46 どっち?
永華視点
「まあ、ようは私の自己魔法で編んだんだよね。ドイリーの要領でね」
永華の話しに永華のことを深く知らない四人は唖然とする。
いくら長い間訓練したとは言え、魔方陣のいっぺんも間違えることなく、即座に選択し魔法は使っているとは言え十分もかからずに編み上げる。威力、水圧の問題だって修正するのにかかった時間は一分もなかった。
二人揃って自己魔法を使えることと良い、的当てのときカルタがど真ん中を正確に撃ち抜いたことと良い、永華の魔方陣を編み上げる速度と良い。この二人、試験を受けに来ている者達の上位に位置するのは明白だった。
「あんたら、実はエリートだったりする?貴族とか」
「え、バイスの町から来た比較的一般人だけど?」
「比較的?」
「まあ、確かにその年で自己魔法使える時点で比較的一般人ではあるか……」
「あと色々とトラブルに巻き込まれやすくてな」
実際、異世界から来たから一般人ではなくて異邦人や異世界人って言うのが正しいんだろうけどね。
「君たちもなかなかだと思うよ?あって初日であんな連携なんて簡単にできないでしょ?」
「まあ、それもそうなんだけど……」
「確かに!俺たち、何か違ったけどワイバーンを倒しちまったんだもんな!」
「メメちゃん頑張りましたの!一番重くしましたもん」
「にしたって、ブレスにゃ驚いたぜ」
話しは移り変わり、ワイバーン擬きの話しになっていた。
「あぁ、本来のワイバーンならばなし得ないことだ」
「あれ、最初に襲撃してたときにも使ってたよ」
「だから民家の瓦礫が燃えてたのね。ってことは、最初からブレスを使えるように設定されてたってこと?」
「たぶん、そうだよな」
「いや、いくらなんでも可笑しいだろ。ブレスをふけるワイバーンなんてよ」
そう、ずっと可笑しいと思っていたのだ。試験にこんな代物を使うはずがなんてない。
ブレスを吹くワイバーンなんて、ほとんどドラゴンと同じだ。
「トラブルか、故意か……」
ベイノットの呟きに緊張感が走り、場は静かになった。
トラブルならば、まだいい。もし、仮に“故意”なのだとしたら、その目的は一体なんだ?
「このメンバー、貴族いたか?俺ぁ国の端の村、南の方の出だ」
「私、中心近くの町よ。父が軍に所属しているけど……関係あるのかしら?私階級知らないからなんとも言えないんだけど……」
「メメちゃんは北の方の海出身です。両親は町の中でも偉い人魚です」
「俺、東っかわの町。別に、この試験で狙われる理由ないと思うけど……」
「私たち西の端だよ」
「僕らは部類的に一般人だ」
出身地はそれぞれバラバラ、ほとんどが一般家庭の出身。
「一番あるのがメイメア狙いか」
「メメちゃんと呼んでください!ベイちゃん!」
「べ、ベイちゃんって……」
「可愛いでしょう?」
「いや、俺みたいな男につけるあだ名じゃないだろ……」
仮に故意だとすれば狙われているのはメイメア__メメの可能性が高い。金か、権力か、当主争いのようなものの延長戦か。
あとは、軍人の娘のミュー。おもいつくのは、捕まえた犯人の怨恨あたりしかない。
ただ、永華とカルタが狙われている可能性は少なからずある。
まず一つ目、ケイ達を襲ってきた者達に姿を見られていたから狙われている可能性。
でも、あの事件から半年の時間が経過したことを考えるとあまりにも遅すぎる。
二つ目、二人を召喚したものが暗躍している可能性。
この国の異世界人に対する姿勢と、異世界から人を呼ぶ労力等を考えれば犯罪者でもない限り殺すことなんてない。すくなくとも、まともな人間は……。
もっといえば一年間放置する理由もわからないし、魔法という力をつけ、人もいるメルリス魔法学校の試験中というのも意味がわからない。
三つ目、なんらかの理由で異世界人だということがバレて、とある団体に狙われている可能性。
さっき異世界人に対する姿勢や呼ぶことの労力を考えると犯罪者でもない限りは殺す可能性は低いといったがある団体ならこのようなことを画策したのも納得である。
その団体は異世界人を害虫と見なし即排除しようとする団体だ。永華達の生まれた世界で実際にあった魔女狩りのようなことをする団体で、世間からはずいぶんと嫌われている。
まあ、妥当ではある。なにせ独断で証拠もないのに異世界人だと決めつけたら即排除だからだ。
だが、その団体がメルリス魔法学校に潜入して細工ができるのかと問われれば疑問は残る。
四つ目、単純に恨まれている可能性。
二人にそんなことをした覚えはない。
あるとするならカトラスの下っぱの捕縛に協力したことだが、知ってるのはあの場にいた四人だけだしヘラクレスは二人の名前を出さないといっていた。あの三人組だって二人の名前は知らないはずだし、ヘラクレスから聞いた話しからすれば報復の可能性はほとんどない。
まあ、ここまで色々と考えたが故意である可能性は低いだろう。どれをとったって、試験の最中にこんなことやるメリットなんてない。
むしろあるのはデメリットが大半だろう。軍人の娘に人魚のお偉いさんの娘を巻き込んでこと、メルリス魔法学校でこんなことをしたとなると敵に回すものが多すぎる。
それに、この“箱庭試験”でおった負傷や致命傷は箱庭からでた瞬間、なかったことになるからだ。ここで殺す意味なんてない。
「……色々考えたけど、事故の可能性が高いだろう。大方上級生の試験かなにかに使うものだったんじゃないかな?」
「それか調節失敗して真逆の方向行ってとか?」
「うげえ、最悪じゃん。それ」
「魔法学校の教師がそんなミスするかしら?」
「ここの先生だって人なんですから変じゃないと思います。ミミちゃん」
「み、ミミちゃん!?」
「可愛いでしょう?」
「か、かわ……」
「嫌ですか?」
「……す、好きにしなさい!あだ名とか、嬉しくなんてないんだから!」
……嬉しかったんだ。
ミューとメイメア以外の心が揃った瞬間だった。
「……なあ」
ローレンスが青い顔をして声を上げる。
「どうしたんです?顔色悪いですよ」
「怪我した?」
「心配ありがとう、永華ちゃん。怪我じゃないんだけどさ……。この箱庭試験って時間まで逃げ切るか、ワイバーンを倒したら終わるじゃん?」
「おう」
「そうね」
「ですね」
「うん」
「そう言ってたな」
「なんで俺達、まだ箱庭の中にいるんだ?」
その瞬間、時が止まった。
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
確かに試験管はワイバーンを倒せば加点されて、即弾き出されると行っていた。
鱗と骨の折れる音がきこえて、血を吐いて動かなくなったワイバーンの方を振り向く。潰れた腹からはち肉が見え、血が溢れて周囲を赤く染めていた。
「しん、でるよね?」
「あれで死んでなかったら生物じゃないだろう」
「模造品だから生物ではないでしょ」
「模造品でも内蔵ぶちまけてんのにあれで死んでないは無理がある。核である魔方陣の描かれたか見も破れてたし」
「でも、箱庭からでれませんよ?」
「ば、バグだろ?」
全員揃って声が震えている。
あり得ない、これ以上あの擬きと戦うなんて勘弁だ。
「……試験が終わるまで、あとどれくらいかかるっけ?」
時間の確認は時計をみろといっていたのを思い出して時計塔を見上げる。
「あれ?巻き戻ってない?」
自転車を必死にこいでいたときに見たように、時計の針は逆回りに動いていた。
「自転車乗ってるときに見いたけど逆回りだよ。たぶん、あれが残り時間を表してるんだよ」
「わかりやすくていいじゃない。けど、あと三十分も残ってるわね」
「あれだけ色々やってて過ぎた時間は三十分かよ……」
あれだけ大変だったからもっと時間がかかってると思ったんだけど、そうでもなかったらしい。
箱庭からでられないのがバグなら、そのうち試験管が迎えに来るかもしれない。来なかったら来なかったで雑談でもして暇を潰せばいい。
「今日はついてな__」
今日はついてないよね。
糸がピンと張ったような空気をどうにかしようと、明るいトーンで言葉を吐いたとき黒と紫の光のまがまがしい光が港町を包んだ。
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