第11話
少し気になって調べたが、一織ちゃんが「それにしてもこの部屋、ずいぶん綺麗ですねー。ふすまとか全く傷ついてないですよ。」と言ったことが、私のあることを思い出させた。私には昨日の夕食の時から記憶がないのだ。
私は昨日夕食を食べてる途中で意識を失い、朝起きたら自分の部屋にいた。それは、他の人たちも同じだった。
そこで私は一つの仮説を立てた。「犯人は他の人たちが意識を失った後に一度私たちを部屋に戻し、その後二人を殺害した」というものだ。
ではなぜ犯人は河童さんと玉藻さんの部屋を間違えたのだろう?どこの部屋に誰が泊まっているのか把握していなかったのだろうか?
仮に犯人が玉藻さんだとして…と思った時、あることに気がついた。今朝から玉藻さんの姿を見ていない。河童さんの部屋に集まった時も、他の人は全員いたのに、玉藻さんだけいなかった。
そして私は一織ちゃんを引き連れて、網縫館を探し回った。玉藻さんを見つけるためだ。しかし玉藻さんの姿はなかなか見つからなかった。ありとあらゆる部屋を探したがいなかった。
ここまでくると、もはや変なところに隠れているとしか思えない。そこで私が向かったのは浴場だ。本当にこんなところにいるのか疑問だが、こうでもしないと見つからない気がした。
しかし「女湯に入るのはやめてください!」と全力で一織ちゃんに止められた。別にやましいことをする訳ではなく玉藻さんを探したいだけなのだが、ダメなものはダメらしく、私はとりあえず人がいるかチェックするように頼んだ。
数分後、一織ちゃんが出てきてこう言った。「椿さんがいましたが、掃除中なので入っていいそうです」よし、これで何か得られるかもしれない。
私はそのまま女湯へ入った。そこには一織ちゃんが言っていたように掃除中の椿さんがいた。デッキブラシで床を磨いていた。
どうやらここの奥には露天風呂があるらしいので行こうとしたところ、椿さんが困っていた。バケツが持てないらしい。私は手伝いとしてそのバケツを持った。
その時に思ったが、実際はそんなに重くない。学校の掃除で使うバケツを思い浮かべてほしい。そのぐらいの重さだ。
私が手伝い終えたところで「キャッ」と小さな悲鳴が聞こえた。間違いなく一織ちゃんの声だ。
「どうしたの一織ちゃん?」「ち、血が、そこに血があるんです。」既にここで二回も惨劇に遭遇していたから、これは嘘ではないと即座に理解した。
そして一織ちゃんがいる方へ向かうと、そこには確かに血痕があった。血痕はどこかへ繋がっているように残っていた。それも追えば追うほどだんだんと濃くなっていた。
それを追い続けてたどり着いた場所は露天風呂だ。もしかしなくてもこの先に何かある。
私は露天風呂へ繋がる扉を開けた。そこで見たものは、先程よりも更に濃くなった血痕だった。そしてその血痕は露天風呂で切れていた。露天風呂の中は赤く染まっていた。
当然そこで待っていたのは、新たな惨劇だった。私たち三人が見たものは、おぞましくも美しかった…
玉藻 舞は死んでいた。露天風呂の中に身を沈めて。
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