その2 人だから。

これカビてんじゃね?

2週間前に炊いて、それ以来ずっと炊飯器に入りっぱなしだったやつ?



新井:「イケモトさん、このごはんは?」


イケ:「はい。驚かれましたか。珍しい米です。」



おおう、珍しいのか。

もしかして、珍しいのは色じゃなくて、形とか味とかそういう意味じゃないでしょうね?



イケ:「この米は、魔力を高める栄養素が含まれているんだそうです。」


新井:「だから緑色?」


イケ:「そうみたいですね。」


新井:「私が食べても平気でしょうか?」


イケ:「他の食材は気になりませんでしたか?」


新井:「私が食べてた物と同じように見えます。」


イケ:「でしたら大丈夫だと思います。たぶん。」



「たぶん」だよねえ、そうだよねえ。

本当に大丈夫かどうか誰にもわからないよね。

異世界人だもんね。


基本的にビビリの私だけれど、食べ物となると違う。

何かあったらそれはそれ、食べなくて餓死するよりはマシ、と開き直った。



うめえや!



イケモトの作った海鮮鍋は、日本のそれと同様の美味しさだった。

緑色の米も、味は白米とほぼ変わらなかった。

そういやベトナムかどっかに、緑色の米があるとか聞いた事があったような気がする。

それとはまた違うんだろうか、これは。


イケモトの気遣いで、私はベッドに座る形で食事をしている。

それでも、長時間その姿勢を維持するのは腰が許してくれなかったから、時々横になって休憩しながら食べた。


全て食べ終わったところで、「ごぎそうさまでした」と言うと、イケモトが「おそまつさまでした。」と返す。

...まったくもって日本ですよねえ。



入る物があれば、出る物もある。



新井:「あの、トイレはどこでしょうか?」


イケ:「はい、お連れします。」


新井:「あ、え、あ、お願いします。」



普通なら、場所を教えてもらうだけなのに...。

恥ずかしいけれど、立ち上がるためにイケモトの身体につかまって、連れて行ってもらわないと、痛過ぎて耐えられない。

さすがにトイレの中まで同行するのはお断りだけれど。


トイレは洋式便器だった。

姿勢を変える度に痛い。

が、が、我慢だ、和式よりはマシだと思え...。


辛さに耐えながら、私は自身に不必要となったアレコレを排出する事に成功した。


ふぅ...と一息吐く。

そして右の壁面を見るが、ボタンは見当たらない。

手元や左側も見たけれど、やっぱり無い。


手動式かと思い、「う˝っ」と声を漏らしながら立ち、便器全体を見て探した。

ところが、大▲小▼と書いてあるアレすらも、ノットファウンドだった。


ヤバいよヤバいよ...。

某お笑い芸人の声が脳内再生された。



イケモトを呼ぶか?



フッ...今日の...私の...ブツは...存在感抜群だ...。

いつものゴルフボールなんかじゃないんだぜ...。

それをだ、召喚士様を私が召喚してだね、お見せするわけにはだね...いやいや、大きさの問題じゃねぇわ。

女として人として、守るべきモノがありますざます。


まだ私が、私自身でやれる努力があるはずだ。

最善を尽くせ、1人でできる最大限まで。

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