第8話 星辰の祭日
違うんですボクってほらニートじゃないですか。ちゃんと朝起きるとかそういう習慣が無いんです。それに、そうです☆ ボクって乳幼児でしょう? 寝るのが仕事みてぇなものですから、寝過ごしたって仕方ないじゃないですか♪
脳内で必死に言い訳してみたが、女神からの
焦って語尾が変になりつつ、俺は首を動かして周囲を確認した。レベルアップしたおかげか、昨日よりずっと体が動かしやすい。つーか俺もう歩けるんじゃね?
母親に抱かれた状態で見えてきたのは小さな村だ。中央の広場には噴水があり、白い大理石の女神像が口から水を吹き出している。ていうかあの像、顔がファレシラじゃん。酒でも飲みすぎて吐いてるのかアイツ。
広場には、広場を囲むように六軒の大きな家が建っていた。いずれも黒い柱の間を白い漆喰で固めた洋風の建物で、いずれも
(おい、俺の翻訳スキル、仕事してくれ。周りの人の言葉はわかるのに……)
一軒だけ軒先に野菜を並べた棚のある店があるし、他も店だと思うのだが、八百屋以外は看板があるだけでドアが閉まっている。ミミズがのたくったような見慣れぬ文字の看板だ。
(武器屋! 武器屋はどれ!?)
広場には千人を超える村人がいた。半分くらいは獣人で、鳥頭のオッサンはともかく、猫耳とかウサ耳の中年親父が乳児の瞳を汚染してくる。ハゲた猫耳のデブを見たせいでSAN値がやべえ。残り半分はどれも人間だったが、髪の色は十人十色だし、肌も白やら黒やらで様々だ。服装は単色のシャツにズボンやスカートが多かったが、中には鎧を着た村人もいる。
泉の前で太鼓を鳴らしているのは狼獣人の少年二人で、上半身を脱ぎ、和太鼓のようなモノを左右から叩いていた。リュートに似た弦楽器を構えた草色の長髪をしたお兄さんもいて、たぶんエルフだ。耳が細長い。ドリア旋法のようなコードで知らない言葉の歌を披露している。
(ところどころ歌詞の意味がわかる……知らない言葉じゃなくて、周りはあれを喋っているけど、楽譜の都合で、俺の〈翻訳〉がうまく訳せない感じなのかな)
どうやらメロディと和訳がうまくマッチした部分には〈翻訳〉スキルが発揮され、それ以外は元の言葉ままのようだ——って、この世界の音楽はどうでもいい。
「カオスシェイド、なにか欲しいものはあるか? 父さんたちは昼間、寝ているお前をギルドに預けて蜂の巣を全滅させてきたから金持ちだぞ!」
東南アジア風の父が俺に聞いてきた。自分と同じ色をした俺の黒髪をぐしゃぐしゃと撫でる。
「あうあ? あう!(マジで? 剣を買って!)」
「そうかそうか。ウユギワ焼きか! 賢い子だね。少し高いが、ヤギのチーズと豚肉の組み合わせがたまらないものな」
「うあー!(違え)」
「ん、要らないのか?」
しかしこの父すげえな。あの蜂の巣を全滅?
もしかしたらこの父がオークを倒してくれるかもしれない……と考えた俺は、クエストの条件を再確認した。
〈明日の午後、村で行われる
手段は問わんが、トドメは俺だ。手伝いは頼んで良いのだろうが、最後は俺が殺らなきゃいけないということだろう。期限は祭が終わるまでであり……って待て。そもそも「オーク」ってのはどこにいるんだ!? レベルが上ったし今ならたぶん歩けるけど、ゼロ歳児にオークを探しに行けと言うのか!?
