第16話斬真

里見視点


「行くぞ、春華」


『はぁい』


オレは春華を構え、薙刀の男を見やる。


「これはいい、あのガキをやる予定だったが、向こうから殺られる奴が追加でやってきてくれるなんてな」


「安心しろ、そう簡単には殺られねぇ、やられるのはアンタの方だ」


『アタシ達がそう簡単に負けるわけないじゃない、馬鹿な男ねアイツ』


オレ達もそれなりの修羅場をくぐって来た。簡単にやられては世話がないからな。

オレは春華を低く構え、ゆっくりと腰を落とす。


「行くぞ」


「こい」


オレは低く構えたまま、勢いよく前に飛び出し、相手の胴を狙い横薙ぎに刀を振るった。

だが、オレの攻撃を薙刀の男は高く飛び上がる事で回避し、真上からオレの頭目掛けて薙刀を振り下ろしてくる。


『康太!上!』


「分かってる!」


オレは春華の合図と同時に、刀を頭上で横に構えて防御の体制をとる。

ガキィン!と強い金属音が響き、ギリギリと、オレと男の鍔迫り合いが続く。


「やるなお前」


「まぁな」


オレは奴の薙刀を刀で振り払うと、奴はその反動を利用し、オレから一気に距離をとる。


「行くぞ、春華」


『あら、アタシの能力を使うのね』


「あぁ」


オレは遠く離れたこの距離から、やつに向けて斬真を放つ。


「斬真・一閃!」


ビュオオと言う音と共に、オレの斬撃が奴に向かって飛んで行った。


チッ


「!」


だが奴は、オレの斬撃が当たる直前に飛び上がって回避する。


「なっ!?」


『嘘でしょ!!?アタシの斬真は初見じゃ回避出来ないわよ!!?』


なぜ奴は、オレの攻撃を回避出来た?普通説明も無くかわすなんて出来るわけないぞ…


「あぶねぇな、当たったら真っ二つじゃねぇかコラ」


「こっちは真っ二つにする気だったんだよ」


「だったら残念だな」


『ねぇ康太、アイツムカつく』


「もう1発撃てば当たるだろ」


オレは、今度は縦に刀を振って斬撃を飛ばした。


「斬真・一閃!」


すると、男が薙刀を真っ直ぐオレに向けて仁王立ちで構える。

なんのつもりだ?アレで何を…


チッ


フラっ


何かがかすれたような音が聞こえ、その瞬間、男は身体を半身にして斬撃をかわしやがった。


「2回もかわしたところから見て、まぐれじゃねぇな」


「タネが分からねぇってツラだな。なら、分からねぇまま死ね」


男は真っ直ぐとこちらに向かいながら、薙刀を振り上げた。


『ねぇ康太、アレやってみない?さっきの斬撃、まだ残してるし』


アレ?あぁアレか。そうだなやるだけやってみるか。


オレは薙刀の届く間合いに入る前に、奴に向けて、また斬撃を放った。


「何度やっても同じだ!!」


やはりと言うか、当然のように薙刀を前に出してからかわす素振りを見せるこの男、なんとなくだが、どーやって斬撃をかわしてるのかわかってきた気がする。おそらく、あの真っ直ぐに伸ばした薙刀に斬撃をカスらせて距離とタイミングを測ってるんだろう。


だが、今やろうとしてるのはそんなことでは防げない。

オレは、縦横無尽に斬撃を放ちまくった。


「!?とうとう気でも狂ったか」


男は、オレの行動の意味が分からず、斬撃を弾きながらもう一度オレから距離をとった。


「いや、ただの準備だ。気にするな」


男には気づかれていないようだ。これなら大丈夫そうだな。


「春華、準備出来てるな」


『勿論、完璧よ』


「流石だ」


これで全ての準備が整った。


オレは奴に向かって一気に走り出す。


「無策に突っ込んできたか!これならリーチの長いオレの方が有利だぞ!!」


「春華、斬撃の場所は?」


『アイツのちょうど真上ね、かわせるわ』


男が薙刀を振り上げるタイミングを見て、オレは地面を強く蹴る。


「もらった!!!」


ブォォン!!


男が間合いにオレが入ったタイミングで薙刀を振り下ろすが、その場にはもうオレはいない。


「なに!?」


「斬真・天」


「!」


オレは、先程縦横無尽に振って飛ばした斬撃を空中で留め、それを足場にしていた。

つまり今、奴から見ると、オレは真上で逆さの状態で宙に浮き刀を構えてるように見えているわけだ。


「なっ…どうやって宙に…」


「わからねぇまま、死ね」


オレは足場にしている斬撃から足を離し、奴の真上から落下しながら刀でヤツを斬り裂く。


ズバン!!!


「ぐわぁぁぁ!!!」


「オレの…勝ちだ」


そう言ってオレは立ち上がるが、背後からまだ殺気を感じ取る。


「まだだぁ!!」


「!!」


オレの背中を狙って、奴が刀を振るうが、間一髪でオレはその攻撃をかわす。


「ぜぇ!はぁ!」


まだ生きてるのか


『嘘!直撃だったのに!!』


奴が立ち上がるのを春華も予想だにしてなかったのか、春華も驚愕の声を上げていた。


ボロボロ


よく見ると、斬り裂いた奴の身体から土のような塊が崩れ落ちてくる。

なるほど、能力を使ったか。


「能力か」


「そうだ!オレの刀の能力!土鋼つちはがね!こいつがある限りオレに致命傷は与えられねぇぞ!!!」


奴は、着ていたシャツを引き裂き、胴体をあらわにすると、奴の身体は土の鎧で囲われていた。

鉄壁の防御ってか、だがあまり戦闘向きではなさそうだがな。


『往生際が悪いわねアイツ』


確かに、だが、今勝機があるのはオレ達だ。


「いいだろう、なら、次の一撃で終わらせてやる」


「やれるもんならやってみろ」


「春華、全速力だ」


『何する気よ?』


「斬撃全て利用する」


そう言ってオレは、腰を深く落として空中に留めた斬撃に次々に高速で飛び移る。

そのスピードで、やつにはオレが何人にも分身してるように見えているはずだ。


「チッ!どこから来やがる!!」


奴が警戒しているが、そんなのはもう関係ない。

オレは分身と同時に一斉に奴に斬り掛かる。


「斬真・天乱」


ズババババ!!と強烈な音を立てて、オレは奴の土の鎧を斬り裂いた。


「残念だなぁ!!オレには届いてねぇぞ!!!」


「安心しろ、これがラストだ」


オレが刀に着いた土を振り払うと、それと同時に空中に留めておいた斬撃を一斉に奴に向けて動かした。


「ぐぅぉぉぉぁぁぁ!!!!」


「今度こそ…終わりだ」


斬撃は、薙刀を叩き斬り奴の身体も切り裂き、奴は地面に倒れ込んだ。


この勝負、オレの勝ちだ。

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