第10話 キャンディ
駅に向かって歩いていると、ショーウィンドウに映った自分が泣いていた。
立ち止まって、涙を拭った。
そんな風にしか思われてなかったのに、あの頃わたしはあいつが好きだった…
もうずっと昔の話なのに、バカじゃん。
その時、LIMEの着信音が鳴った。
『名前呼んで』
変なの…
「颯太、何これ?」
目の前に立っている颯太に言った。
「『何これ』って言わなくても。」
そう言いながらも颯太は笑っている。
「何でここにいるの?」
「家がこっちだから。向こうから歩いてきたら優衣さんがいた。」
「ごめん、変なこと言って。」
「優衣さんは何でここを歩いてたんですか?」
「高校の時のプチクラス会した帰り。」
「楽しかったですか?」
「うん…途中までは。」
「最後、楽しくなかったんですね。」
「まぁ、そんなとこ。」
「そこの、公園行きませんか?」
颯太が目の前の公園を指差した。
「公園?」
「嫌な思い出は、オレが全部上書きますから。」
そう言いながら、颯太は公園に向かって歩いて行った。
「それって、どうやって?」
颯太について行く。
「これ。」
ブランコの前で颯太が立ち止まった。
「大人になってやったら、意外に怖いんです。」
「嘘だぁ。」
「本当です。乗って。」
2人でブランコに乗った。
確かに、大人な分、力があるからなのか、思ったより高いところまで上がって行く。
それに、子供の時みたいに何も考えないわけじゃないから、落ちたらどうしようとか、手を離してしまったらどうなるんだろう、とか思ってしまって別の意味でも怖い。
それでも、スピードが上がるにつれ、笑ってしまった。
一回転するんじゃないかと錯覚しそうになったところでやめた。
ブランコがとまると、颯太がわたしにキャンディをくれた。
「食べたらダメですよ。」
意味がわからない。
「2人の思い出です。」
家に帰って、もらったキャンディを机の上に置いた。
そっか。
すっかり安永のことは頭になかった。
代わりにキャンディを見ると、颯太を思い出す。
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