第42話 合同攻略
「我慢にも限界があるんだけど」
「あたしはだんちょ〜がここまで我慢出来てるのが驚きだよ〜」
ため息を吐きながら、いつものように拘束尋問してから警察に引き渡す。
これで何度目なんだか。途中で数えるの辞めちゃったぜ。
「泊まる所を変えても襲撃されるな」
『暁の明星』との指導契約が終わってから3日。
この3日で襲撃はなんと十回は越えてる。
襲われるたびに撃退して、生きたまま警察に差し出してるんだけど。
「あの警官さんの顔引き攣ってたよ〜。だんちょ〜にビビってたのもあるんだろうけど〜。不機嫌なのが丸分かりだからね〜」
「警察に任せるって言っちゃったからな」
あの時の自分をぶん殴ってやりたい。
現代だからって穏便に事を収めすぎたな。
異世界にいた頃なら即殺だっただろうに。
「それで〜? どうするの〜?」
「殺すのは簡単なんだけどな。ここまでされると簡単に殺すだけでは許しきれないぜ。死はある意味救いだからな」
とりあえずお友達大作戦を早めるか。
これ以上面倒になると、本当に手を出しちゃいそうだ。
「一応〜ある程度ピックアップはしてるけど〜」
「そういえば、前に煽ったSNSはどうなった?」
「めちゃくちゃキレてるよ〜。ポストからでも怒りの顔が見えそうなくらいだったな〜」
俺が煽ったせいで襲撃が激化してるのでは?
まぁ、今のうちに罪を重ねてくれたまえ。
「協会に仲介してもらって桜がピックアップしてくれた人と会ってみるか。程良い距離感でお付き合いさせてもらおう」
「あとは〜探索者も味方にしておきたいよね〜」
ふむん。たしかに。
現役探索者は声が大きいからな。
上位ギルドとかなら尚更だ。
「親睦会的なのを開くか…。まだこっちでツテがあるのは『暁の明星』だけなんだよな」
「だんちょ〜が前に言ってた合同攻略とかは〜? 2級ならすぐに落札出来るし〜『暁の明星』さんもどこまで成長したか試してみたい筈だよ〜。それでついでに向こうに交流のあるギルドをいくつか呼んでもらって〜一緒に攻略しつつ仲良くなれば良いんじゃな〜い?」
ふむふむ。ありだな。
『暁の明星』がOKを出せばだが。
それに強くなった『暁の明星』を見てもらえれば、更に依頼が増えるかも?
暇なうちに上位ギルドは強化しておきたいから、丁度良いんじゃないだろうか。
まとめてやれれば尚良い。
「桜、協会と『暁の明星』に連絡取って」
「ういうい〜」
桜が秘書代わりになってるな。
こういうのもしてくれる人材が欲しい。
桜も得意ではないだろうし。
お偉いさんとのお話とかほぼ聞いてないからな。
「是非お願いします!」
「いやー、そう言ってくれると助かりますよ」
「3級か4級で腕試ししようとしてた所なんですよ。天魔さんのお誘いは僕達からしたら、渡りに船って感じです」
「それで他のギルドとの仲介もお願い出来ます?」
「勿論お任せ下さい。交流のあるギルドがいくつかありますので。そこに声をかけようかなと思ってます」
桜にアポを取ってもらってすぐに会う事が出来た。稲葉さんはすぐに了承してくれてありがたい限りだぜ。
「零細ギルドなんでツテがなくって。探索者のレベルアップには横の繋がりも大事だと思うんですよね」
「零細ギルドって。そんな事を言ってたら他の探索者に怒られますよ? でも天魔さんのサポート有りで2級攻略はありがたいですね。他のギルドも二つ返事でOKしてくれるはずです。天魔さんの事も気になってる人がいるのか、いくつか指導に関してどうだったか、連絡がきたくらいです」
おお! 新たな顧客ゲットチャンスじゃん!
「それで? なんて言ったんです?」
「強くなるのは間違いないけど、三途の川は何度も見えたと」
うーん。…うーん。ギリギリセーフか。
これで尻込みするようなら強くなる気がないって事だし。どうしても強くなりたいギルドが居る事を祈るぜ。
稲葉さんには他ギルドと仲良くなりたいから、2級の狭間を一緒に攻略しませんかと言ってある。
万が一の時の為に探索者を味方にしておきたいとは言っていない。
探索者をレベルアップさせたいのは本当だからね。まぁ、悪い事でもないし別に良いだろう。
「じゃあお願いしますね」
稲葉さんと別れてそのまま協会へ。
車を買ってからというもの、フットワークが軽くなってるな。
引きこもり卒業も目の前だ。
「改装が終われば出戻りニートになる予感しかしないよね〜」
「なんなら引きこもるために改装したまである。その時の為に、探索者をレベルアップさせて俺が出張らなくてもいい体制を作っておかなければ」
1級がまた出現したとなれば飛んでいくけどね。
自家用ジェット。諦めてませんから。
「2級でも大金になると思うけどね〜」
「今回は仕方ないけど、2級は出来れば今の探索者の為に残しておきたいな。崩壊したら話は別だけど」
俺が全部持っていっちゃうと、それはそれで他からやっかみが凄そう。
成長すれば2級が上位ギルドの主戦場になるんだしさ。
「それにしても」
「ん〜?」
「くつろぎ過ぎじゃない?」
助手席でシートを倒してスマホをぴこぴこしてる桜に視線を向ける。少しは運転しようと思わないのかね? 俺、団長なんだけど?
「んふふ〜。いつもありがとうね〜」
「どういたしまして」
そんな滅多に見せない満面の笑みでお礼を言われちゃ仕方ない。
ちょろいと思うなかれ。俺は基本的は善人で優しいのだ。
ただし、老害はのぞく。あいつだけは許さない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます