第89話 カジノ


 天使に憑依してアイテムボックスを開く。


 「えーっと。異世界で着た奴がある筈なんだけど」


 アイテムボックスをゴソゴソと。

 あ、あった。これこれ。


 「タキシード〜?」


 「後、これは桜用ね」


 タキシードとドレスをアイテムボックスから出す。これ、なんとダンジョンからのドロップ品なんだぜ。低難易度の宝箱報酬だったけど。


 「これから行く所はドレスコード必須だからな。日本でも正装はいくつか買ったけど時間がかかるし。今回は間に合わせのこれで」


 間に合わせって言っても、サイズ自動調整と温度自動調整、防汚の機能がついてるらしいけど。

 向こうでお偉いさんと会う時に来てました。


 「あ〜。あたしどこに行くか分かっちゃった〜」


 「流石にあからさますぎたか」


 フランスでモナコって言ったら行く所は一つしかない。


 「カジノじゃー!!」


 「いえ〜!!!」


 モナコ側にあらかじめ行きたいって伝えてたからな。車とかの用意をしてくれていた。

 ベント○ー。カッコよかったな。車に興味なかったけど、この海外遠征で少し興味持っちゃったかも。日本に帰ってからコレクションも検討しようかな。


 一応カジノに入る時は、エントランスの係員にパスポートで身分確認されるんだけど。

 早速VIPルームに通されそうになって焦った。

 俺はまずは一般でカジノの雰囲気を楽しみたいのだ。素人だし。


 「うわー。すげぇな」


 「豪華〜」


 異世界で何度も王宮に行ってなければ、この内装に圧倒されてたかも。

 耐性があってもすこし呆けちゃったし。


 「さて、桜さん」


 「言わずとも分かるよだんちょ〜! ここからは別行動してどっちが多く稼げるか勝負だね〜?


 「流石だな。その通りだ」


 ただカジノを楽しむだけじゃ勿体ない。

 せっかくだし桜と勝負して更にひりひりさせてもらおう。


 「最初の持ち金はお互い日本円で1000万。これをどれだけ増やせるかで勝負だ」


 因みに天魔君は賭け事は詳しくありませぬ。

 ポーカーとかBJとかもあんまりやり方が分かってないんだよね。ルール説明してもらいながら頑張ろうとは思ってるけど。


 「負けた方はどうするの〜?」


 「なんでも一つ言う事を聞くってのはどう?」


 「乗った〜!!」


 よーし!! やってやるぜ!!

 早速チップに交換してスタートだ!




 桜と別れて俺がまず向かったのはルーレット。

 馬鹿でも出来るしな。これで手持ちを増やしてやる。


 「よろしくお願いします」


 俺が卓に座るとディーラーの人の顔が引き攣った。そんなに心配しなくても素人です。

 狭間でどれだけ活躍しようが、ここでは唯の人ですゆえ。


 俺が素人なんで軽くルール説明をお願いすると、ディーラーの人はあからさまにホッとした顔をしていた。

 インサイドベットやらアウトサイドベットの説明をされてとりあえずスタート。


 とりあえず難しい事を考えずに赤か黒かの二択を当てるゲームを楽しむとしよう。

 当たればベットした額の二倍になって返ってくる。


 「どちらにしようかな。天の性悪女神様の言う通り〜」


 どうせ二択なんだしと神頼み。

 でも俺は性悪女神様を信用してないので。

 敢えて逆を選ぶ。


 「黒で」


 持ってるチップの半分を黒の場所に置く。

 そして俺はルーレットの行く末を見守る。

 コロコロと転がり、最終的に入ったのは黒だった。


 「やったぜ」


 ふはははは! 性悪女神を信じなかった俺の勝利!! 倍になったぜ!


 「おめでとうございます」


 「ありがとうございます」


 このカジノに居る人達は落ち着いている。

 俺が有名人って事は分かってるだろうが、過度な干渉はしてこない。金持ちは余裕がありますな。


 その後も赤か黒の二択で楽しみ、偶にダズンベットっていう12個毎に区切られた当たれば三倍になるのに賭けてみたりもした。

 一回だけ当たれば三十六倍の一点賭けもしてみたけど残念ながら外れ。

 でもなんやかんや持ち金は増えて行き、1時間ぐらいの遊戯で1000万が3000万ぐらいになっていた。


 俺はディーラーさんにお礼を言ってチップを少し渡し、その場を後にする。

 ふむむむ。桜の方の調子はどうなんだろう。

 今の収支で果たして勝てているのか。

 もう少し増やしたい所だな。


 うーん。ポーカーの方が騒がしいなぁ。

 でもあんまりルールが良く分からんし…。

 BJの方がまだ分かりやすいしそっちにしよう。


 トランプの大富豪とかで勝負してくれる人はいないのかな? それなら俺はルールを熟知してるし勝負になる気はするぞ。勿論ローカルルールも込みだ。


 冗談はさておきBJの卓へ。

 これは簡単に言うと数字の合計で21を目指すゲームだ。

 絵札は10扱いでAは1と11扱い。

 これさえ分かってれば楽しめるらしい。

 カジノに来る前に勉強しました。

 カウンティングなる方法があるらしいが、やってはいけないらしい。出来るとも思わないが。


 (ふぐっ。17って。なんて中途半端)


 ヒットすべきか否か。

 ええい! 頼むぞ性悪女神!

 意を決してヒットして配られたカードは5。

 バーストである。


 「くそが。やはり性悪女神は信用出来ん」


 でもルーレットよりもヒリヒリ感を楽しめるな。

 もう少し楽しませてもらおう。

 桜には負けてられん。何で遊んでるのか知らんが、勇者天魔に負けは許されんのだ。


 魔王に何度も負けてるじゃんって話は受け付けてませんので悪しからず。



 

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