第45話 北海道へ


 「とうちゃーく!」


 「涼しいね〜」


 季節は夏が終わって少ししたぐらい。

 都内はまだまだ暑いけど、北海道は流石だな。


 「ささ! ホテルにチェックインして観光するぞ!」


 「だんちょ〜って引きこもりのくせに観光は好きだよね〜」


 「見知らぬ土地はわくわくするからな! 遠出したなら見て回らないと損だろう」



 俺と桜は2級の狭間がある北海道に来ていた。

 合同攻略するギルドとの顔合わせも現地でやる予定だけど、それより早めに現地入り。

 目的は勿論観光。ジンギスカンに海鮮系が俺を待ってるぜ!

 ザンギやらラーメンやらも食べたいですねー。


 「んふふ〜。吉野さん見つけちゃった〜」


 「ならとりあえず入るか」


 俺達の胃袋は中々大きいからな。まずはウォーミングアップとして吉野さんを攻めるのも悪くない。

 ……最近どれだけ牛丼が続いても苦にならなくなってきてるんだよな。桜さんの度重なる教育の賜物ですね。


 「この後も食べるしな。ネギ玉牛丼の特盛と豚丼の特盛にしておこう」


 「動画サイトで見たんだけど〜牛丼並と生卵を出されてから10秒ぐらいで食べてすぐに出て行く人がいたよ〜」


 「すげーな。いや凄いけど、その人は味とか分かってるのかね」


 桜が動画サイトを開いて見せてくれる。

 もう食べてないじゃん、これ。飲んでるじゃん。

 牛丼はいつから飲み物になったんだよ。

 食べ物を飲み物にするのはカレーまでだぞ。




 「よーし。とりあえずどこから行く?」


 「あたしは〜うにとかいくらとかが食べたいな〜」


 海鮮系ね。俺は牡蠣とか蟹も食べたい。

 生牡蠣とか絶対美味しいだろうよ。食中毒になるほどやわなお腹もしてないしさ。

 男としてはすすきのを攻めてみたい気もあるんだが。ちょっと有名になりすぎて、迂闊に風俗にも行けやしねぇ。

 今も吉野さんから出てきたら、野次馬が滅茶苦茶いてるし。


 「さっき北海道到着ポストをしたからね〜。情報が回ったんじゃないかな〜」


 「人気者はつらいね」


 「顔がにやけてるよ〜」


 そりゃそうよ。チヤホヤされるのは好きだからね。嬉しくない訳がない。


 「でもでも〜海鮮系は朝から市場近くのお店に行った方が良いんじゃないかな〜って」


 「たしかに。なんか新鮮っぽいよな」


 採れたてを食べた方が美味しいに決まっている。

 なんか魚も何日か経った後が美味しいとか、聞いた事あるような気もするけど。

 気分の問題だよね。採れたてを目の前で捌いてもらう。きっと幸せな気持ちになれるはず。


 「じゃあ今日はジンギスカンとラーメンだな」


 「調べたらお鍋も美味しいみたいだね〜」


 やべぇな。北海道。ポテンシャルありまくりじゃん。行く所が多すぎて迷うぜ。




 とりあえず高級感あふれるジンギスカン専門のお店にやってきた。

 予約無しで入れるか不安だったけど、観光シーズンから微妙に外れてるからか、比較的空いてるらしい。すんなり入店出来て良かったぜ。


 「ジンギスカンの鍋? 鉄板? って謎だよな。食べ方がイマイチわからん」


 「ここに書いてあるよ〜」


 ふむふむ? 簡単に言えば、山の所で焼いて溝の所で煮る感じか。野菜は基本煮ておけばOKと。


 「お店の人がやってくれるらしいけど、最初は自分でやってみたいね」


 「途中から面倒になるんだけどね〜」


 何事も経験よ。楽しいかもしれないじゃん。



 「え? 美味っ! 羊肉ってこんなに美味いの?」


 「もっと臭みがあると思ってた〜」


 俺もだぜ。確か中学生の時の修学旅行で北海道に来た時もジンギスカンを食べた筈。

 300年以上前の記憶だから定かではないんだけど。その時は不味いとまでは言わないけど、結構臭いが気になった印象があったんだが。

 お土産に買ったジンギスカンキャラメルに意識を引っ張られすぎたかな。あれは不味かった。


 「お野菜も美味しいね〜。もやしと玉ねぎが溝の所でしっかり染みてて美味しいよ〜」


 「うーむ。素晴らしい。これ、おかわりしよう」


 「どんどん食べれちゃうね〜」


 ビールも進むぜこれは。


 「野菜も結構種類あるんだな」


 「追加注文しちゃうね〜。あ、お茄子とかぼちゃ食べた〜い! ピーマンも追加しちゃお〜っと」


 ジンギスカン侮りがたし。この後締めのラーメンを攻めるつもりなんだけど、お腹のスペース空けてられるかな。美味しすぎて、どんどん注文しちゃう。


 「脂にクセがあるのが敬遠されてる理由かな? 肉自体は淡白でもなく、濃くもなく。厚めにスライスされてるのがいいのかも? この風味的なのが気にならないなら好きになるだろうね」


 「すみませ〜ん! ご飯大盛りで下さ〜い!」


 桜さんは丼にするらしいね。君はとりあえず丼に出来そうなものはなんでも試すね。ジンギスカン丼か。絶対美味しいじゃん。


 「二つでお願いしまーす」


 試さない訳にはいかない。しっかり便乗させてもらおうじゃないか。




 「ありがとうございましたー!」


 ジンギスカンのお店から少し歩いた所で、締めの味噌バターラーメンを屋台的な所で食べた。

 野次馬さんに教えてもらった情報では、隠れた名店扱いらしく、締めにふさわしいとっても美味しいラーメンだったな。


 「今回俺達が行ったせいで、隠れた扱いにはならなくなっちゃったかもね」


 「大将さんにこにこしてたし良いんじゃないの〜?」


 気前の良い大将さんだったな。あの味噌バターラーメン。帰る前にもう一回食べよう。

 麺はモチモチしてて、特にあのバターが忘れられない。都内で店開いてくれないかな。


 「よーし! 今日は着いたばっかりなのに、大満足な観光だったな! 明日も期待出来るぜ」


 「明日は一日海鮮尽くしにしようね〜」


 お腹はいっぱいなのに涎が出てきそう。

 明日が楽しみで仕方ないぜ。

 

 

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