第15話 君が殺した
何を見ても、見ていることができていない。なんとなしに窓の外を見たりするんだけれど、結局景色を享受してはいない。何故って、頭の中で君のことをぐるぐる考えているからだ。人は考え事をしている時、何も見てはいない。
仮免をとったあとの教習で、見通しの悪い道路に出くわした。ミラーがあるからそれで確認してと隣の教官は言って、私も返事をした。そのくせ私は変なタイミングで走り出して教官にブレーキを引かせた。
どうして行けると思ったのか教官は困惑していた。だが一番困惑したのは私だ。私は今、なぜアクセルを踏んだのだ? 対向車が来ているのもバッチリ見えていたのに。
答えは恐らく、君が握っている。その時の私はふと、君のことを思い出してしまった。あの丸い鏡の中に、君を見てしまったのだ。いないはずの君を。
教官に注意されている最中も、私の頭の中には君がいた。
いつか私は、君に殺されるのかもしれない。それなのに、傍から見れば私の自業自得にしか見えないのが、本当に悔しい。
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