領主の娘はひろい世界に憧れているようです 15

「おじいさーん! 見て下さい! 芽が出ているですよ!」

 

 キリシャがはやくはやくと俺を呼ぶので急いで庭へと行くと、地面からはぴょこぴょこと花の芽が顔を出していた。


 以前キリシャと一緒に植えた種や球根が発芽したのだ。

 地面に芽生えた新たな命を見つめるキリシャの目は輝いていた。


 ちなみにキリシャは以前俺がプレゼントした麦藁帽子とワンピースを身につけている。

 プリティー♡


「お花さんとってもかわいいですよ~♡お花さんは人と違って高確率で芽が出るので安心して育てられるです!」


「まあ……人はなにかと潰れやすいですからな」


 人と植物を同列に語るあたり、やはり領主の娘であった。

 

「えへへ、お花さんたち頑張ったですねー。おじいさんとキリシャの愛の結晶ができたってみんなに自慢して回るです!」


「はっはっは、それは私が破滅しますから勘弁して下さい」


「安心して下さい、キリシャには自慢する相手が皆無ですから!」


「自虐で落とすぅ……」

 腕を上げてきたキリシャであった。


「さあ、こうしてはいられないですよ! さっそく作業を開始するです!」


 キリシャはシャベル片手にいそいそと土をいじりだした。


 何をしているのかと思って手元を見ると、キリシャは覇権争いに負けた哀れな芽たちを、別の場所に植え直していた。


「ほう……間引かないのですね」


 普通、こういう発育の悪い芽は引っこ抜いてしまうものなのだが。


「キリシャは自分が育てた子を切り捨てたりしないのですよ。最初の場所で負けたのなら、別の場所で咲けばいいですから!」


「ほう……お嬢さんはお優しいですな」


「さお花さん、お引っ越しなのですよー!」


 弱い芽を植え直すキリシャ。

 その光景はとってもなごむのだが――。


 お花は、新たな場所でちゃんと咲けるのだろうか。

 その場所がまたお花でいっぱいになったら、次はどこに移るのか。


 そうやって逃げ続けて、どこに行き着くのか――。


**


 庭での作業が終わると、キリシャは疲れたからお昼寝したいと言い出した。


 二人でベッドに入ると、キリシャはさっそく俺に抱きついてくる。


「えへへ。パパ~♡」


 これどこの天使かと思ったらキリシャだった。

 いくらでも甘えてくれていいのよ……。


 俺は父親気分でキリシャとじゃれ合う――。


 しかしキリシャの肌に触れているうちに、体の奥からむくむくとよからぬ思いが湧き出してくる。


 ……すっげえエロいことしたい。


 どうすれば自然な感じでキリシャを脱がせられるだろうか――。


 と、俺はふと思い立ちキリシャのわき腹をくすぐってみた。


「もう、くすぐったいですよ~♡」

 きゃっきゃと笑い、足をパタパタするキリシャ。


 ワンピースの裾が派手にめくれあがって、キリシャのパンツとちっちゃなおへそが露出。

 身をよじるうちに、ワンピースの肩のスリップも両方ずり落ちてしまい、キリシャのブラが顔を出す。


 パンツは限界ぎりぎりまでずり下がっており、股間がもう少しで完全に見えてしまいそう。


 ブラもずれ、片胸がぽろりとこぼれている。

 膨らみはじめの乳房の上に、ちっちゃなさくらんぼのような蕾がちょこんとのっている。

 

 やっと見れた……!


