第8話 死神の装備を手に入れた

 静寂の包む洞窟の中。

 グリムはグリム・リーパーに勝利した。

 振り返ると、そこには姿形もなく、まるで最初から居なかったみたいに思えてしまう。

 そんな中、グリムは不思議とグリム・リーパーに掛けられた言葉に違和感を覚えた。


「何を以って見事なんだろ」


 何故モンスターにそんなことを言われたのか。グリムは分からない。

 だけど認められた感じがしたのは、嫌いではなかった。


「それじゃあ早速……」


 兎にも角にも、グリム・リーパーも居なくなったので、意気揚々と金宝箱の中を確認することにした。

 その時だった。不意に、ファンファーレが聴こえてきて、目の前にバーがポップアップした。


「うおっ。急になに? スキルを獲得しました?」


 グリムは目を回す。

 あまりに急だったので何が起きたのか一瞬分からなかったが、如何やら知らず知らずの内にスキルを獲得してたらしい。

 しかも二個同時に表示される。


「どんなスキルだろ。ちょっと楽しみ」


 タッチして、スキルの詳細を確認する。

 そこには【観察眼】と【看破】と言う二つの似たようなスキル名が表示されていた。

 どっちも目に関係しそうで、グリムは少し想像ができてしまった。



スキル【観察眼】

条件:一定の時間、一定の視覚情報を血眼になって観察する。

説明:物事をよく観察し、見識を深める眼。些細な視覚情報の変化に敏感になる。


スキル【看破】

条件:正体不明の正体を看破る。

説明:正体不明の正体を見破ることができる眼。変装や透明化などを、寄り目にした上で目を凝らすことで見破ることができる。



(なるほど、本当に似てる)


 グリムは声には出さないながらも、そんな風に思った。実際にはちょっと違うけど、片方は使い道が限定されていた。

 しかしせっかく手に入れたスキルなのだ。

 ありがたく貰っておく。


「さてと、気を取り直して」


 グリムはスキルの確認をしつつ、再び金宝箱に向き直る。

 中身が何か気になってしまった。


「流石に鍵は掛かってないよね?」


 グリムは金宝箱に触れてみる。

 鍵は掛かっていないようで、持ち上げてみたが軽い。中には一体何が入っているのか、グリムは期待しながら箱を開けた。


「よいしょ。うわぁ!」


 グリムは目を見開いて驚いた。

 金宝箱の中にはたくさん入っていたのだ。

 それにしても如何してこんなに入っているのか、物理的におかしいとは思いつつも、グリムはまず一つ取り出す。


「コレは……コート?」


 真っ黒なコートだった。

 フードも付いていて、何処となく不気味に映る。

 それこそ、さっき戦ったグリム・リーパーを連想させるような雰囲気を放っており、グリムはゴクリと唾を飲む。


「えーっと、〈死神の外套〉?」



〈死神の外套〉

分類:ユニーク装備(呪いのアイテム)

レア度:X

効果:DEF−X 装備変更不可

説明:死神を模した特別な外套。低確率で物理攻撃を無効化することがある。同種のユニーク装備を装備した場合のみ、特別な効果を発揮する。



 なんだか凄そうだけど、色々気になる所があった。

 全部で三つ、“ユニーク装備”“呪いのアイテム”“効果欄”どれもこれもが、一癖ある。

 しかしながら、グリムは初めてのアイテムが嬉しくて、しかも金宝箱の中にはセットで入っていたので、全部取り出して何の気無しに装備してみることにした。


「他にも入ってる。しかも全部死神装備だ」


 ここでようやくユニーク装備の意味が分かった。

 ユニーク装備、メニューバーを開き、ヘルプの欄を見てみると、用語解説のコーナーがある。

 グリムは装備する前に調べてみた。



〈ユニーク装備〉

説明:ユニーク装備とは、通常の装備品とは異なる経緯で入手することのできる装備。特定のシリーズで構成されており、この世に二つとない。同種の装備で揃えることにより、ユニーク効果を得られるものもある。特定のモンスターを最初に討伐した場合などに手に入れることが稀にある。



 と書かれていたので、グリムは目を丸くする。

 如何やら相当レアな代物のようで、グリムはにんまりと笑みを浮かべで、早速装備した。



■グリム 

性別:女

LV:2

HP:50/50

MP:25/25


STR(筋力):27

INT(知力):26

VIT(生命力):24

MEN(精神力):102

AGI(敏捷性):22

DEX(器用さ):58

LUK(運):25


装備(武具)

メイン1:〈死神の大鎌〉ATK:−X

メイン2:


装備(防具)

頭:

体:〈死神のシャツ〉〈死神の外套〉DEF:−X

腕:

足:〈死神のレギンス〉DEF:−X

靴:〈死神のブーツ〉DEF:−X

装飾品:〈死神のネックレス〉ステータス:−X


スキル(魔法を含む)

【精神相殺】【観察眼】【看破】



 残念なことに、グリム・リーパーは倒していないので経験値は入っていない。

 故にレベルは2のままで固定されていた。

 それにしても気になることがある。何故かステータス補正に−が付いていた。これだと戦えないのでは? そう気が付き装備を外そうと試みるが、如何やらできないらしい。


「あ、あれ? もしかして、装備変更不可ってそういうこと?」


 気が付けばここまで使っていた剣が装備一覧から外されていた。

 如何やらこの呪いのアイテムというのは、呪いのアイテム同士を引き寄せ、それ以外を邪険に扱うらしい。

 グリムは自分の選択が間違いだったと悟り、頭を抱えた。


「ちょっと待ってよ。装備変更不可って、それだけがじゃないの? しかも、この〈死神のネックレス〉凄く嫌なんだけど。私、こんな痛い趣味ないのに……はぁ、いや待って! まだユニークスキルに可能性が残ってる」


 グリムは最後の希望、ユニークスキルに全てを託す。

 ここまで変なアイテムに押されてしまったが、全てはユニークスキル。一体どんな効果があるのか気になって、スキル一覧を確認。

 如何やらそこには表示されないようでスクロールすると、薄く表示されていた。


「コレかな?」


 タッチして確認した。

 すると水面から上がって来るような演出の後、全体が赤く発光し鎖のようなものが巻き付いていた。もう一度タッチすると鎖が外れ、黒い普通のスキルとは全く異なる様相で表示される。


「凄っ」


 演出の凝り様にビックリした。

 けれど感心したのも束の間、早速スキルを確認する。


「お願い。せめてこれくらいは……はっ?」


 スキルをタッチして確認した。

 名前は【ユニークスキル:マイナス固定】とされていた。

 何がマイナスなのか、グリムは考えたが分からず、説明を読んでみた。



【ユニークスキル:マイナス固定】

条件:〈死神〉装備を着用(定員1名)

説明:ユニーク装備〈死神〉を装備したことで得られる特別なスキル。全てのパラメータ補正を一律のマイナスで固定する。



 全くと言っていいほど意味が分からなかった。

 ステータスのパラメータではマイナスにはなっていない。しかしこのスキルによるとマイナスでカウントするらしい。

 何がしたいのか、何がしたかったのか、全くのハズレ装備を掴まされ、グリムは初日して絶望し、ぐったりと四つん這いになって絶句してしまった。


「そんな、これじゃあただ痛いだけの格好をしただけ……とほは」


 何だか心が虚しくなる。

 グリムはMENのパラメータが高いことに心底願い、街へと戻ることにした。

 一体何がしたかったのか、この時のグリムはまだ何も気が付いていないのだった。










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