第144話
えーっと、ギルド長と騎士団長が連れ立ってどこかへ行った様子からすると、ちょこちょこ顔合わせてる?
……ってことはよ……。
騎士の訓練所付近でレッドに会う可能性がこの先もあるってこと?ノーメイクでウロチョロして遭遇を防ぐためには……。
A案、訓練所には近づかない。
B案、化粧をきっちりして近く。
A案は、筋肉見学ができない。ノー筋肉生活。
B案は、騎士に不快感を持たれる。筋肉に嫌われる生活。
「ひんぎゃぁっ!」
ショックのあまり、小鹿のように、プルプルと震える足で屋敷に戻る。
「あ、すいませんっ」
その途中、大きな箱を抱えた人とぶつかった。
箱が傾きばちゃりと何かが地面に落ちた。
「す、すいません、ああ、お、奥様っ!かかっていませんか?」
青ざめた調理人の服装の若い男の子が、慌てて大きな箱を地面に置いて、おろおろとしている。
「ごめんなさい、仕事の邪魔をしちゃったわよね……」
ショックのあまりろくに前も見てなかった私が悪い。
ばちゃりと落ちたものを拾って男の子が箱に戻してる。
「それ、どうするの?」
男の子は屋敷のほうから歩いてきている。
「これは、捨てます」
ん?
首をかしげる。
「えーっと、傷んでるの?特に臭いもひどくなさそうだけど」
箱に若干顔を近づけて臭いをかぐ。
……うん、傷んだ臭さはないものの、臭い。血の匂いに獣の臭いに……。
「あの、奥様はご存じないかもしれませんが、これは内臓です」
そうね。詳しくはないから部位名は分からないけど。まとめて呼ぶとしたらモツよね。
赤もつ……心臓や肝臓は入ってなさそう。白もつ……ホルモンとかよね。血まみれで赤いけども。
「とても臭くて食べられたものではありません」
ああ、それ、聞いたことあるよねぇ。戦後日本だっけ?食糧が十分にない時代でも捨てられてたって。で、ある時一人の女性が捨てるならと安く手に入れて、丁寧に洗ってすごく手間をかけて食べたと。そのおいしさが広まり、今では当たり前に食べられるようになった……みたいなさ。
つまり、しっかり洗えば食べられるんだよね。
……まぁ、しっかり洗うというのがそもそも大変な作業なのだろうけど……。でも、流水洗いだと腸がしっかり綺麗に洗えるらしい……ってことはよ?
「ちょっと、洗って食べられるところは残したいんだけど」
「え?あの、食べられるところを間違えて捨ててはいないはずです」
えーっと……?
「王都では、このあたりの内臓……モツも食べるのよ?」
嘘だけど。
王都でも食べないけど。食べてたのは前世の日本だけど。
「え?」
「水魔法使いを呼んで、洗い方を教えるわ。洗える場所も準備してほしいのだけど」
というわけで、調理場の隅っこ。解体とかもする場所で、モツを洗ってもらう。
まずは軽く汚れを落としてもらい、水を変えてもみ洗い。水を変えつつ何度か洗い、それから筒状の腸に水魔法で勢いよく水を流してもらう。これ大事。水をこうやって流水にして流せるからこそしっかり洗えるってなもんよ。
あ、ちなみに私は口しか出させてもらえない。ドレスが汚れるといけませんのでって……。
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発売日: 2024年10月01日
著者/編集: 富士とまと(著), riritto(絵)
シリーズ: 流刑地公爵妻の魔法改革~ハズレ光属性だけど前世知識でお役立ち~
レーベル: アース・スター ルナ
出版社: アース・スターエンターテイメント
発行形態: 単行本
ページ数: 300p
ISBN: 9784803020120
カクヨムは画像を貼る方法がないんですね……知らなかった……(まだ初心者すぎて使いこなせない……)
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