第3話 ステータスを確認しよう

 気が付くと、グリムは噴水の前にいた。

 ちょうど時間になったのか、天高く水が噴き上がる。


「うわぁ、冷たい!」


 水飛沫が上がった。

 全身に降り掛かると、あまりに本物すぎたので、一瞬ここが何処か忘れてしまいそうになった。


「そっか。私、ゲームの世界に……凄っ」


 言葉を失ってしまった。

 目の前の噴水も、自分の体に纏わり付いた水滴も、それこそ今歩いている地面も、全ては偽物。プログラムで構築された架空の世界とは思えないほどリアリティがあり、VR技術に感嘆とする。


「これがVRゲームの世界。プレシャスコード・オンラインの世界なんだ。凄い、凄すぎてそれしかない」


 グリムは明らかに周りからあぶれていた。

 噴水の周りは広場になっていて、たくさんの人が歩いている。

 視線が幾つもあったのは気が付いていて、「初心者だ」「ルーキーさんだ」とニヤニヤしている。

 初心者だからって舐められないように、グリムもすぐさま我に返ると、近くを見回す。


「とりあえず座ろう」


 グリムは近くに空いていたベンチがあったので、腰を下ろすことにする。

 真ん中に座って見回していると、何をしたら良いのか悩む。


「とりあえず冒険に出たら良いのかな?」


 グリムは街にいても話にならないので、早速冒険に行くべきかと思う。

 しかしやっぱり辞めた。

 まずは自分のステータスを確認したい。


「私のステータスって、よく見てなかったけど如何なってるのかな?」


 グリムはとりあえずメニューバーを呼び出すと、空中に向かってタッチする。

 その中から、ステータスバーをタッチして、自分のステータスを呼び出す。

 自分にしか見えないように設定し、ジーッと目を凝らした。



■グリム 

性別:女

LV:1

HP:40/40

MP:20/20


STR(筋力):25

INT(知力):25

VIT(生命力):23

MEN(精神力):100

AGI(敏捷性):21

DEX(器用さ):55

LUK(運):23


装備(武具)

メイン1:〈普通の剣(ショートソード)〉ATK:10

メイン2:


装備(防具)

頭:

体:〈普通のシャツ〉

腕:

足:〈普通のパンツ〉

靴:〈普通のシューズ〉

装飾品:


スキル(魔法を含む)

【精神相殺】



「ふーん、分からん」


 結局見ても分からなかった。

 とりあえず分かるのは、特定の二つ以外は非常にバランスが良いこと。


 それ以外はほとんど均等で、特化させようとしたのが災いしていて、綺麗ではなかった。

 しかし自分らしさが出ていて好きだ。


 けれど何が突出してあるのか。

 器用さのパラメータを意味するDEXと精神力のパラメータを意味するMENが優れていた。


「特に精神力はあえて100を越えさせてみたけど、なにが変わったんだろ」


 正直、100を超えて何か変わったのか、まるで分からない。

 体感だと違和感は何もなく、グリムは自問自答する。


「器用で精神力が高いって、戦闘にほとんど関係ないような気がする……あれ?」


 気が付かなくても良いことに気が付いてしまう。

 グリムは如何したものかと思ったが、流石に伸びやすいとは言えこれは困る。

 今、グリムの持っている武器は剣なので、どちらかと言うと、筋力のパラメータを上げた方が良かった気もした。自分の選択肢をミスった気がして、溜息を吐きそうになる。


「まあいっか。それより気になるのは、スキルの欄だよね。【精神相殺】ってなに?」


 あまり良いイメージがない。

 説明が見たいので、タッチして表示した。



スキル【精神相殺】

条件:MENのパラメータをゲーム開始時点で100以上であること。

説明:精神系攻撃の無効化。マイナス補正を調整し、プラス補正へと変更する(数値上では変わらない)。



 と表示される。

 グリムは首を傾げた。

 マイナス補正とはそもそも何なのか。

 ゲームを始めたてなので、そんなものに巡り会うことはない。グリムはそう考えることにした。


「とりあえずスキルは一つ手に入れたけど、攻撃に使えるわけでもないのか」


 ちょっと残念。最初はレベル上げをするのが常套だ。

 それが捗らないとなると思うが、とりあえず街を出てみることにした。


「街を出て冒険をしよう!」


 グリムはベンチから腰を上げた。

 街の外へ行き、早速モンスターを倒してレベル上げをすることにした。

 その時のグリムの表情は、とてもワクワクしていた。



 

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