第15話 サプライズでドヤ顔しないで
「いろいろ不幸な偶然が積み重なったようだが、あの辛気臭いロゼラインが死んでくれたことが、お前にとっては良かったようだな、ゼフィーロ!」
自分の弟に向かって、かつての婚約者を貶めて見苦しく皮肉を述べる
「よさぬか、パリス! なぜ今ロゼライン嬢がゼフィーロの傍に立っているのか、その意味も分からぬか!」
国王が大声でパリスをいさめる
へっ?
国王陛下、視えていたの?
国王の言葉をきっかけにざわざわしだした貴族たち。
「第二王子の傍にいるのはやはり……」
「目の錯覚ではなかったのか」
そのざわめきに耐え切れなくなったパリスは、ばかばかしい、と、捨て台詞を残して逃げるように法廷を後にする。
いやぁ、すがすがしいくらいのクズっぷりね。
国王陛下は嫡男の傍若無人な態度にため息を漏らしながら力なくつぶやく。
「ロゼライン、そなたが生きてくれていたなら……」
でも、それはロゼラインの心に響かなかったわ。
アイリスやゼフィーロ、そしてゾフィらが、自分の死を心から惜しんでくれてそして自分の姿を視認できていると知った時の感情とは違い、ロゼラインの国王に対する気持ちはとても冷ややかだったの。
この後どうしようかと私たちが迷っていると、いきなりサタ坊が姿を現した。
「最後のサービスだ、ここにいる全員にそなたの姿が視えるようにしてやろう」
瞬間、金色の光が法廷内を包みロゼラインの姿が廷内にいるすべての人間の視えるようになったわ。
あたかも光とともにロゼラインが顕現したかのよう!
サタ坊のサプライズな行為にロゼラインは困惑する。
ちょっと、サタ坊!
あんた、何やり遂げた感満載の顔しているのよ!
サプライズやるヤツって往々にして、自分のことを気の利いたヤツだと思い込んでいるのね。
真犯人を有罪に追い込み無念を晴らしたロゼラインが人々の前に姿を現し、それで……。
なんかさ、流れ的には国王陛下や裁判に携わった人間に感謝の意を述べて、そして国の繁栄を祈って消えていきました的な感動的なものを期待されてるわよね。
もちろん個々人、アイリスやゼフィーロ、そしてゾフィなどには感謝の気持ちを持っているけど、彼女がこんな人生を歩まざるを得ない状況にした王家や国、そして貴族社会に対しては憤懣やるかたない思いが、こちらにもひしひしと伝わってきているんですけど……。
「クロ、あのアホ坊には悪いけど、私、空気読んだ発言したくないのよね」
ロゼラインは私に言ったわ。
ちなみに『アホ坊』って『サタ坊』のこと……?
「今、私の姿を認識できる国王陛下、そして皆さま。わたくしはすでに現身を失い人外の者となっております。ゆえにこの国の身分や序列を無視した発言をいたしますことをどうかご容赦くださいませ」
騒然とする法廷内、ロゼラインは良く通る声で発言しながら悠然とお辞儀をする。
要するに、生前の身分や序列なんて考慮しないで言いたいこと言ってやるからね、と、いう宣言よ。
やっちゃえ、ロゼライン!
言ってやれ、言ってやれ!
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