第2話リセット
「私、今日からここでお世話になることとなりました。椿でございます。不束者ですがどうぞよろしくお願いします」
深々と、床に両膝をつけて頭を下げる椿、ってちょっと待て!そのセリフは誤解を生むぞ!!!
「「「………」」」
「ちょっと待て!!何言ってんのお前は!!!」
「何って、今日からここでお世話になるのだし、当然ご家族にご挨拶を」
「今現在誤解しか生んでないぞそのセリフは!!!口調もさっきと違うし!!!」
椿を見る母、父、妹の
いや、そりゃそうだよね!息子がいきなり女の子連れてきた挙句に、その女の子がこんなこと言ったらそりゃ唖然とするよ!!!
「え…えーっと椿ちゃん?」
「はいお義母様」
「お義母様!!?」
一瞬我に返ったおふくろだったが、また唖然としてしまう。どーしてこーなった?
「椿ちゃん、ご家族は?お家で心配してるのではないかな?いきなりここに住むなんて」
そうだそうだ、もっと言ってやれ親父。
「実は私、事故で両親を亡くしてしまい。路頭にさまよっている所を、この神威さんに拾っていただき、あれよあれよとしている内にあんな事やこんな事を…ついには私の初めてまで、シクシク」
「おぉい!!!それだと完全にオレが悪者「神威、ちょっと来なさい」ファッ!!?」
オレは親父に首根っこを捕まれ、部屋から出されそうになる。
「待って親父!!これはアイツの作り話で」
「あんな可愛い子が嘘なんかつくか!!!」
ワーオ、美人って便利
「それは可哀想に、いいわ!あなたは今日からウチの子よ!いつまでも居座ってちょーだい!」
「わぁい!新しいお姉ちゃんだ!!!
人を疑うことを知らないのか?ウチの家族は
完全に懐柔されたウチの家族達を他所に、オレは親父に隣の部屋へと連れていかれた。
「いいか神威、男ならやってしまった責任はとらないといかん」
ベランダで親父の隣でコーヒーを飲まされるオレは、何故か親父から話しを聞かされていた。
「いや、だからね?親父よ。あれはアイツが突発で作った話しであって「まだそんなことを言うのか!!!」…」
ダメだ、聞く耳持たんわこりゃ。
「神威よ、オレはそんな屑に育てた覚えはないぞ」
もう屑判定されてるし…オレの信用地の底じゃん。
「とにかく、女性にあそこまで言わせたんだ。しっかりと責任を取りなさい。いいね」
「………」
もはやオレが何を言っても、聞いてくれることはないだろうと思い、オレは喋ろうともしなかった。
「部屋は、沙耶の部屋を」
「いいえ、お義母様、私神威さんと一緒がいいです」
「オイ」
椿の言葉に、お袋は目を点にする。
「え?でも椿ちゃん、こんなクズ男の部屋で寝て襲われたりなんかしたら」
誰がクズ男だコラ、グレるぞちくしょう。
「いいんです。私はもうこの方の物になると決心致しました。その為ならどんな苦行でも耐え忍ぶ所存でございます」
オレの部屋に入ることがそんなに苦行なの?ねぇ
「椿ちゃん…いいわ、もし何かあったら私に言いなさい、神威のお小遣いを減らしていくから」
一瞬でオレの懐事情が大ピンチに
「大丈夫ですわお義母様、私は神威さんを信じてますから」
「椿ちゃん、いい子だわ!神威!あんた私の娘を幸せにしなかったら承知しないわよ!」
実の息子より他人の娘を優先しやがったよこの親、なんて親なんだ。
ってかもう完全に実の娘扱いしてるし
そして、ようやくオレの部屋に入ることが出来た訳だが、とーぜん椿も来る訳でして、
「どういうつもりだよオマエ」
「なにがじゃ?」
オレは椅子に座りながらベットの上に座り込む椿に聞く。
「とぼけるなよ、家に入り浸りなんかして、何が目的だよ」
「目的とは失礼な、妾はご主人様の物になったと言うておろう、だから常日頃から一緒に行動するのも当然の事」
「あんな物騒な物がオレの物とか怖いだけなんだけど!!?」
「物騒とは失礼な!妾その物じゃぞ!」
「元を辿ればただの刀じゃん!!!」
その言葉を聞いて、椿はフッと笑みをこぼす。
「ただの刀とは、ご主人様は分かっとらんのぉ」
「まずそのご主人様ってのやめない?普通に神威でいいよ」
「ふむ、では神威よ。言うておくが妾はただの刀ではないぞ」
「ってーと?」
「妾は
そう言って胸を張る椿は、自慢げな表情をしていた。
その時のオレは、その大きすぎず小さすぎないふくよかな膨らみを目に焼き付けようと「鼻の下が伸びとるぞ」
おっとしまった。
「そんな妾と契りをかわせたのじゃ、むしろ誇ることじゃろうに」
「でも卍解も煩悩砲も撃てねぇじゃん」
「漫画の読みすぎじゃ
「じゃあせめて領域展開を!!!」
「無理じゃと言うとろうが!!!」
立ち上がって否定する椿は、ゆっくりと呼吸を落ち着けながらもう一度ベットに座り込む。
「ぶっちゃけた話し、問題は妾と契りをかわした以上、神威はいずれ残りの五大刀輝とも相まみえることになるという事が問題なのじゃ」
「は?ナニソレ?」
「五大刀輝同士は常に引かれ合う、例え、海の向こう側であってもいつか妾達の前に現れることになるじゃろう、その時、相手が刀と契りをかわしていたとして、今現在の妾達がそやつらに勝てるかどうか」
「は?そんな危ないことになってんの?オレ、じゃあさっさと卍解を習得「卍解はもうよいわ!!!」えー…」
そして、椿はニヒルと笑ってオレの顔を見た。
「まぁ、神威が強くなれば当たらずしも遠からずな技も使えるようになるかもしれんぞ、桜華流にはそのような技もなくはないからのぉ」
「マジで!!?じゃあ今やろう!すぐ刀になってくれ」
「ここここんな所でなれるか!!せ…せめて人が来ない所で」
なんで恥ずかしがってんの?コイツ
「いいから変身しろって、さっきみたいにパパっとよ」
「じゃから無理じゃて…あっ…ちょ…そこは…どこ触って」
そんなやり取りをしている所で、最悪とも呼べるタイミングで妹の沙耶が部屋にやってきた。
ガチャという音と共に、ドアが開かれ妹が入ってきた。
「おにぃ、ご飯ができたってお母さんが、椿姉連れて一緒に下りて……」
「「あっ」」
ベットの上でオレが椿を押し倒しているような光景を見たあと、ギィバタンと沙耶がドアを閉め、廊下から大声でおふくろに話しかける声が聞こえた。
「お母さーん!!!おにぃが椿姉にもう手を出してるぅ!!!」
オレは、慌ててドアを開けて妹をおいかけた。
「待つんだマイシスター!!!話し合おうじゃないか!!!」
「寄るな変態」
「ファッ!!!?」
ついに、妹にまで白い目で見られだした。ホント…グレちゃいそうだ。
翌日、椿は学校入学の手続きがある為、今日はオレとは別行動となり、現在1人で登校中だ。
「あぁぁぁ〜この時間が1番平穏」
どこぞで金属音が聞こえることもないわ、闘いに巻き込まれることもないわで、やっぱり平和が1番だな。
昨日は昨日で家でのオレの扱いが地の底まで落ちたわで、平穏な場所はもうこの通学路しかない。
オレが歩いているとようやく学校が見えてきた。
「さてと、今日も一日頑張りますかね」
「おい、お前」
後ろから話しかけられたような気がしたが、オレではないだろう、うん、オレじゃない…オレじゃない…
そう思ってオレは歩み続ける。
「おい!聞こえてんだろ!」
残念、話し相手はどうやらオレのようだ。
「…何か御用で?」
オレが振り返ると、そこにはいかにもチャラそうな兄ちゃんがオレを見ていた。
「ようやくこっちを向きやがったか。お前、契りを交わしてるだろ」
は?契り?なんでコイツがそんな事知ってんの?
