第36話 改装開始
「では、明後日から早速始めさせてもらいます」
「よろしくお願いします」
暗殺者の襲撃から1週間。
事件に特に進展はなく、支部は潰されたみたいだ。一度署に行って話をしたが、ゴタゴタして俺が動くのを恐れてたみたいだね。
迅速な対応に感謝します。今は支部で残っていた情報を精査しつつ、依頼者の割り出しをしてる所らしい。その調子で是非とも頑張ってもらいたい。
で、まもなく改装が始まる。外注のデザイナーさんとも契約をしっかりと結ばせてもらった。俺にはないおしゃれな事務所や家にしてくれるだろう。
少なくないお支出があったが、まだまだ懐は暖かい。
再来週から始まる『暁の明星』を指導する対価としてお金が貰えるしね。
何か欲しい物はありますかって聞かれたけど、特になかったもんで。
無難にお金にしときました。
初回だからサービス価格だけど。次からはもっとお金取るからね。
まずは指導を受けて、強くなる喜びを味わってもらおう。一度、あの快感を知ってしまうともう抜け出せないぞ。
リピーター続出間違いなし。狭間に入らなくても収入を得る事が出来るな。
「改装してる間はどうするの〜?」
「面接は?」
「今は応募者の選別をしてる所だね〜。どこの紐付きかも調べないとだし〜?」
「どうやって調べたりしてんの?」
「んふふ〜」
いや、笑ってないで教えて欲しいんだが?
法律を破る事はしてないでしょうね? やるならバレないようにだぞ? 能力者の犯罪は通常よりも重いんだから。
重罪犯は狭間に無理矢理放り込まれて、素材集めとかしないといけないらしいぞ。
気をつけてやってくれよな。
「改装が終わった後が楽しみだね〜」
今日から改装という事で家を出る。
8ヶ月ほどは我が家に帰って来ない事になる。
改装してる間も家に住める様にしてくれるって言ってたんだけどな。
どうせならこの機会に各地を遊び散らかそうという事で、長期旅行に出掛ける事にした。
「あんな馬鹿みたいな提案でもやってくれるもんなんだな」
「完全に悪ノリだよね〜」
詳細は完成してからという事で伏せておくが、完成したら、正直家から出る事が無くなるかもしれん。それぐらい悪ノリした。
「じゃあとりあえず行きますか」
「すっかりハマっちゃったね〜」
「お金があるって素晴らしいと思うんだ」
最近ハマってしまった、ゲーセンに置いてあるカードゲーム系RPG。
ちょっと試しにやってみたら、桜と二人してハマってしまって、財力にモノを言わせてゴリゴリとランクを上げている。
「いつか飽きるって分かってるのにな。ゲームの課金ってなんで辞められないんだろう」
「一時の快楽に身を任せるんだよ〜。人間ってやつだね〜」
とりあえず『暁の明星』の指導がある日までは、都内に留まり、ゲーセン通いをする予定だ。
くそニートみたいな生活だな。
「うおー! 曲がれ曲がれー!!」
「あはは〜! あたしのスープラちゃんには追いつけないよ〜!」
ゲーセン通い三日目。
俺達が連日通ってるのがSNSにて拡散されたのか、結構な賑わいだ。
お店の店長さんからも感謝のお言葉を頂けるほど、客入りが良い。
今は、カードゲームの息抜きにと、車のレースゲームをやってるところだ。
自分で車を選び、カスタマイズしていくらしく、中々に楽しめる。
息抜きで始めた筈なのに、こっちにもお金をじゃぶじゃぶ投入している。
「くそ! 俺のランエボが追いつけないだと!?」
「あたしのスープラちゃんは無敵〜!」
このレースゲーム。桜が滅茶苦茶強い。
俺も悪くない腕をしてると思うんだが、中々勝ち越せないでいる。
「こうなってくると、実際にやってみたくなるな」
「わかる〜! これだけ飛ばせたら快感だよね〜」
サーキットでも行ってみるか。
車とか貸してくれるんだろうか? 何台かスポーツカー買おうかな。
「あ、車で思い出した。俺達クルマ買おうって話してたのに、結局後回しにしてたな」
「そういえばそうだね〜? 明日とかに行ってみる〜?」
タクシーでも良いけど、車はあればそれなりに便利だしな。そろそろ買っておくか。
「あ、あの!」
「ん?」
そろそろカードゲームに戻ろうかと思ってたら、さっきまでレースゲームで一緒に対戦していた、野次馬A君が話しかけてきた。
「自分、カーディーラーでして! 話を聞いちゃったんですけど、車を買うとか!! 良かったらご紹介出来ないかなと思いまして」
おお。なんとお互いにとって都合が良いんだ。
俺は車を見に行ける。この人は金持ちのカモを捕まえられる。
Win-Winな感じですな。
「それってここから近いの〜?」
「はい! 住所はここです!」
「え? マジですぐじゃん」
しかも俺でも知ってる都内優良店。
こやつ、中々のエリートでは?
「よーし。じゃあ明日はそこに行くか。お兄さんが案内してくれるんですよね?」
「勿論です! お待ちしております!」
このお兄さんも中々運が良い人だな。
遊んでたらカモを見つけるなんて。
「じゃあまた明日〜」
桜はそう言いながら、カードゲームの方に向かう。俺も慌てて追いかける。
「じゃあ明日の午前中には向かうと思うんで、よろしくお願いしますね」
「はい! 早速今から帰って準備しておきます!」
そんな気合い入れなくても。
いやまあ、ありがたいけど、なんか申し訳なくなってくるね。
これで買うのやっぱやーめたとか言ったらどうするんだろうね。
いけない気持ちがむくむくと湧いてきちゃったよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます