第2話出会い

 朝ゆっくりと起きだしダイヤコングの罠を仕掛けたポイントへ向かう

まだ罠に掛かっていないのを確認し 木漏れ日の当たる場所であおむけになって

空を見上げる


前院長の事を考えていると 瞼が重くなり目を閉じる

3歳の頃だっただろうか 前院長を探している時に ある壁に違和感を覚えた

手をかざしてみると 頭の中に様々な記号や模様が流れ込んできた

その一つ一つを組みなおしていると 不意に壁に穴が現れ中に転がりこんだ

 そこには 驚愕の表情をした前院長がいた

「クロノス何故ここに入れた?」

「壁に触っていたら 頭に色々浮かんできたから整理したらフワッとした感じがして

ここに入れた」

前院長 名をトワ セルディユスと言う

トワはクロノスを見つめながら優しく手招きした

クロノスが近づくと頭に手を置き撫でながら

「クロノスは凄いのう 儂の結界をすり抜けてくるなんて 今まで誰一人いなかったのに

そう言えば おまえももう3歳になるな ちょっと魔力量を見てみるか クロノス おへその下ぐらいに意識を集中してごらん」

クロノスは意識を集中してみる へその下当たりが熱くなってくる

「おお! こりゃ凄い おまえはとんでもない魔力を持っているな」

その日の夜から魔力を自由自在に扱うための特訓が始まった

先ずは寝る前に次元収納の拡大の為 魔力が枯渇するまで広げていく

トワの蔵書で知識の勉強 冒険者達による実践訓練

実戦では何度も死ぬ思いをしながら魔獣を狩った

おかげで7歳になる頃にはBクラスの討伐には苦労しなくなったし 次元収納も限界を感じなくなった

トワは錬金術の心得もあったので錬金術も手ほどきしれくれた

12歳で冒険者になり半年もしない内にⅭランクになった ランクアップの報告に行った時に

以前から体調を崩していたトワが亡くなった


優しい爺ちゃんだった


 そんな事を夢現に思っていると 誰かが体を揺すっていた

害意のあるものの侵入を拒む結界を張っているので悪意あるものでは無いはすだ

「お兄ちゃん 大丈夫か 生きてるか」

薄っすら目を開けてみると 黒髪をショートカットにした12歳ぐらいの女の子が

心配そうに見つめていた

「お兄ちゃん 腹減っているのか? 動けるか?」

少女はクロノスの肩に手をまわし立たせようとする

「ああ 大丈夫だ 別に腹が減ってるわけじゃない」

クロノスは立ち上がり少女に笑いかける

「まあ どっちにしてもここは危険だ 一休みするにしても 家に来なよ」

やや強引に手を引っ張られてついて来るように言われる

10分程歩くと切り立った崖の前に着いた

「隠蔽魔法か 見事なものだ」

 クロノスが呟くと

「凄いな お兄ちゃん分かるのか?」

崖の壁をすり抜け中に入ると 二人の少女が居た

「誰だ?」

茶色の耳をピョコンと立てて 猫獣人の子が警戒する

緑の髪をしたエルフらしい子はキョトンとしてこちらを見ている


「まあまあ 行き倒れていたから連れてきたんだ」

連れてきてくれた少女が俺の前に立って説明してくれる

「そうか 腹が減ってるもは辛いもんな」

猫獣人の子が木の実を差し出しながら俺に食うように促す

「あ ありがとう」

木の実を食いながら辺りを見回す

草を積んだベッドらしきものとエルフの子の周りに薬草と鍋と素焼きの陶器ぐらい

しかない

「まあ 座りなよ」

草を積んだベッドに座り

「お前たちは ここに三人で住んでいるのか?」

三人を見回しながら聞くと

「そうだよ 夏前から三人で住んでる あ!自己紹介するね 私はシャルロットって言うの12歳よ」

ここに連れて来た少女が答える

「私はリリエル 見た通りエルフで11歳」

恥ずかしそうにエルフの子が言う

「俺はマオだ 猫獣人で10歳だ」

茶色の耳をピコピコさせながら興味深そうに俺を見ながら言う

「俺はクロノス ちょっと用事があって あそこに居たんだ」

三人とも元気そうではあるがろくなものを食べていないのか瘦せこけている

戦場で奴隷商人に捕まり移送中に隙を見て三人で逃げ出して

この場所を見つけてシャルロットが隠蔽の魔法をかけて住んでいるらしい

「折角 隠蔽しているのに知らない人間とか連れてこない方がいいんじゃないか」

俺が聞くとシャルロットが悪びれもせず

「だって お兄ちゃんは悪い人じゃないって気がしたから」

「そうか ありがとう」

それから 少し話をして泊まらせてもらうことになり横になった




シャルロットの隠蔽魔法は外からは岩肌にしか見えないが 中からは外が見える

その為 朝の陽ざしで目を覚ましたクロノスは右腕にしがみついたシャルロット

左腕にしがみついたリリエル 腹の上で香箱座で寝ているマオを見て苦笑した


シャルロットとリリエルの腕をほどき起き上がろうとした時マオが目を覚ました

「マオ 狩に行くんだけど一緒に来るかい?」

マオはクロノスの腹の上で伸びをして目をパチパチさせながら

「うん 一緒にに行く」と頷いた

二人でそっと塒を出て得物を探していく

クロノスは木の上から野生の猪を見つけマオと一緒に近付いていく

「マオはここに居て」

そう言うとクロノスは猪に向かって小石を投げつけた

小石が当たった猪はクロノスに気づき彼に向かって走り始めた

クロノスは猪がぶつかる直前にジャンプし 猪の首を上から切り落とした

近くの川場に持っていき血抜きをし 解体していく


臓物は穴を掘って埋めて 毛皮は脂をナイフでこそげ落とし川で綺麗に洗い

風魔法で乾かしていく

 

肉を切り分け 横で石を積んで火をおこす

次元収納から取り出した鉄板の上に肉を置き焼き始める

「マオ 悪いがシャルロットとリリエルを呼んできてくれ」

涎を垂らしながら魅入っていマオはハッとし「分かった」と言うや走っていった


肉がいい感じに焼けた頃三人が走ってきた

「「「いい匂い!!」」」

やってきた三人に其々に肉の入った皿を渡す

「昨日は俺がご馳走になったから お返しだから 遠慮無く食べてくれ」

「「「頂まーす」」」

三者三様に食べ始める

「「「美味しい」」」


「お兄ちゃん お肉なんて久し振りだよ ありがとう とっても美味しい」

「にいに 本当に美味しい ありがとう」

「兄貴 狩も上手いし料理も上手いし 最高だぜ」

シャルロット リリエル マオの中でおれの呼び方が決まったようだ

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