俺は母の腕の中で焦りまくったが、答えはすぐにわかった。
「皆のもの! 皆、静粛に!」
低い女性の声がして太鼓と歌が止まる。村人たちが一瞬なにかを期待するようにざわめいたが、すぐに静かになった。
「
父が人垣をかき分けて母と俺を声のほうに案内し、しわくちゃな婆さんが見えてくる。
黄金色の毛がぼさぼさの、狐の獣人だった。
背はかなり低く、百四十かそこらだろう。服装は青と金の刺繍を入れた白いローブで、回復魔法を使う賢者が着そうな服だ。老婆は左足が義足で、失った足をかばうように杖をついていた。
「ふむ。まずは名前じゃの。名前を受けた子はいるか!?」
「ここに! つい昨日、名前をいただきました!」
母が嬉しそうに応じた。俺を抱えたまま小走りで老婆の前に出て、差し出すように俺を掲げる。他にも二人、子供を抱えた女性らが走ってきて、自分の子供を老婆に見せた。
一人は上等なふわふわの毛布に包まれた金髪の子で、なにかの獣人なのか、金髪の合間に垂れた細長い黒耳が見える。もうひとりの子供は母親から地面に降ろされた。一歳くらいの浅黒い狼の子で、自分の足でヨタヨタと歩く。
義足の老婆は俺を含めた3人のクソガキを見やり、重々しく頷いた。
「うむ。それでは儀式を——」
「ニャー!? ちょっと待つ! あちしの娘が!」
ポコニャさんだった。彼女は黒い猫耳や尾をちぎれんばかりに伸ばし、信じられないといった顔でヒゲの旦那と見つめ合った。ヒゲもヒゲで、両耳を塞ぎながら笑みを浮かべている。
——と、
「「 名前はミケ! それに、“冒険”の加護! 」」
夫婦が同時に叫び、周辺の村人にどよめきが走った。
「嘘……すごい! やったねポコニャ、その子、冒険者の神様に!?」
「にゃ! あぶ
黒猫のポコニャさんはそれ以上は言わず、小走りで母の隣に跪いた。老婆に向かって掲げられた子猫の獣人は青い瞳で、眠そうな顔でぼーっと夕空を見上げている。青い瞳に星の瞬きが反射している。
老婆は追加された子供に重たく首肯し、「他にいないか」と尋ねた。
「居ないようじゃの。よろしい。ならば〈鑑定の義〉を行おう——叡智アクシノの
中年のウサギが紐で吊った画板を胸の前にセットし歩いてきた。ウサギ獣人のおっさんは羊皮紙の巻物を画板に広げ、インク瓶を開き、木軸のペンを構えた。狐の老婆が告げる。
「……記せ。歌の
ウサギのおっさんがすばやくペンを走らせた。それと同時に老婆の体が青白く光り、老いた狐は金髪の幼児に右手の人差指を向け、言った。
「“鑑定”……
老婆はパルテという金髪の子のステータスをすらすらと読み上げ、最後に「パルテは、ウユギワの新たな一員である」と締めくくった。鑑定でMPを消耗したのか、くすんだ色のガラス瓶から回復薬のようなものを飲む。
老婆の横でメモを取っていたウサギのおっさんが青白く輝き、なにかのスキルなのだろう、メモを凝視しながら白紙の羊皮紙にペンを向けた。インク瓶からひとりでに黒インクが踊り、白紙にメモがコピペされる。
おっさんはコピーに赤いハンコを押すと母親に渡し、原本は丸めてポケットに詰め込んだ。
(……新生児を〈鑑定〉しつつ、戸籍を与える儀式っぽいな)
老いた狐を見物していた村人たちから儀礼的な拍手がパラパラと起こり、俺はこのお祭りの趣旨を理解した。
(狐の婆さんはたぶん俺よりずっとレベルが高い鑑定持ちで——俺の鑑定レベルじゃ看破できない「加護のレベル」がどうとか言っていたし、ウユギワとかいうこの村じゃ、あの婆さんの鑑定結果が身分証明になるんだ。
んで、脇に控えたウサギは鑑定結果をメモして、戸籍として原本を保管しつつ、母親にコピー・スキルで複製を渡してる……“鑑定の儀”とか、まさに異世界転生のテンプレだね)
テンプレみてえな世界に生きたい——俺はうっかりそう望んでこの世界に落とされたわけだが、偉大なる()女神ファレシラ()は、その願いについては完璧に守ってくれているらしい。
(……今は、マジでそういうのどうでもいいんだが)
俺は異世界のお役所仕事を見物しつつ、焦りに焦っていた。
テンプレ通りなら——そして、たぶんそうなると思うのだが——このあと俺はキツネのババアに鑑定されて「おお、ファレシラ様の加護があるー☆」みてぇな称賛を受けるのだろうが、そんなことより今はオークだ。
「こら、カッシェ。暴れちゃダメよ?」
「ぬはっ……!?」
儀式を無視して周囲を探索したかったのだが、母が俺をギュっと抱きしめた。さすがはレベル17だ。俺のレベルは現在7だが、手足をまったく動かせなくなり、俺は「あうあー」と無意味に叫んだ。
オークがどんな姿をしているのかは〈鑑定ゲーム〉のタイピングで覚えている。ブタの顔をした太った半裸の
「では、次の子じゃ……」
老婆が再び全身を青白く発光させ、俺は背筋が寒くなった。
——この儀式、終わったらどうなるんだろう?
儀式が終わったらお祭りは終了か? もしそうだったら、俺は死ぬ! どうやって死ぬのかはわからないが、俺に「死にます☆」と宣言したのはこの世界を統べているというクソ女神ファレシラだ。
実際、あいつは俺を殺るだろう。なんの躊躇いもなく俺や家族を殺す気がする。
——落ち着こう。ていうか、まあ……俺が死ぬのはギリOKだ。俺は一回死んでるし、そのときは別に痛くなかったし……だから、俺が死ぬということは重要じゃない。
俺を抱きしめて優しく微笑んでいる「母」が、俺をたまらなく焦らせていた。
「——
パルテという金髪の子に続き狼の少年が鑑定を終わらせた。少年は俺やパルテより年増のようで、二本足で立って鑑定結果を聞いている。彼は鑑定結果を理解していないだろうが、レベル17の「母」に拘束されている俺は、自由にされている狼の子がうらやましかった。
村人が雑な拍手をした。続いて老婆は黒猫のポコニャさんを向き、その腕に抱えられた子猫に〈鑑定〉をかけた……!
「む……こ、これはッ……!」
老いた狐の声に村人たちがしんとした。
「この
「「「 すっげえ! 」」」
ずっと気のない拍手をしていた村人が拍手喝采し、黒猫のポコニャさんが目に涙を浮かべながら娘の猫耳を撫でた。よくわからんが、ボクの隣のミケさんが俺TUEEEしていらっしゃる。
オークを見つけて殺さなきゃ——焦る俺にとって、ミケさんはありがたかった。
老婆が怒鳴った。
「しかも、ふおおッ、この娘ッ……! 剣の
「「「 な……!? 」」」
村人たちが鑑定結果に絶叫した。ポコニャさんも「ニャー☆」と号泣し、狐のババアは衆目が静まるのを待つはめになった。いいぞミケ。頑張れミケ。本人は超眠そうにしているが、村の凡愚に才能を見せつけてボクのために時間稼ぎしてくれ。
「——聞いたかナンダカ!? 俺の娘は、お前の息子に負けてねえ!」
ポコニャの旦那たるヒゲも、もっともっと感動に泣きわめいて良いんだゾ!?
——しかし無情にも時間は過ぎた。
レベル17の母に抱きしめられた俺はまったく身動きが取れず、書紀のウサギが体を青白く輝かせた。村人たちは「ミケ」のステータスが村の戸籍に追加されるのを拍手で見送っていて——焦りまくっている俺はオークの探索を諦め、すがるように〈ホーム〉と念じた。
(ホーム! なんでもいいから、クエスト達成のヒントをくれ!)
そして現れたホーム画面で、俺はついにヒントを見つけた!
