふ〜! 上手だね〜!」


 既に桜は起きてたみたいでポテと遊んでいた。

 キャットタワーから飛び降りるポテを桜が糸で優しくキャッチしている。

 危ないからやめて欲しいんだけど。


 「にゃにゃにゃ」


 桜の糸から解放されると、またキャットタワーに登り始める。

 そして桜が糸を展開してるのを確認してから、また飛び降りた。


 「ちゃんと安全確認してるのか。賢過ぎるだろ」


 「うちの子だよ〜? 賢いのは当たり前〜」


 どちらの知性を参考にしてるので?

 俺は残念ながら馬鹿だぞ? 分数の計算も怪しいからな。


 「まぁ、良いや。俺ちょっとゲーム買ってくるけど。桜はどうする?」


 「今日は一日中ポテちゃんと遊ぶって決めてるんだ〜」


 「さいですか。ならお一人様で行って来ますね」


 「ついでにお昼ご飯お持ち帰りしてきて〜」


 「はいはーい」


 ふむ。流石に寝起きの顔で行くのはよろしくないか。シャワーを浴びてから向かうとしよう。




 「そういえば単独行動ってこっちに帰ってきてから初めてだな」


 車を運転中に独り言を呟く。

 歌を適当に流してるんだけど、100年の時間が空いてるからか、知ってる曲が皆無である。


 「ついでにCDとかも買うか。売ってるのか知らないけど」


 スマホに曲を入れてBluetoothを使えば良いんだろうけど。桜さんが居ないと使い方が分かりませんな。機械オンチはこういう時は辛いぜ。

 今も流れてる音楽は車のエンジンを付けると勝手に流れ始めただけだし。

 桜がなんかしたんだろうけど、俺には理解不能です。



 そんなこんなでやって来ました秋葉原。

 一応サングラスだけは装着して申し訳程度の変装はしている。

 そのうちバレるかもだけどね。


 まず向かったのはゲーム専門店。

 俺が探してるゲームは骨董品ばっかりだけど、果たしてあるのかどうか。

 無かったらネットで探すしかないよな。桜にやってもらおう。


 「やばいな。俺って桜が居ないと何も出来ないのでは?」


 分からない事があったらなんでも桜頼りになってる。それが良い事なのか悪い事なのか。

 まぁ、気にしない事にしよう。


 買い物カゴを持って店を回る。

 とりあえず面白そうなソフトは適当に購入する予定だ。

 昔の作品もやりたいけど、最新のゲームも手を出してみたいしね。


 で、そんな風に次々と買い物カゴにゲームを入れてたら当然目立つ訳で。

 普通に身バレした。別にどうしても隠したい訳じゃ無かったし良いんだけど。


 「あれ? 今日は桜たんいないな?」


 「ほんとだ。一人って珍しいな」


 「桜たん居ないのか…」


 身バレはしたものの、誰も近付いてこない。

 遠巻きに見られてヒソヒソと。

 それ、人によっては傷付くからやめようね。

 桜が居なくて落胆してる君も。俺じゃダメなんですか。


 「おっ! 骨董品コーナーめっけ!」


 骨董品って書いてる訳じゃないけど。

 古いゲームコーナーだな。


 「意外と保存状態が良い。これは嬉しいな」


 まぁ、もうありませんって言われても作ってってお願いすれば作ってくれそうだけど。

 それはさておき。

 俺が知ってる作品が多数ある。

 これは第2回『シークレット』散財祭りが始まるぞ。残念ながら今日は桜は居ないけど、あの日に負けないぐらい一人で散財してみせる!!

 ブランド品とゲームソフトの勝負じゃい!

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