第2話

「おはよー...ってなんでお椀が5つもあるの..?父さんが消えて家族は4人に...」


あっそっか父さんは昨日帰ってきたんだ。


「父さんはここにいるぞ~」

「父さん!」

「皆揃ったな~じゃあ父さんの身に何が起こったか話すよ~」


父さん曰く気がついたら異世界にいたらしい、いきなり魔族という異世界人と敵対しているものに襲われたみたいだ。

父さんは偶然居合わせた騎士に助けられ、行く当てがないなら騎士団で雑用でもやれと言われたそうだ。

だが...


「魔力がない?そんなはずないだろう?この世界で生まれたものは皆等しく魔力を持っているのだ」

「僕は恐らく別世界から来たんでしょう...魔力も魔族も生まれてこのかたみたことないんですから」

「バカな!と言いたいところだがそうでなくては説明が行かない...仕方ない君の言葉を信じよう...だがこの世界のものでなかったのなら私達に君を保護する必要はない。」

「まぁ...そうでしょうね~しかしその口振りでは何か案があるのでは?」

「魔族と闘うというのなら国民として扱おう。無論此方で闘える力は用意しよう...」


父さんは了承せざるを得なかったそうだ。

仕方のないことだろう、この条件を飲まなければ路頭に迷ってしまうのだから...

そこからはあまり語ってくれなかったがその後、闘って、闘って、10年過ぎたころ王国が空間をねじ曲げる魔法を作ったそうだ。

しかしあまりにも消費する魔力が多すぎて父さんにしか使えなかったそうだ。

なぜ他の人には使えなかったもなぜ父さんが使えたのかも語ってくれなかった。


「それでまあなんとか~この世界に戻ってこれたって訳だ~」

「大変だったんだね...お父さん...」

「お父さん!今までごめんなさい!そんなに苦労していたとは知らず....あんなことを!」

「あんなことが何か分からないけどいいよ~いなくなったのは父さんの方だし~」


父さんは気にしていないような口調でそう言った。

父さんのことだ自分が悪いと思ってるに違いない。


「隆二さん、久しぶりに家族で何処かに行きませんか?」

「そうだな~いつものキャンプ場でいいんじゃないか?」

「久しぶりに行きたい!お父さん!」

「それじゃあ今から行きましょうか!ね?隆二さん?」

「今からか....うん、今から行こう!」


父さんは何か悩んでいるみたいだったが、問題無さそうだ。

まぁ父さんが帰ってきたことが他の人に知られたら色々聞かれたりして会えなくなるからこの休日くらいは家族で過ごしたいな。


「いや~この車!このアスファルトの道!何もかも懐かしいよ~やっぱり帰ってきたんだなぁ...って」

「父さん...10年も向こうで経ってたって言うんだからなぁ...こっちだと3年なのに」

「時の流れが違うのかもね~」


そんな他愛もないことを話しているうちに俺達は目的地に着く。


「いつ見てもいい景色だね~」

「だよね」


俺達は手慣れた手付きでテントを組み立て、コンロを用意する。


「マッチも着火する機械もないけど火はどうするの?」

「こうすればいいんだよ~」


父さんが魔法で炭に火をつけてくれた。

便利だな、魔法

手を洗う水とかも温水で出せるし...こんな魔法をこんなことに使っていいのかな...もっと人の役に立つやり方の方が...


「翔海...今魔法がもっと人の役に立つものなんじゃないかなと思ったでしょ?」

「なんで分かったの...父さん」

「分かるよ~父親なんだから。結論から言って人の役に立たないと思うんだよ~何故なら僕にしか使えないからね!各国で僕の取り合いになるよ!」


なるほど...父さんしか使い手がいないから各国が父さんを囲いいれようとしてくるのか...デメリットしかない上に人の役に立つと思わないな...


「分かったみたいだね~あ、肉焼けたから食べる?」

「食べる!」


...ふぅかなり食べたな...父さんも風呂は拒否したけどご飯はちゃんと食べてるようで安心したよ。

でも異世界の干し肉とかより何倍も上手い~って言って泣いてたのを見ると向こうの世界はこっちの世界より大分過酷なんだということが感じられた。


「お父さん!食べ終わったから釣りやろ!」

「いいよ~釣り道具は持ってきたし~皆もやるよね?」

「「「「うん!(はい!)」」」」


父さんと母さんは川下に俺達は川上に釣りにいった...さーて何匹釣れるかな...?


「楓...今まで家族を支えてくれててありがとう」

「隆二さん...良いんですよ、あの子達の笑顔が見れたら...まぁ私も笑顔を無くしていた気もしますが...」

「大変だっただろう...子供達を世話しながら仕事をするのは...」

「あの子達はよく手伝ったりしてくれましたよ。あまり私を困らせるようなことをしなかったですし。」

「そうか...僕がいない間にあの子達はそんなに成長していたかぁ...」

「そうですよ。時の流れは早いものです...」

「...そうか~」


...よし釣れた!これで5匹目だ!これで今回一番釣ったのは俺だな!多分!

もうテントのところに皆集まってる。最後は俺だったか。


「遅いよ!お兄ちゃん!」

「ごめんごめん、でも俺5匹釣ったんだぜ!」

「お兄ちゃん強いよー僕3匹しか釣れなかった...」

「私は4匹...」

「お兄ちゃんには敵わないんだよ!弟よ、妹よ」

「そんなお兄ちゃんには父さんが勝つぞ~父さんは8匹だ!

「やっぱり強いな!父さんは!」

「父さんは負けないぞ~」


やっぱり父さんは何をやっても俺たちより強い!最強で無敵の父さんだ!


「帰るぞ~皆~釣った魚は家で食べよう!」

「そうだね!」


再び慣れた手付きでテントを外しコンロを片付け...油汚れ凄いな...これ。


「油汚れ凄いね~それ~それじゃあほいっ!」


その魔法優秀すぎるだろ...一瞬で油汚れが消えたんだけど...

これ一家にひとつ魔法使いが欲しいまであるぞ...


「早く詰めて帰るぞ~もうじき雨が降ってくるみたいだ~」


魔法でどうにか...しないよな父さんだし


「お父さん!明日ショッピングモールで買い物したい!」

「いいぞ~父さんヘソクリ持ってるから、高いものじゃなければ買ってあげよう!」

「....隆二さん?」

「...聞かなかったことにしてくれないかな~楓~」


あーあ、また父さんが消える前にもあったみたいにここから母さん、父さんに圧かけ始めるよ...他のヘソクリはないかっていう感じの笑顔の凄い圧を...


「かっ...楓...他のはないから安心してくれ!」

「それなら良いんですけど...今回だけですよ?」

「ありがとうございます!!」


どうやら魔法が使えても...父さんは母さんに勝てなかったみたいだ。











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