「ナンノコトカワカリマセン」
「嘘つくんじゃねぇよ!!!オレはなぁそーゆー奴の気配が分かるんだよ」
え?ナニソレチートじゃん
「大人しくお前の刀を差し出しな、そうすれば痛い目に合わずに済むぜ」
「え?普通に嫌ですけど」
「何ぃ!?」
何言ってんのこの人は、断るに決まってるじゃん。
「っていうか契りをかわしたら他の持ち主に宿ることはないのでは?」
そう、オレは昨日のやつがそうやって言ってたのをしっかりと聞いていた。つまり、契りをかわした椿はオレにしか使えないということになる。
「へ!そいつぁ情報不足だな。契りをかわした刀は、ある方法を使えば関係はリセットされもう一度契りを交わすことができるんだよ」
「ドラ〇ンボールなら持ってないけど」
「違うわ!!!」
男は指を立てて説明を始める。
「主な方法は3つ、1つ目は刀をへし折る方法、だがこれは刀が使えなくなる上に魂まで殺しちまう。バカがやるやり方だ」
ほう、つまり椿がへし折られると、椿そのものの存在が消えてしまうと…それは良くないな。
「2つ目、ある呪文を唱え魂そのものを1度外し、もう一度付け直してから契りをかわす。さっきまでオレがやろうとしてたのはこれだが、オメーが断るなら話しは変わるな」
呪文か…それも気をつけないといけないのか
「そして3つ目、これが今からオレがやろうとしている事だ。3つ目は、持ち主を殺して連結を断ち切り別の人間と契る事だ!!!」
話しを言い終えた男が拳でオレに殴りかかってきた。
「刀使わねぇのかよ!!!」
「刀を使ってない奴に刀で挑んでもつまらねぇだろ」
なんて律儀な敵なんでしょう、ここがTwitterならいいねの嵐だよ。
オレは男の拳をギリギリでかわし、そのまま男の懐を抜けて走り去る。
「あ!待てコノヤロ!」
「命狙われてんのに待つわけねぇだろ!!!」
椿もいねぇこの状況だと、圧倒的にオレが不利だ。ここは何とか椿を探さねぇと、
「はぁはぁはぁ…」
全力で逃げ回り、ようやくたどり着いたのが人気のない公園、完全に追い詰められたな。
「とうとう観念したかガキ」
「お前に椿はやるもんか」
男は、指をポキポキと鳴らしながら歩み寄ってくる。
「覚悟しろよ?オレのパンチは岩をも砕くぞ」
史上最凶の親子喧嘩の世界にでも行ってくんないかなホントに…
「おらぁ!!!」
男の拳がオレの顔面を貫いたと思い、目をつぶるオレ、だが、次に来たのは懐に誰か飛びついて横に弾き飛ばされる衝撃だった。
ヒュン!という風切り音が聞こえ目を開けると、男の拳は空を切っており、オレはと言うと、椿が倒れるオレの身体に密着していた。
「危ないではないか!!!もう少しで顔に穴が空いておったぞ神威!!!」
「椿?」
椿の顔をよく見ると、涙を流していた。…悪いことしちゃったかな。
「よかった…ホントによかった…間に合ったよぉ」
オレは椿の頭にポンっと手を乗せて、お礼を言う。
「ありがとう椿、お前がいたから今オレは生きてる」
「うん…神威」
「?なnムグッ!」
何?と聞こうとした瞬間、椿がオレの口にキスをしてきた。なんで?
そして、また椿が刀となり手元に現れる。
『妾の神威をここまで追い込んだ男じゃ、徹底的にやってしまおうぞ』
「それはいいけど、なんでキスした後に刀になったの?ねぇ」
『さっ!ささ察せよ!愚か者!』
察しろってもなぁ…
オレは立ち上がって男を見ると、男は黙ってこちらを見ているだけだった。
「話しは終わったか?」
ホントに律儀過ぎない?敵であるのが惜しいくらいなんだけど。
「あぁ、待たせて悪かったな」
「へっ!気にすんな、ウイハァァァ!!!」
「『!?』」
男がウイハと叫ぶと、空から女の子が降ってきた…あ、飛行石持った女の子ではないよ?
青いショートヘアになんとも露出の多い格好で、外に出るのも恥ずかしくないのか?と聞きたくなるレベル、そして極めつけはその子の首に首輪が着いており、その首輪から鎖がぶら下がっている。
まるで奴隷だな
ジャラっという音を鳴らして、男はウイハという女の子の鎖を引っ張ると唇にキスをする。
「んむっ!」
キィィィンと女の子が光り出して、女の子は超長い大太刀へと姿を変え男の手元に現れた。
「お前らが刀になる条件ってキスだったの!!?」
『食いつくとこそこか!!?』
「さぁ、やろうぜ、今度は逃がさねぇし、オレも武器ありの本気だぜ」
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