第65話 進捗確認


 「能力使ってるから早いなー」


 「わくわくするよね〜」


 今日は建設中の家兼事務所の進捗状態の確認に来ている。

 建設が始まってから一回も顔を出してなかったし『地震に負けない』に差し入れでもと思いまして。


 「こういう時の差し入れって何が良いんだろうな。お金を包むのがやっぱり一番喜ばれるんだろうか」


 「なんか生々しい感じはするけどね〜」


 だよね。そう思って昼食の差し入れにしてみたんだけど。でもお金も嬉しいよなぁ。


 「2級の上位種オークの肉を贅沢に使ったハンバーガーだぜ。お偉いさんでも中々食べれない至極の一品。ハンバーガーの癖に原価でも1万円は裕に超える」


 「美味しかったよね〜。豚丼の方が美味しかったけど〜」


 俺と桜は既に食べている。わざわざ料理人にお願いしてハンバーガーを作ってもらったんだ。

 お願いしたのは採用予定の料理の能力持ちの人。

 二つ返事でOKしてくれて助かりました。


 「桜は丼ならなんでも良いんだろ」


 「そんな事ないよ〜! 牛丼が一番なんだから〜! 1級で牛が出てくる狭間とか出現してくれないかな〜」


 俺のアイテムボックス内に禁忌領域産の滅茶苦茶美味い牛系魔物の肉が眠ってる事は黙っておこう。

 あっという間に無くなってしまいそうだ。



 「どうもー。お疲れ様です」


 「! 織田さん! わざわざ来てくれたんですね!」


 「中々来れなくて申し訳ないです。色々忙しかったもんで」


 工事現場に到着すると、『地震に負けない』のギルド長、芦田さんが黄色いヘルメットを被って指揮を取っていた。

 時代が進んでもそのヘルメットは変わらないのか。ご安全に。


 「あははは。何やら災難でしたね」


 「それはもう。大恥をかきましたよ」


 茶化すように芦田さんが言ってくる。老害事件の事を言ってるんだろう。


 「進捗は順調ですよ。工期通り進められています」


 「それは良かったです。あ、差し入れに昼食を持ってきたんで、良かったら皆さんで食べて下さい」


 「ありがとうございます。時間もいい頃ですし、お昼休憩にしますね」


 無線で連絡をして、作業員を集める芦田さん。

 『地震に負けない』は建築関係の能力者が多数在籍してるが、能力者じゃない人達も積極的に採用している。

 人気ギルド過ぎて、とてもじゃないけど能力者だけじゃ手が足りないらしい。


 まぁ、狭間みたいにどうしても能力が必要な仕事じゃないからね。それに一流の職人っていうのは、能力が無くても凄いんだ。

 偶に動画サイトで建築動画とか見るんだけど、職人さんはみんな凄いからね。

 間違いなく日本を支えてくれている。いつもありがとうございます。


 「うめぇ! なんだこりゃ!」


 「この肉すげぇ! こんなハンバーガーは初めてだ!」


 うむうむ。好評そうで何よりだ。

 攻略報酬で肉を貰って良かったぜ。

 合同攻略の報酬はみんなで等分にしたんだけど、俺と桜は肉しか貰っていない。

 引率の立場でほぼ見てるだけだったしね。まぁ、それでもオークは肉の値段が高いんだけど。

 上位種じゃなくても普通に美味いし。


 「あ、そうだ。この近くで空いてる土地とかあるの知ってます? あれば教えて欲しいんですけど」


 「土地ですか? 東京で空いてる土地なんてほぼ無いと思いますよ。交渉して買い取るしか無いでしょうね」


 まぁ、そりゃそうよね。不動産屋にお願いするか。ちょっと割高になっても良いから早めに買って寮というか、社宅の体裁を整えないと。


 「また何か建てるおつもりですか?」


 「社宅的なマンションをね。この前の面接で結構地方からの人を採用したんで。独身の人向けに用意しようかなと」


 別に既婚者でも利用してもらって構わないけど。

 それなりの大きさにはするつもりだし。


 「そうでしたか。また建てる時はうちのギルドにお声掛け下さい。喜んで仕事をさせてもらいますよ」


 「え? 大丈夫です? 『地震に負けない』はかなり人気ギルドですし、そっちは無理かなと思ってたんですけど」


 「いつも万が一、工期が遅れた時の為に少し余裕を持ってスケジュールを組んでるんですよ。流石に今回の依頼よりも時間がかかる事はないでしょうし、請け負う事は可能ですよ」


 マジ? お願いしまーす。

 いやはや助かるぜ。どこに依頼しようか迷ってたんだよね。芦田さんに声をかけて良かったぜ。


 「じゃあ、とりあえず不動産屋に行ってきますね。土地を買い取れたら、契約しましょう」


 「わかりました。お待ちしております」



 俺と桜は作業員さんとの雑談も程々に、早速最寄りの不動産へ。

 俺の家付近で良さ気な土地が無いか聞いてみる事に。


 「それでしたら、徒歩10分程の所が売りに出してますよ。織田さんの希望より少し大きい土地で、お値段もそこそこ致しますがどうなさいますか?」


 「え。都合良過ぎて怖い。俺は神に愛されてるんじゃなかろうか」


 「ロリっ娘に〜?」


 あ、今の発言は無かった事にして下さい。

 また調子に乗られては困るってもんよ。


 「じゃあ、そこをお願いして良いですか?」


 「かしこまりました。早速交渉して参ります」


 不動産屋さんは話が纏ったら、また連絡してくれる事になった。

 すぐに建設とはいかないから、暫くは地方から来る人はホテルか何かを斡旋しないとな。

 そのお金は俺が出すとして…。


 「桜は合格者に社宅の準備も出来そうな事は伝えておいてよ」


 「ういうい〜」


 しかし、ちょっと流石に貯金が目減りしてきた。

 すぐにどうこうなる金額ではないけど、ここから『地震に負けない』とももう一回契約する訳だし。

 これは少しずつ稼がねばなるまいな。


 「申し訳ないけど、3級を落札するか」


 「今は攻略ブームだから落札金額は結構高いよ〜」


 致し方あるまいて。

 もう一つある2級を落札しても良いけど、それは出来れば今回合同攻略したギルドに残しておいてあげたいしな。

 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る