77 擬似的なもの
また風切り音がが聞こえる。
避けたはいいがギリギリなせいで。また浅い切り傷ができた。
「むぅ、勘か運か、はたまた両方いいのか……。中々にしぶといですわね」
令嬢の言うとおり、ステージの砂埃やどこからか入り込んでいた枯れ葉や音で風の刃がおおよそどこから来ているのかを予測__といっても、ほぼ勘で避けている状態だ。
これ、対策使うの渋っていると一方的に切り刻まれて負けてしまいそうだ。負荷とか後の事とか気にしてる場合じゃない。
「まぁ、どうにかなるでしょ!」
楽観的に考えて、私は目に魔法を集中させていく。
この世界には予知眼、千里眼などの多種多様な魔眼が存在している。
中には体内の魔力を固めて動かないようにしてしまい、魔法を使えないようにする
魔眼は先天的、またはダンジョンなどで低確率で後天的に得ることが出きる珍しい代物だ。
今回はそのうちの一つ、
魔力を注がれた眼球は制度が落ちる上に一時的ではあるものの魔力の流れを見ることが出きるようになる。
それこそ本当に一時的なもので負荷だって重たい。
だから永華は回数制限付きの爆弾と称した。
うっすらとだが魔力が見えてきた。
試しに観客席には目を移してみれば色とりどりの魔力を纏っている観客達がいた。目の前にいるカリヤは少し黒の入った緑を纏っていた。
「ふぅー……」
既に目が熱い気がする。
まるで他人事のように考えていた永華は杖を咥えて、魔方陣によって強化された木刀に手を掛け、飛んできた緑の魔力を纏った風の刃を弾いた。
「なっ!?」
まさか弾かれてしまうなんて予想もしていなかっただろうカリヤの表情は驚愕に染まる。
それもすぐに持ち直し、さっきの倍の風の刃を飛ばした。
「ふっ!」
それも永華は木刀で見事に弾いてしまう。
観客席からは大きな歓声が聞こえてくる。
「……明らかに見えてますわね」
永華の動きから見えないはずの刃が見えている事実に気がついた令嬢は永華と目を合わせる。
永華の目には魔眼特有の独特な形をした瞳孔は見られないのだから魔眼ではないだろう。
「まぁ、見えていようが見えていまいが関係ありませんわ。弾かれてしまうのならば対処できない数を用意すれば良いだけの事!」
木刀を構えていた永華は膨大な数の緑色の刃に頭痛を覚えてしまう。もしかしたら負荷が出てきのたかもしれない。
すぐにその場から飛び退き、こちらを練れって来る刃からなんとか逃れる。
距離が空いているのは不利だと判断し永華はカリヤとの距離を積めるべく、自身に向かってくる刃をものともせずに突き進んでいく。
かわして、弾いて、それでも間に合わずに浅い傷が出来上がっていく。
木刀が届く距離になると永華は激しい痛みを訴える眼球に魔力をながすことをやめ、カリヤに向かって振り抜いた。
ガァン!__
あと少しといったところで木刀は止められてしまっていた。
「頑丈な作りにしてもらっていたこと、過去の自分に感謝しなければなりませんわね」
カリヤは魔法を使わずに杖で木刀を受け止めた。
防衛魔法が間に合わない距離、てっきり逃げていくと思っていた永華驚きつつも感心していた。
決闘開始前は木刀を振るわれれば貴族だから情けなく悲鳴を上げるか、そこまでいかずとも初心者のように怯えるだろう__何て思っていたがそんな事はなかった。
むしろ逆、挑発的な笑顔を見せてきた。
木刀を更に押し込もうと力をこめたとき、いきなり人を浮かしてしまうほどの暴風が吹いた。
「うわっ!?て、あぁ!」
体が浮き上がり思わず口を開くと杖は瞬く間に飛んでいく。
すぐに糸で手繰り寄せ事なきを得る。杖がないと魔法が使えないなんて事はないが、極端に扱いにくくなる。
観客席から悲鳴が聞こえてくるほどの暴風のなか平然とするカリヤ考えると、これもカリヤの魔法の一つなのだろう。
「どうも規模の大きいものになってしまうから調整が難しくて観客席の方々を巻き込まないか心配していたんですが、近くにいられると部が悪いので距離を取らせていただきました」
今、永華はカリヤの魔法のなかにいることに気がつく。
このままいってしまえばレーピオがいったように“突風が吹いたと思ったら身体中が切り刻まれる”状態になるんじゃ__
「これで私の勝ちですわ」
カリヤの言葉を合図にでもしていたのか、勝ちの言葉に合わせて背中が切り裂かれた。
「ぐぅっ!」
次から次に見えない刃が永華を襲い、大小様々な傷を作っていく。
すぐに防衛魔法を張ったは良いものの、このままの勢いであれば、そこまで時間をかけずに破られてしまうことだろう。
苦手ながらに飛行魔法を試してみるも、私の下手な飛行魔法じゃ暴風の中から抜け出せない。糸で動けないかと試しもしたが風の刃に切られてしまう。
令嬢を見れば勝ちを確信している、そんな笑顔だった。
防御魔法にヒビが入っていく。
悠長に考えている暇はない。
ヒビが広がっていく。
ポーチから木刀を握るとき胸ポケットにいれた糸を取り出し、魔方陣を編んでいく。
魔方陣の編み上がりと同時に防御魔法が壊れてしまった。
その光景を見ていたカリヤは勝ちを確信していた。
この状態になったら解放された誰も彼もが地に伏してカリヤを怯えた目で見て敗けを認める。
勘だけで致命傷になるような攻撃を避け、何をやったか無色透明な刃を見れるようになり持っていた棒で弾いた。
「ふぅ、手が痺れますわね」
棒と受け止めた手が痺れ、それを緩和するために手を振る。
数で押しきろうとしたのに避けて弾いて怪我をしつつも一発カリヤに打ち込もうとした。
こんな状態でなければ誉めていたのに、何て思う。
ボン!__
終わったと思ったカリヤが永華から視線をな話した瞬間、赤い光と共に熱風がカリヤを襲う。
「何!?」
見上げれば先程まで永華がいた場所を中心として炎が渦巻いていた。
カリヤの生み出した暴風が炎を助長させ、だんだんと拡大されていき、あっという間に辺り一帯をのみこんだ。
観客席からは悲鳴が聞こえてくるが、ステージから飛び火してこないように結界がはられてるから大丈夫なはずだ。
「永華・戌井さんが出した炎?」
詠唱しているようすはなかったのに……。
あれ、そういえば昼食時に私の幼馴染みが騒動を起こしたとき詠唱せずに魔法を使ったという噂があったような……。
「ハッ、そんなこと気にしてる場合ではありませんわ。このままだと私が蒸し焼きになってしまう」
炎が回りを囲む。熱のせいでタラリとほほを汗が伝って落ちていく。
魔法を切り替え、暴れ来る風を止める。
燃料のなくなった火は勢いを失っていき、だんだんとその規模を小さくしていく。
「火なんて使っていったいなにを__」
カリヤの視界の右下でなにかが動いた。なにかが動いたと認識した瞬間、右の脇腹に重々しい衝撃と激しい痛みが走った。
「がはっ!」
衝撃のままにカリヤは軽く吹き飛びうっすらと焦げた地面を転がる。
「う、ぐ……」
脇腹の痛みに耐えつつ顔を上げると、そこにはあちこち切り裂かれた血が滴り、火のせいであちこちが煤だらけになった永華が木刀と杖を持って立っていた。
「あつ……」
カリヤはずいぶんとしぶといのを戦相手に選んでしまったらしい。
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