第3話 待ち合わせ

待ち合わせの朝になって、ちょっと悩んでしまった。

何着て行こう…

頑張ってる感は違う気がするし、でもあまりに適当なのはどうかと思うし…


結局、ボーダーのTシャツにスカート、スニーカーという無難な格好にした。



皐月公園に着くと、1人だけ制服姿だったこともあって、噴水の縁に座っている、北条くんをすぐに見つけることが出来た。

急いで駆け寄って、声をかける。


「ごめんね、待った?」


あ、これってなんか彼氏に言うみたい。


「いえ。」

「どこかお店入る?」

「部活あるんであんまり時間ないんです。」


ん?

時間指定したのは北条くんだよね?

だったらもうちょっと余裕を持った時間に待ち合わせれば良かったんじゃない?


「平野先輩…名前で呼んでもいいですか?」

「あ、どうぞ。」


そういえば当時、男バスの子たちはみんなわたしのことを下の名前で呼んでいた。


「優衣さん。」


なぜかどきっとした。

きっと、みんなが呼ぶみたいに「優衣先輩」じゃなくて「優衣さん」って呼ばれたから…


「オレのこと、颯太って呼んでください。」

「うん…で、大学のことで聞きたいっていうのは…」

「それ嘘です。」

「え?」

「オレ、他に行くとこ決めてますから。」


えーっと…

全然理解できない。


「あー、じゃあ何か他に用が?」

「優衣さん、今彼氏いますか?」

「いないけど…」

「良かった。」

そう言うと、今日初めて笑顔を見せた。

本当にアイドルみたい…


「じゃあ、部活行きます。」

「え?あ、はい。行ってらっしゃい。」


颯太は軽く頭を下げると行ってしまった。



ごめん、全然意味がわからない。

この時間は何だったの?

わたし、からかわれた?

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