第6話 やっぱり、変だよ

 子供達とまたいつかと約束してのんびりしていると、ハジが当たり前の様に生活魔法を使って、他の子達にクリーンを使っているのを見たマリアが驚く。


「ナキ、私の目が間違っていなければハジが魔法を……生活魔法を使っているように見えているのだけど……見間違いだよね」

「え? 何、言ってるの。ハジはちゃんと使っているでしょ。大丈夫?」

「……大丈夫じゃない! なんでなの? だって、ハジは昨日までは何も使えなかったのよ」

「あ~ダメだった?」

「え? もしかして……ナキのせいなの?」

「ん~僕のせいになるのかな」

「怒らないから、話して!」

「分かったよ。じゃあ、話すね。あのね……」


 ナキは自分の結界に包まれている状態でなら、ほとんどの魔法が使えることをマリアに話すとマリアが「そんなバカな」と話を遮ろうとしてきたので「先ずは、全部を聞いてからにして」とマリアに言い聞かせてから話を続ける。


 ナキは自分が使えるのなら、自分と同じ様に結界に包まれている子供達も使えるんじゃないかなと思った。だけど、その前に一応、ハジに生活魔法が使えるのかを確認してみると「使えない」と返事をもらったので、ちょうどいいとハジに試してもらった。


 ハジも最初はナキが何を言っているのかと訝しんでいたが、いざ使って見るとハジは魔力切れになるまではしゃいでしまったことまで話す。


「そういうことなのね。でも、教えたのがハジだけでよかった」

「え? それはどういうことなのかな?」

「そうね、ナキはこっちのことは知らないのだからムリもないけど、いい?」

『ゴクッ』


 マリアの声のトーンが変わったことで何か大事なことを言うのだろうと思わず生唾を呑み込み、何を言われても大丈夫なように平常心を保つ。


「あのね、魔法を使う為には体に魔法回路サーキットが必要なの。そして、その魔法回路は十歳を目処にある程度の形が出来ると言われているわ」

「十歳……じゃあ、もしハジじゃなく例えば、オジに使わせていたらどうなっていたのかな」

「そうね、悪くて魔力回路が暴走して体がはじけ飛んで霧散するか、よくても体の中がズタボロになって寝たきりになっていたかもしれないわね」

「……うそ」

「ナキに嘘言ってもしょうがないでしょ」

「そうだけど……」

「とにかく、他の子には使わないように私からちゃんと言っておくから。ナキはハジが暴走しないようにちゃんと面倒みてよ」

「うん、分かったよ」

「でも、ナキの魔法はいろいろと規格外みたいね」

「そうなのかな……」


 マリアの説明にナキはハジが何もなくてよかったとホッと胸を撫で下ろすと同時に自分以外の人に対しては慎重になろうと心に決めるのだった。


「ところで」

「なに?」

「固有魔法ってあるでしょ。あれはどういう風になればもらえるの? 生活魔法は教会に高いお金を払えばもらえるってのはハジから聞けたけど」

「ふふふ、高いお金ってのは確かね。それで、固有魔法よね」

「うん、マリアは持っているの?」

「ええ。あるわよ。私は『火魔法』に適性があったわ」

「へぇ……なんかピッタリだね」

「そう? でも、意外と使い途がなくてね」

「そうなの?」

「だって、火でしょ。何に使うにしても燃やさないように、燃えすぎないようにしないとダメなのよ。まあ、冒険者なら欲しいんでしょうけど。私はそうじゃなかったから」

「あ、そうか」


 マリアの話を聞いてナキは確かにそうかもと思う。火を使う場面と言って頭に思い浮かぶのは料理とかお風呂みたいにお湯を必要とする場合だけなのだから。


「それで、固有魔法がどうしたら授けられるかということだったわね」

「うん、そう。どうやったらもらえるの? それって、他にももらえたりするのかな?」

「ふふふ、そういうところはナキも男の子なのね。まあ、いいわ。一つずつ教えてあげるわね」

「うん、お願い!」

「あのね……」


 ナキは興味津々といった感じでマリアが話すのをジッと待っている。マリアもそんなナキの様子を微笑ましく思いながら、自分が知っている範囲であることを断ってからナキに教える。


 マリアが固有魔法について教えてくれたのは、固有魔法は別名『血統魔法』とも呼ばれ、その家系であれば同じ属性の固有魔法が発言する可能性が非常に高くなる。そして、固有魔法の発現は魔力回路が出来る十歳になると自然と使えるようになるらしい。


 貴族であれば家系がハッキリしているので、自分が使えるのは多分これだろうかと思う魔法を試すことで、自分がどんな固有魔法を授かったのかが分かるらしい。


 例えば父方が火で母方が水なら、その子供は火か水のどちらかを授かることになる。だから、そのどちらかを試し上手く発動出来た方が、自分の固有魔法となるらしい。


「それだと、浮気とか出来ないね」

「そうなのよね。だから、相手がどんな属性の魔法を持っているかが重要になるのよ。実際にそれで不義理が判明したケースもあるらしいから」

「なんだか血液型判定みたい」

「え? なにそれ」

「えっとね……」


 マリアはナキが呟いた血液型判定というのに興味を持ったので、サラッと説明してみると「そうね、それに似ているかもね」と理解するのだった。


「でも、変なんだよね」

「変って何が変なの?」

「だってさ、固有魔法で属性縛りがあるのにさ。生活魔法は使える訳でしょ」

「うん、そうね。でも、それがどうしたの?」

「どうしたのって、だって生活魔法には『火』『水』『灯り』に『クリーン』があるでしょ」

「あ!」


 ナキに言われたことでマリアも何が変なのかを理解したようだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る