Hero is Coming!
豊嶋裕二朗
第1話 防音室にて
授業が終わり、ざわざわとし始めた教室を横目に窓の外にある桜の葉を見ていると、いつのまにかきれいな緑になっていた。
ゴールデンウィークも終わり、高校2年生が始まってから一ヶ月が経った。
あっという間だった気がする。
去年の今頃は、部活にまだ入っていなかった友達と教室の後ろで夕方まで喋っていたなと思いながら私は後ろの扉を静かに開けて教室を後にした。
教室の後ろで喋っていたあの時間に特別な思い入れがあるわけではない。だが、最近はよく思い出してしまう。
特にやりたいこともない私は部活というものにピンと来なかった。だから、同じクラスになった子とただ喋るあの時間が、人様が思い描くような「高校生活」と言えるものだっただろう。でもそんなグループも1人、また1人と抜けていき、気がつけばグループ自体がなくなっていた。そして私は家と学校をただ往復するだけの日々になっていた。
そんな日々に特別不満があったわけではない。ただ平穏に暮らすのも悪くないと思うし、やりたいことがピンと来ない自分にはこれがあっているのだろうと受け入れていた。
だから、あの日、エレキギターの音を防音室の空いた扉から聞いた日 自分が取った行動を今思い返しても驚いてしまう。
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