第3話 もしかして、見捨てられた?
16時――
緊張の面持ちで、私はPCの入室画面をクリックしました。
どうか次こそは女の先生でありますように――そう、強く願いながら。
そして画面に表れたのは綺麗な女医さん。
やった! 良かった!
心のなかで歓喜の声を上げる私、そして早速診察が始まったのですが……
女医さんからは信じられない言葉が飛び出しました。
「え〜と、予め撮影して送っていただいた頭部のお写真を拝見したのですが……全然問題ないと思いますよ?」
え? その言葉に耳を疑う私。
「あ、あの。でも、本当に抜け毛が酷いんですけど? 髪の分け目は目立つし……頭の皮膚も時々痛むし……怖いぐらいに抜けるんですけど?」
「ですが、他の人たちに比べてもあると思いますけどね〜私だって、大分薄くなりましたよ?」
髪をかきあげる美人医師。けれど、溺れる者は藁をも掴む。今の私はまさにそんな心境です。
「ひょっとすると写真がうまく取れなかったのかもしれません。今、見て頂けますか?」
ここで見捨てられてなるものかと、私は下を向いてすっかり分け目が目立つようになった頭頂部を先生に見せつけました。
けれども……
「う〜ん……やっぱり、まだまだ大丈夫だと思いますけど? それに皮膚が痛いということは、もしかして何か炎症が起こっているかもしれないので一度皮膚科を受診してみてください。それでも改善されなければ、またお話しましょう」
そんな……皮膚科なんて……
皮膚科の数は少ないし、あまり評判の良い皮膚科は地元にはありません。けれど、ここで食い下がるのも気が引けます。
「……そうですか、分かりました。つまり、今の私のレベルではまだ薬は必要ないってことですよね?」
「ええ、そうです。それでは一度皮膚科を受診してみてくださいね」
「はい、ありがとうございました。それでは失礼致します」
そして、私はPCの退出ボタンをクリックしたのでした。
「……もしかして、私……見捨てられた?」
次話へ続く……
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