第34話 祈り祈られ
あの頃に戻りたいなんてことは言わない。なんだか負けた気がするから。
君と電車を待っていたホームを思い出した。自宅の最寄り駅は違ったので、高校の最寄り駅だ。玄関を出て四分の近さ、同じクラス、仲良しと来れば、私と君が一緒に帰るのに、それ以上の理由は要らない。たとえ君に、同じ駅で降りる友達が居たとしても。
それくらいは私を優先してもらわないと困る。そう思うのは、私の心の中でだけの傲慢だ。君が時々、中学の同級生を連れ立っても、私は笑っていたと思う。
無性に、自らの素直さが憎くなる。私は表情を取り繕うのが上手くない。むしろ下手だ。なんだかすぐに泣きたくなる。本心を曝け出そうとするだけで、体が勝手に涙を作る。私の体は役立たずだ。
それでも君に、私の仄暗い部分はバレなかっただろう。君は私を神様みたいだと、違う友人に言ったことがあるらしい。なるほど、私は巷でこっそり信仰されているタイプの神様だったか。
だから、戻りたいとは言わない。神様はきっと、願わない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます