チャーシューの次はローストチキン?
それからおしゃべり好きな蝙蝠様はいろいろおっしゃってくれた。
彼らの世界は基本天使様と蝙蝠様の勢力が二分していて12枚の羽の王を中心に組織は構成されているという。
12枚の羽の王が亡くなれば10枚の羽の中から1人、12枚の羽に進化するという。それは誰かというのは全く分からないらしい。
それよりも羽増えるんだ……
切り落とされたらまた増殖すると思ったけどそこは増えないらしい。
美しいのは対の羽であって今のような奇数の羽はみっともない、それなら羽を切り落として対の羽にする方がまだましだという彼らには彼らの美意識があるらしい。
いみふー。
さらにあのダンジョンのレンガ造りの様式やこのドームの建物の様式も蝙蝠様の世界の文化と言う。
そこは花梨が素敵と褒め称えればちょろい蝙蝠様は誇らしげに髪の一本さえ通さない緻密な設計のこの建築物の造りの事を誇らしげに言ってくれた。
悪いが俺達の世界じゃ標準、というか残ってはいるけど新たにというのはなかなか少数になりつつある建築方式。
どこかのテーマパークのようにはしゃぐ花梨さんを見ながら
「肉食系魔物のお肉の臓器はさすがに食べるのは危険よね」
なんてダンジョンに向かって投げ捨てている様子を思い出しながら確かにごみ箱機能もついているいつも綺麗なテーマパーク、最高じゃん! って感じで素敵と言うのは反論しない。
さらに意外な事実が分かった。
「回廊にはすでに我らの先兵が潜伏している。2枚羽や4枚羽の者たちが中心に崩壊する世界の代わりの新天地を探して居る。もちろん羽なしの同胞たちだって出口を探し、険しい道のりの合間にも仲間を増やしながら我らにふさわしき新天地を求めて!!!」
オーバーリアクション気味に両手を広げ夢を見るようにのけぞりながら高笑いをする蝙蝠様に嫌な予感を覚えた。
「おい」
「なんだ」
気持ち良さそうに笑う蝙蝠様はここに出現した時のようなごみを見るような目を俺達に向けて
「俺達みたいなサイズの黒くて固い羽が4枚ある6本足の奴ら、お前らの仲間か?」
顔が引きつりそうになりながらも聞けば
「ああ、そうだ。
あんな醜い姿なのに4枚羽をもつのはその増殖力と潜伏能力の高さ、そして情報伝達能力の高さはもちろんしぶとい生命力。後続隊を導くための先兵としてあいつら以上の使い捨ての駒はないだろう!」
思わず顔を両手で覆って泣いた。
花梨も泣いた。
林さんはもちろん千賀さん達も絶句。
だってそうだろ?
あのGなんて呼んでいたやつらが、殺虫剤でイチコロの奴らがまさかの侵略者たちの先兵だとは誰が思うのだろうか。
ましてや見目麗しい天使様や蝙蝠様と同胞だなんて誰が思う……
「連絡では今までいくつかの異世界を通り過ぎたようだが我々にふさわしい文化すらない野蛮な地だというから多少時間は時間はかかってしまったらしいが漸くだ。
逆に道をたどってやってくる訪問者がいるくらいだ。
我らが暮らすにふさわしい文化もあり、そして我らの為に働くための労力も持つ者たちもいるという事。この情報を早く持ち帰らなくてはな!」
どんだけのんきだよっ!!! 突っ込みどころ満載の独演だった。
まず、俺達が負けたら帰れるという最悪の状況は考えておこう。
召喚されてここにやって来たのにどうやってここまでやってくるのだろうか。
そもそも今まで自分の世界に引きこもってたくせに本当にやってくるつもりはあるのだろうか。
俺の突っ込みだけじゃ足りないという様に林さんが頭を抱えてこの無計画な侵略がそれでもここまで進んでいた奇跡に呻いていた。いや、これは数撃ちゃ当たるって奴か?
もう勘弁してくれと思うも
「なら、あの鎌を持った鳥頭もお前の仲間か?」
工藤が慎重に聞くも
「鳥頭が鎌を持つ?
はっ!我らの同胞に、そしてあいつらにも我らの様なこの美しい姿を持たない下等動物が武器を扱えるわけがないだろう」
何処が美しいと突っ込む前にぞっとした。
あの借金鳥がまさかの蝙蝠様たちとは別の存在と言う。
それを理解した工藤や林さん、千賀さん達もだったらあれは何なんだとまた不明な勢力の出現に冷や汗を流すも
「さて、おしゃべりはここまでだ」
言えば蝙蝠様の前に黒い球体がいくつも浮かび上がった。
俺も黒い球体を浮かべ、雪は攻撃態勢に入る。岳がバットを構え……
花梨はロープを握りしめていた。
「おい、お前あいつをチャーシューにでもするつもりか?」
「豚はあんただけで十分よ。あれは一応羽があるからね。
ローストチキンに決まってるじゃない」
工藤よ、なぜそこで花梨に突っ込んだと思ったものの花梨はぺろりと舌なめずりして
「見た目のいい男を縛って火あぶりにする、なかなかときめくでしょ?」
どこまで本気かわからない言葉に返事は保留にさせてもらうのだった。
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