第53話 サバンナの最終決戦1

「そりゃぁ!」

「フェスタ、後ろ危ないよ。それっ!」


 フェスタは大剣を振り下ろし、モンスターを撃破した。

 けれど後ろががら空きでモンスターに襲われる。

 グリムはサポートとしてしっかり撃破すると、背中合わせになった。


「ありがとうグリム。あっ、グリムも危ないよ!」

「見えてるよ。せーのっ!」


 フェスタもグリムがモンスターに襲われそうになっていた。

 助けようと大剣を振りかぶろうとしたが、グリムは見えていたから大鎌で弾く。

 距離を無理矢理稼ぐと、大鎌を頭にコツンと振り下ろして容易くやっつけた。


「流石グリム。いつだっていい感じだね」

「私はできることを必死にやっているだけだよ。それにこのくらいじゃ私達は負けないでしょ?」

「それもそうだー。それじゃあ次々、ドンドン行こう!」


 グリムとフェスタはサバンナの奥へと向かって歩いていた。

 モンスターがドンドン襲い掛かるが、大剣と大鎌で倒して回った。

 ポイントも気が付けば二百近く溜まっていて、もう一位確定だ。

 そう踏んだ二人はせっかくだからと中ボスを探しに向かった。


「もうここまで来たら一位確定だよねー」

「そうだね。他のプレイヤーがポイントを稼ぎまくってたら変わるけど」

「そんなことあり得ないよー。さぁさぁ、中ボス中ボス」


 そうは言っても中ボスなんて狙って見つけられるはずもない。

 特に最終日は事前情報は一切無し。どんなモンスターが居て、どんな地形かも分からない。

 そんな状態で中ボスを見つけられるとは到底思えないのだが、グリム達は諦めず根気よく探し回る。

 途中で出て来る雑魚モンスターは一掃し、とにかく中ボスにだけ意識を集中していた。けれどなかなか見つからず、時間だけがいたずらに過ぎていた。


「マズいよグリムー! このままじゃ時間が無いよー」

「あと一時間。夕日が沈んだらお終いだ。どうする? 諦める?」

「諦めるわけないよ! このまま突っ走って絶対に倒すから!」

「だろうね、諦めるわけないよね。分かってた」


 フェスタは一度言いだしたら絶対に曲げないし妥協もしない。

 グリムもそれに付き合わされるけど別に怒ってない。

 むしろやる気が目覚ましく出て来た。

 二人はもう少し根気よく探し回ることにし、サバンナを歩き回ってみた。

 すると遠くの方から声がしたのをグリムとフェスタは聞き逃さない。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 視線を釘付けにされた。

 太陽の方角から男性の叫び声が上がり、何かと思って走ってみる。

 すると段々男性女性問わず悲鳴が聞こえ出し、それに合わせてモンスターの怒号も響く。


「バルガラァァァァァァァァァァァァァァァ!」


 モンスターの怒号が耳をつんざく。

 耳障りに感じ始め、グリムとフェスタはとにかく走った。

 どんな凶悪モンスターが居るのかとワクワクする気持ちはなく、むしろ大勢のプレイヤーを薙ぎ倒している光景が脳裏に浮かんだ。


「どうする。もしもたくさんプレイヤーがやられてたら」

「そうだねー。まあ関係無いよ。私達の方が強いんでしょ?」

「当たり前だよ。さあ行こう!」


 もうそろそろモンスターが見えてくるはず。

 少しの傾斜を上って行くと、眼下に巨大なモンスターの影が見える。

 グリムとフェスタは立ち止まった。流石に今までに戦ったことがないタイプのモンスターに少しビビる。


「ちょっと待ってよ。アレが中ボスなの?」

「だろうね。だけどその周りに居るのはみんな……」


 モンスターは虎の様な見た目をしていた。

 だけど現実の虎とは比じゃないくらい大きくて、目の色もSF風の赤いグラス製だった。

 鋭い爪でプレイヤーを引き裂いて来たのか、周りにはたくさんのプレイヤーが転がっている。

 今戦っている男性が最後の一人のようで、今にもボロボロで倒れそうになっていた。


「くっそ! こんなところで負けるかよ」


 男性はロングソードと盾を装備して虎系モンスターにぶつかっていく。

 果敢に攻めるがその動きは不格好で、鎧の重量が合っていないのか機敏じゃない。

 そのせいだろうか、簡単に捕捉され鋭い爪で引っ掻かれる。

 ぺチンと超強烈猫パンチをまともに喰らってしまい、男性は吹き飛んだ。


「ぐっはっ!」


 岩壁に叩き付けられて男性は嗚咽を漏らす。

 立ち上がろうとするが足はヨレヨレで結局立ち上がることはできずに粒子になって消滅した。何て恐ろしいモンスターなのか、周囲にいた他のプレイヤー達も消えていた。

 まさに中ボス。いやボスの風格を持ったモンスターだ。

 グリムとフェスタは助けに行くことも出来ずただ見つめるだけだったが、それでも次は自分達が挑む番だと思うと少し非力に思えてしまった。けれどグリムは負けるビジョンを見ていない。むしろ勝つ予感しかしなかった。

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