「なッ!? おおおおおおお!」
狐のババアが俺の代わりに絶叫した。村人たちが驚き、広場がシンとする。
「し、信じられぬ……!」
とか言ってるババアを無視して、俺は赤いバッジに白抜きで〈4〉と書かれた〈修行アプリ〉を起動した。
いつからバッジが現れていたのだろう? 蜂を殺して目覚めてからこっち、もっと早くホーム画面を確認していれば……!
後悔は後にして〈修行アプリ〉を起動した俺は、叡智アクシノが用意した通知画面を読んだ。
〈レベルが7に上昇したため、カオス()は新たな修行が可能です。ただし難易度が調整されましたので、どのスキルにSPを使うかについてよく考える必要があります……〉
画面にはそんな日本語が表示されていて——その時、
「「「 ファッ……ファレシラ様の加護だとォーーーーッ!? 」」」
村人たちの怒号が耳を貫き、俺は無事、自分が「俺TUEEE☆」したと悟った。異世界転生のお約束なので「俺、なんかやっちゃいました?」とばかり、うぜえドヤ顔をしておく。
——その努力は無駄ではなかったらしい。
狐のババアが鑑定結果を叫び、村人たちが大騒ぎし——母が得意げに笑う中、俺の脳内に怜悧な声が響いた。井戸を覗いた時のような叡智の声だ。
〈——おめでとう。偉大なる女神・ファレシラ様から、村人たちを驚愕させ、女神ファレシラの偉大さを示した報酬として、1SPが与えられます〉
(…………はあ? SP?)
俺は突然の通知に戸惑ったが、脳内に響くアクシノは無視して続けた。
〈まあ順当な褒美だな。あの子猫が無力とは言わないが、あの子猫の直後に、満を持して鑑定されたのはポイントが高いぞ!
——そうだな、ついでにワタシからも1SPをくれてやろう。
それというのも、あの子猫に加護を与えている冒険のニケ()とか剣のアレ()とかコブシ()とか……連中は神界きっての脳筋どもでな? あんなアホどもが叡智たるワタシより称賛されるのは我慢できないッ!〉
叡智の女神が毒づく声に混じって、狐のババアの絶叫が聞こえた。
「ふおおおお!? その上、なんということじゃ……わしの〈鑑定〉は対象に与えられた加護のレベルを見通せるはずじゃが、わしには歌様と叡智様がこの子に与えた加護のレベルがわからん……! あえて言葉にするなら、ひねった輪のようなものが見え、横棒に点がついたような記号が見え……!? 意味がわからん! この老いた狐には、この子に与えられた加護のレベルは測定不能じゃッ!」
「「「 おおぉーーーー!? 」」」
俺の耳に、ちょっと気恥ずかしくなるくらいの称賛の声が届いた。俺の「母」はとろける顔をして「いやぁ、たいしたことないっすよ☆」などと自慢し、ポコニャさんが悔しそうにするのが見える。ごめんなさい。うちの「母」がマジでごめんなさい。
猫獣人の母娘をダシにして、怜悧で知的な声が売りのはずの
〈ふははは! どうだカオス()よ、村人の反応を見たか!? そうだな、冒険のニケは認めてやっても良いが、剣や拳の筋肉馬鹿が叡智のワタシを超えることは無い! おまえもおまえだぞ? 偉大ですっごいワタシの加護に、改めて感謝するがいい!〉
わけのわからん状況だったが、ファレシラと叡智からもらった2SPはありがたかった。俺は挑戦できるゲームの増えた〈修行アプリ〉を吟味しようとして、
〈……おい、偉大なるワタシとファレシラ様の眷属。重ねて警告するが、多少周囲を見たらどうかね?〉
アクシノに言われてハッとした。
◇
村の広場の雰囲気が変わっていた。
さっきまで俺のステータスに興奮していた村人たちは急に不安と興奮の入り混じった顔になっていて、太鼓と歌が再開していた。村人たちは酒を楽しみながら俺に——というより、俺の母に「がんばれ!」だの「早くしてくれ!」と声をかけていて、俺の「母」はそれに頷いていた。
