第14話それぞれの闘い
「さぁ、やろうか」
やりたくないんで帰ってください。とは言えねぇよなぁ。
オレは椿を構えて、小太刀男の動きを見ようとする。
「そういえば名乗ってなかったな、オレは
何、その中国拳法でも使ってそうな名前、と…そんな事は置いといて
「椿、死にたくないからgo to homeしない?」
『ダメじゃ』
ちくしょう!オレが死んだら呪ってやる!
浪詩は、小太刀を構えて真っ向からこちらに向かってきやがった。
あいつ、あのリーチの長さでよく向かってこれるな!!?
『落ち着け神威、あやつの小太刀はういはと対象的じゃ、つまり接近せんとあやつの刀が当たることはまず無い。近ずけさせずに勝てばいいだけじゃ』
「結構ハードル高くね?無理なんだけど」
『無理できないはやってみてから言うもんじゃ』
ブラック相棒め、なんて鬼畜なんだ。
会社なら労基に即通報だぞまったく。
そんなことをしてる間に、浪詩とか言う名前の敵がかなり近くにまで近づいて来ていた。
「やばっ!」
「死ね」
ヒュン!
あっぶねぇ、オレはギリギリで背中を仰け反らせて小太刀をかわし、即座に後ろに下がる。
『このまま前に出よ!』
は!?正気で言ってんのこいつは!?
オレの意思と関係なしに、椿はオレを操って体全体を前に押し出す。
『横薙ぎ!!』
オレに指示を出しながら、椿は今度はオレの脚を操って低くしゃがみ込ませ、オレは椿の指示通りに、横薙ぎに刀を振り、浪詩の膝を切った。
「!?」
浪詩は、膝を切られた事に一瞬驚きの表情を見せて、後ろに飛び退いた。
『惜しいのぉ、浅かったか』
「何を狙ったんだ?」
『膝の腱じゃ』
剣?件?…けん?
『簡潔に言うと、膝の神経じゃな』
なんか、聞くのが怖いけど、一応聞いておこう。
「腱が切れたらどーなんの?」
『立てなくなる、一生じゃ』
怖っ!え?腱って言うのはそんなに重要なの?
『じゃが、全くもって無傷という訳でもなさそうじゃな』
椿がそう言うので、視線を前に戻すと、浪詩の足がガクガクと震えていた。
え?もしかして切れちゃった?
『膝の腱を、完全にではないがある程度切れたのじゃろうな、おそらく動きが鈍くなるぞ』
「喜んでいいのか、喜ばない方がいいのか」
オレ達が浪詩の姿を確認すると、浪詩の小太刀が人の姿に戻った。
「フン!情けないな、それでもアタシの使い手かよ」
暴力的に言葉を吐き捨てたボーイッシュな姿の女の子が、浪詩の隣に立つ。
「うるせぇよ、黙って刀に戻ってろ」
「あんだよ、せっかく治してやろうと思ったのによ」
「人になったって事は治すんだろ?ならさっさとしろ」
「チッ」
口悪っ…なんであんなに喧嘩腰なんだよあの二人。
女の子が浪詩に手を当てると緑色の光りが浪詩を包む。
その後光りが収まり、女の子が浪詩にキスをして、また小太刀の姿に戻ると、浪詩の足の震えは治まり、顔色が良くなっていた。
「なぁ、椿さんや」
『なんじゃ?』
「足の怪我…治ってね?あれ」
『治っとるのう』
治っとるのうじゃねぇよ!!!アイツの能力ってまさか!!!
『おそらく、あやつの能力は治癒じゃろうな』
勝ち目ないじゃん…どないせぇと言うんじゃ
『さ、同じ手はくわんじゃろうし、もうひと踏ん張りするぞ、神威よ』
いーや、ほんとに帰りてぇ…
数時間前、里見視点
オレが八九師に警告をした放課後、少しばかり八九師の事が心配になったオレは、春華を連れて様子を見に行くことにした。
「ねぇ〜ちょっと過保護なんじゃなぁい?」
「そうか?」
隣を歩く春華にそう言われ、オレは首を傾げた。
そこまで過保護なつもりはないんだがな。
「あの子達って黒羽の情報を得る為の諜報員みたいなものなんでしょ?だったらそこまで気にしなくてもいいんじゃない?」
「まぁ、そう言うな、ただ情報を得るだけじゃない。アイツらとの約束もあるからな、責任は持たないとオレ達の信頼にも関わるし、何より、先輩は後輩の面倒を見るのが常識だからな」
春華はため息を着くと、フワリと浮かんでオレの頭に両腕を置く。
「妙なところで律儀よねぇあなたって」
「フッ悪いことではないだろ」
「ハイハイ、そうですねぇ」
そうは言うが、なんだかんだでコイツはオレに付き合ってくれる。
頼りになるいい相棒だとオレは思っている。
「ところで、アイツらの居場所は分かるか?真っ直ぐ家に帰ってるならそれでいいんだが」
「ん?あぁ、お友達と遊びに行ってるっぽいわよ。さっき校門から出ていくの見かけたわ」
「は!?何やってんだあいつらは」
気をつけろと、あれ程言った矢先にそれかよ。
オレは大急ぎでカバンを持って、アイツらを探すことになった。
「急ぐぞ!!オレ達がいない所でアイツらが襲われたら」
「まぁ、間違いなくアウトよねぇ」
呑気に答える春華を連れて、オレ達は八九師の教室に向かう。
バタン!と勢いよく扉を開け、残っている生徒に八九師の行った場所を聞いて回る。
「悪い!誰か八九師がどこに行ったか知らないか!!?」
「八九師君?確かいつもの3人と椿ちゃんの4人でラウワン行こうとか言ってたような…ところで先輩、その頭に腕を乗せて浮いてる人って…」
ラウワンだと!?危機感ってもんがねぇのかよまったく!!
「すまん!恩に着る!」
オレは、答えてくれた女生徒に礼を行って急いで教室を飛び出した。
「春華、ここから1番近いラウワンってどこだ?」
「ここから10km先に1ヶ所だけね、十中八九そこじゃない?」
「わかった、とにかく急ぐぞ、人目に付くとまずいからお前は降りて走れ」
「え〜」
文句を言いながらも、春華は素直にオレの頭から腕を降ろして地に足をつけると、オレと並列して走り出した。
「見つけてどうするのよ?あの子達だけでどうにか出来たらアタシ達探す意味ないわよ?」
確かに、春華の言う事も分かる。
だが、別にそれならそれで構わない。
「今アイツらを死なせる訳にはいかねぇんだよ」
オレはラウワンの店内に入ると、店員に八九師の写真を見せて居場所を尋ねた。
「すいません!こいつ、ここに来ませんでしたか?!!」
「あー、その子ならさっき見かけたよ」
ビンゴ、やっぱりあいつこのラウワンに来ていやがった。
「ありがとうございます!」
オレは店内中を探し周り、ようやく見つけた時には、既に八九師と椿が敵に襲われかけていた。
「まずい!春華!!!」
「分かってる」
オレは春華とキスをして、即座に春華を刀にすると、椿に襲いかかってるやつの刀を防ぎに行く。
ガキィン!
「先輩!!!」
ギリギリセーフだな
「探すのに手間取ったぞ、八九師」
だが、見つかって何よりだ。
あとは八九師と椿をなんとか一緒にしちまえば
そう思ったオレは、椿を刀で釣り上げて八九師に向けて放り投げていた。
「行ってこい!!」
「キャァァァァ!!!」
『康太も無茶するわねぇ』
構わん、無茶でもなんでも目的さえ達成出来ればいいのだから。
「させん!」
「いーや、やらせてもらう」
すると、薙刀を持った敵が椿を狙っていたので、オレはそれも防御して見せた。
「チッ」
「甘いな、おっさん」
『ブフッおっさんですって、ウケる』
刀のまま笑う春華だが、聞こえてないぞ。
「向こうの敵は八九師達に任せよう。オレ達はあの薙刀を倒すぞ」
『了か〜い』
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