 くすぐりから逃れるために暴れたキリシャは、「はぁ……はぁ……」と深く息を乱していた。

 目も充血している。


「……もう、おじいさんは仕方のないいたずらっこさんですよ! キリシャもいつかやり返しますから覚悟してるといいですよ!」


 丸出しになった片方のおっぱい、ずり下がったパンツ……今この瞬間、キリシャはちっちゃくても『女』であった。


 あまりのエロさに、理性が飛びそうに――。


 と。


「……ん? 誰かきたか」


 扉の方からノック音。


 無視してやろうかと思ったが、キリシャが「今出るでるのでお待ち下さいですよー!」と答えてしまったので、仕方なく出ることにした。


 扉を開けると、そこにいたのは――。


「こんにちは……。姿は違うけど、あなたモトキくんだよね? あ、今はモトキくんって呼ばない方がいいかな?」

 訪問者はルビィであった。


 そういえば、顔を出すように頼んでおいたのであった。


 ルビィは何気ない様子で家の中をのぞき込み――ベッド上に目を止めた。


 ワンピースが乱れに乱れ、くたっとなってるロリっ娘がそこにいる。


「ロリキくん……とりあえず、おうちに入れてくれるかな?」


 俺の名前はモトキだよー。


**


 キリシャには俺だけじゃなく、もっと他の子とも仲良くして欲しい。

 そう思い、ルビィに来てもらったのだが――。


「キリシャちゃん、こんにちは。わたしルビィっていうの。魔導書(グリモア)屋やってるんだよ。仲良くしてくれたら嬉しいな……」

 優しくキリシャに話しかけるルビィ。


 一生懸命お姉さんぶってる感じがたまらん。


 しかしキリシャは――。


「……ふんっ、ですよ」


 むっすう、と。

 ほっぺをパンパンに膨らませていた。


「おやおやお嬢さんどうされたのですか。そんなにほっぺを膨らませて」

 つんつん、とキリシャの膨らんだほっぺをつつく。


「別になにも違わないのです! キリシャは普段からこの顔ですから」


「おや、そうでしたかな? ちょっと違う気もしますが」


「おじいさんはお年のせいできっと記憶が混濁しているですよ! でもご安心下さい、キリシャが介護するですから。介護の邪魔になるのでルビィさんをお帰しして下さい!」


 俺をとられると思って、ルビィに嫉妬しているらしい。

 そっぽを向きながらも、ぎゅむっと俺のズボンの裾を掴んでうーうー唸っている。

 

 やだこの生き物超かわいい……。


 ちょっとめんどうくさいが、しかしこれはいい傾向である。

 人に嫉妬できるのは、自分に価値を感じている証拠だ。


 かつて母違いの妹たちに父をとられたキリシャは、妹たちと戦おうとせず、森へと逃げた。

 どうせ勝てやしないと、戦う前からあきらめていたのだろう。


 誰もキリシャに優しくしてくれないから、自分の価値を喪失していたのだ。


 でも、今は自分の場所を守るため、一生懸命ルビィに対抗している。


 と、そんなキリシャに近寄っていくルビィ。

「キリシャちゃん……わたしあなたと仲良くしたいな……」


 ルビィはそっと、自身の爆乳にキリシャを抱き寄せた。


 その柔らかなマシュマロに包まれた瞬間、ふわっとキリシャの表情からけんが抜けていった。


「わあ……ルビィさんのお胸とっても気持ちいいですよ~♡」

 一発で陥落。


 すげえな、爆乳最強だな。

 

**

 

 仲良くなった二人と三人で楽しくすごし――そうして夕刻。


「あう。もう夕方なのですよ。キリシャはお帰りの時間なのです……」


 キリシャは残念そうに帰り支度を始めた。


 そんなキリシャに、俺は一つ質問をする。

「お嬢さん、最近ご家庭はどんな様子ですかな? 安心して過ごせていますか?」


「そうですね……それが最近、パパと後妻さんがちょっと険悪なのですよ! 少し前まで仲良しこよしだったのにおかしいのです。いえ、キリシャには関係ないですが」


「後妻さんて……」

 戸籍上の母親にすげえ表現を使う……。気持ちはわかるが。


 それはともかく、領主と後妻の中が最近険悪――それはおそらく、俺がやってるあれの影響だろう。


 少しずつ、成果は出ているようだ。


 ……けっこう体張ってるので、出てくれないと困る。



「それではおじいさんルビィ姉さん、ばいばいですよ。また明日遊んで下さい!」


「はい、どうかお気をつけてお帰り下さい」


「キリシャちゃん、またね……」


 キリシャを手を振って見送り――俺はモトキの姿に戻った。


 家のテーブルにつき、ルビィと向かい合う。

 ちょっと用事があったので、ルビィには残ってもらったのだ。


「さーてキリシャで癒されたし仕事するか。さっそくだがルビィ、ちょっと頼みたいことがある」


「なあに……? まだ明るいけどもう脱げばいいかな……? 恥ずかしいな……」

 ボタンを外しはじめるルビィ。


「いやそうじゃなくて……今後のシナリオについてちょっと相談したいのと――その前に、ちょっと書いて欲しいものがある」


 俺は紙とペンをテーブルに置いた。


「今から俺が言うプロットを、シナリオ風の文章にして欲しいんだ」


「? モトキくん、またなにかたくらんでるの?」


「ああ、いつもたくらんでるよ」



 少しずつ少しずつ、準備を整えていく。

 

 キリシャを寝取り、そしてユータロウを打倒するために。

 あとついでに、モンターヴォもどうにかしてやるために。


 ユータロウ、領主一家、ジンゲート家――相手は全部強大だが、なんてことはない。


 周到に準備さえすれば、どんな相手でも打倒できると俺が証明してみせる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る