第9話先輩の実力
放課後、オレと椿は約束通り、昨日里見先輩と話した教室へとやってきた。
「来たか」
「あらぁ、この子達が
オレ達を待っていた里見先輩と、もう1人はおそらく里見先輩の刀だろう。花魁のような姿の人がそこで待っていた。
「ちわっす!」
「初めましてじゃの」
「ブフッ!じゃのって、年寄りくさっ!おばあちゃんなの?ねぇ?実は何歳なの?」
ブチッ
何か切れた音がしたんですけど…何で会って早々に嫌な空気流れてんの?
「随分とババ臭い刀を連れとるようじゃのう、先輩よ。もっと人を見る目を養うようアドバイスしておくぞ」
「あ"ぁ?胸もまだ小さいガキに言われたくないわよ」
「別に妾の胸は平均サイズじゃ、それに大きさばかりに気を取られとるようでは女としての底が知れるぞ、お・ば・さ・ん」
何で開始早々に一触即発してんのこの2人、怖いんですけど。
「はぁ…やめろ
「はーい」
里見先輩が、頭を掻きながら春華と言う刀を止めてくれた。
よく平然としてられるなぁ。
「オレの刀がすまなかった。オレがこいつの代わりに謝罪しよう」
里見先輩は、オレ達に深々と頭を下げる。
「い、いえ、こちらも挑発に乗っかってしまった訳ですし」
「フン」
まだ機嫌悪いよコイツ…仕方ない、とりあえずオレと里見先輩で話しを進めよう。
「で、手を組むという件なんですけど、実はオレの椿は五大刀輝という刀の1本でして」
「そうか、それがどうかしたのか?」
本題はここからだ。
「そして、黒羽という刀も五大刀輝というのは知っていましたか?」
里見先輩は、静かに首を横に振った。
「いや、初耳だ。どうしてそれをお前が知ってる?」
「椿は他の五大刀輝を知っているようなんです。そして、五大刀輝同士は引かれ合うと」
それを聞いた里見先輩の、目の色が急激に変わった。
「本当か!!?」
「はい、本人が言うので間違いないです」
「妾達五大刀輝は、他の刀と違い、見えない糸で繋がってるようなもの、いずれ相まみえることはまず間違いないと思って貰って結構じゃ」
里見先輩は、嬉しそうに手を握り、ガッツポーズをとる。
「ようやくだ。探し続けた甲斐があった。ここに来て、欲しかった手がかりが向こうから歩み寄ってきてくれるチャンスが訪れるなんてな」
「でもぉ、それってホントなのぉ?」
春華さんは、こちらを見ながらそう言ってきた。ホントとは?
「その女が五大刀輝って事も嘘かもしれないし、それが嘘なら黒羽が五大刀輝じゃないかもしれない。簡単に信用しすぎよぉ、康太ぁ」
康太って里見先輩の事か?下の名前康太って言うのか。
「嘘ではない!!妾達五大刀輝は、他の刀とは違う名刀と呼ばれる存在で…」
「だ〜か〜ら〜、それを証明するものがないでしょって言ってんの」
春華さんにキツく言われ、椿は涙を浮かべながらオレの服を掴む。
分かってる、お前は嘘をつくようなやつじゃない。それは、誰よりもオレが理解している。
気づけばオレは、椿を抱き寄せて宥めていた。
「構わねぇ、嘘なら嘘でオレ達の目的に影響は無ぇ」
「康太…」
「例え嘘だとしても、黒羽と闘うという意見に変更はない、そして、こいつらが最後まで生き残るようにオレ達が手を貸すという条件もな」
里見先輩は強い意志で、オレ達にぶつかってくる。それにはオレ達も答えなければならないな。
「分かりました。里見先輩がそれでいいならオレ達は何も言いません。構いませんか?」
「あぁ、それでいい…後、一つだけ確認しておきたいことがある」
「確認しておきたい事?」
「ここじゃなんだ、外の人気のないところに行こう」
外に出たオレ達は、人気のない製造中の橋にやってきた。
「こんなとこで何するんですか?」
「お前達の実力を見ようと思ってな」
そして里見先輩は、春華さんにキスをして刀へと変形させた。
「お前たちもさっさと契りをかわせ、殺し合う訳じゃねぇが刀同士の真剣勝負だ。本気で来い」
何て理不尽なんでしょう!オレ心の準備がまだ出来てない。
「神威…」
ギュッと服の袖を掴む椿は、どこか悲しそうに、だが決意を決めたような表情でこちらを見てきた。
「…わかった」
オレは椿に唇をのせると、椿もオレを受け入れて刀に変形してくれた。
「先輩、手加減はしませんよ?」
「あぁ、当たり前だ」
オレ達は同時に前に飛び出して、刀をぶつけ合った。
椿視点
五大刀輝を疑われてから、なぜだか妾は本当に特別なのかと疑問を抱いてしまうようになった。
今現在、先輩と神威が妾達刀を使って勝負をしているが、それもなぜだか頭に入ってこない。
妾は、神威の足枷になっておるのだろうか?五大刀輝など意味をなさぬものなのではなかろうか…どうしてもそればかりを考えてしまう。
「…ばき…つばき…椿!」
ハッ!いつの間にか神威に呼ばれていたようじゃ、ここは気持ちを切り替えねば。
『どうした神威よ。まだ不利な状況と言うほど追い込まれてはおらんぞ』
「いや、不利ではねぇけどさ、お前、どうかしたのか?」
感ずかれたか、流石じゃな。じゃが今考えることではないな。
『どうもせんよ、戦闘に集中せぬか』
「いや、今戦闘に集中してないのおま「スキあり!」どわぁぁぁ!!!?」
里見先輩の切り上げを紙一重でかわす神威は、1度先輩から距離をとった。
「あっぶねぇ、もう少しでト〇ンクスに斬られるメカフ〇ーザ様を再現するところだった」
相も変わらず、漫画に例えるのが好きじゃのう。
『無駄口を叩いとらんで、ホレ、行くぞ』
妾は、刀のまま神威を引っ張って先輩に接近する。
「ちょっ!!?まっ!!オレ何も準備出来てない!!!」
『いくぞ神威よ!』
この掛け声で、神威は何がしたいのか察してくれる。
妾にとってそれはとても嬉しかったりする。
「おぉぉ、了解!!」
「『桜華流』」
先輩は警戒心を強めて、ガードの構えを取っていた。
ガードしようと言うのならアレじゃな。
妾は神威の身体を使い、右手で相手の肩を斬るように袈裟斬りを狙う。
ガキィン!!
当然、その攻撃は防がれるが、この技の目的は袈裟斬りではない。
「『
刀を防がれた瞬間、あえて敵に背を向け、相手に密着し、刀を持ち変えて刀の塚で背を向けたまま相手の鳩尾に一撃入れる。
「ぐおぉっ!!」
本来なら、刀を持ち変えて刀身で相手の鳩尾を突き刺すのじゃが、これは殺し合いではないからのぉ、これで十分じゃ。
「ぐふっ…やるな」
先輩は後ろに吹き飛ばされそうになるも、踏ん張りを効かせて後方へ下がる程度ですんだようじゃ、なかなかやるのぉ。
「そうか、お前の刀はそういう能力なのか」
「『能力?』」
妾と神威の声が同時にハモった瞬間じゃった。
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