「ナサティヤ、それにポコニャよ……お前たちは“応援”を望むか?」
狐のババアが、まるで答えを予見するように尋ねた。
「産休中だけど、私とポコニャは〈
「あちしも同じだよ、
突然、野太いブタのような悲鳴が聞こえた。村人たちが
鑑定アプリで学習した通りの「化物」が、五体もいた。
オークだ。どれも身長三メートルはある。ヒトの体にブタの頭を持つ怪物たちは、いずれも一戸建ての二階の窓から覗いてやっと目の高さが合うような巨体だった。
豚どもは全員武装解除され、両手・両足に鎖をはめられていた。どの豚も腰に鹿柄の皮を巻いている他は全裸と言える姿で、首輪に繋がれた鎖に引かれ、恨めしげな表情で村人たちを睨みながら歩いている。
「……あの、わたしどもは服屋ですし」
「うちも道具屋です。どうかこのお金で……」
パルテとかいう蝙蝠の幼児と、ルガウとかいう狼の子の母親がそれぞれ村長に小銭を手渡した。老いた狐は金額を確認すると頷いて、下がるように言い、見物している村人たちが
「——では、ウユギワ村の新たな子らに『経験値』を授ける! 皆もよく知る通り、レベルの高い者は死ににくい……偉大なる女神ファレシラよ、我らが村の新しい子らに、健やかなる日々を!」
狐の老婆が叫んだ。
「パルテとルガウは、我らギルドが用意した2つのパーティに加われ。ミケとカオスシェイドは、それぞれの親と共にオークと戦うのじゃ! おお、パーティは四つじゃの。五体のオークのうち、残り1体の経験値は早いもの勝ちじゃ!」
見物人たちが酒を飲みながら「早く」だの「食わせろ」と叫んだ。鎖に繋がれた五体のオークが唸り声を上げたが——その声はだいぶ弱っていたし、村人たちはよだれを垂らしていた。
豚の魔獣はなにしろ「豚」だ。村人たちの表情を見るに、「オーク」は食料らしい。
狐の老婆が叫んだ。
「冒険者ギルドの皆々よ、よくぞ五体ものオークを用意してくれた! 親子がもしもオークを倒せなんだときは、例年通りトドメを頼むぞ!?」
鎖を引く冒険者たちが獰猛な笑みを浮かべ、俺は母に抱かれたまま、一体のオークの前に立った。鎧を着込んだ父が隣に立ち、シャツとスカートにマント姿の母に尋ねる。
「……こうなるかもって警告したのに。おまえはどうして鎧を着てくれないのかな?」
「あら、私はそもそも身軽さが大事な斥候よ? 後衛のポコニャだって鎧は着てないし……この子と私を守ってみせて。あんたはカッシェの『お父さん』でしょ?」
「あーあ、ラヴァナも頭を抱えてやがる……戦力的に、ムサはあっちにつかせるべきだな」
父・ナンダカはため息をついた。
「ラヴァナとポコニャの娘は、ミケと言ったか——予想外だった。ほんとならパーティ総出でカオスシェイドのためだけに戦う予定だったのに」
両親の会話を聞きながら、俺はホーム画面の〈手紙〉に新着メールを見つけた。
このタイミングだ。内容はある程度予想できた。
問題は、今開いて良いのか、後に取っておくべきかだ。
……停止だよなね? 時間停止のはずだ。修行の時間を与えてくれるんだよね……?
「——それでは……始めいっ!」
狐のババアが叫び、俺は好奇心の誘惑に負けた。
〈おお勇者♪ ついに約束の時は来た……☆〉
メールを開くと、☆や♪が飛び散った邪神からのメッセージが目に飛び込んできた。
〈わかってますよね? これはわたしがあなたに課した最初のクエストですが、わかっていますよね……?
——失敗したら、わたしはあなたと家族を皆殺しにする〉
メールの本文は、それだけだった。
俺は〈思考加速〉を、「時間停止」というチートを期待してメールを開いたのに、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます