享年30歳独身男性、幻獣育成ゲームの世界に転生する~かつてのライバルが溺愛してくるなんて聞いてない~
ソワ
序章
第1話 ゲームクリア
「よっしゃあ!!!」
思ったより大きい声が出て、慌てて息をひそめる。親に内緒で、こっそり布団の中でゲームをやっているのだ。バレたら、ゲーム機を取り上げられて、徹夜で本編クリア後のトゥルーストーリーをクリアした意味がなくなる。
……、足音が聞こえてこないから、どうやらバレていないらしい。詰めていた息を吐き出して、ゲーム機の画面へと視線を戻す。画面には真のエンドロールが流れ、これまでに達成した実績が記載されている。
ストーリー本編・トゥルーストーリーをクリアしたのはもちろん、図鑑やアイテムのコンプリート、全キャラと好感度MAX、全称号収集と……。やりこみ要素という要素はとことん制覇したので、超豪華仕様のエンドロール。
夏休み、全ての時間をかけた俺の集大成。
「長かった、本当に長かった……」
感動のあまりにじんだ涙を、パジャマの袖で拭う。けれど、涙は次から次へと出てきて、
「うっ……うっ」
こらえていたけど、泣いてしまった。
しかたないじゃんか、あのニコラウスにようやく勝って、掴んだエンディングだもの。
ニコラウス、俺が遊んでるゲームの主人公のライバルキャラ。ライバルキャラだが、こいつが本当の主人公じゃね? って思うくらいに、俺はこいつに煮え湯を飲まされてきた。
まず、ニコラウスのバトルの難易度はアホかという程の鬼畜難易度だ。ラスボス戦・真のラスボス戦よりも、ニコラウスと戦闘するほうがめちゃくちゃきつい。ラスボス、なんでこいつじゃないの? と、何度思ったことか……。
次に、攻略キャラや住人キャラのイベントでもニコラウスはかなーり手強い。彼らの主人公に対する好感度が、ニコラウスより低いとイベントが発生しない。もしくは、イベント解決するのが主人公ではなく、ニコラウスの役割になる。それだというのに、彼らがニコラウスに対する好感度は、初期から馬鹿みたいに高い。何一つ選択肢、外さねえようにしないと…… と、リセマラした回数は数しれず。
そして、主人公がゲームの最終目標である、最強の幻獣使いの座に就いても、ニコラウスが立ちはだかる。最後に起こるイベントで、自分の幻獣たちの信頼度が、ニコラウスと彼の幻獣たちのものより低いと、トゥルーストーリーをクリアしたことにはならない。そして、言わずもがな、ニコラウスと彼の幻獣たちの信頼度はものすごーく高い。もう、真のラスボス、こいつでいいじゃん……と、泣いた回数は覚えきれず。
「あのニコラウスに勝ったんだ……俺」
嬉しさのあまり頭がほわほわしてきた。そして、今まで感じなかった眠気が襲ってくる。俺は人生で一番清々しい心持ちで眠りに落ちた。
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