第17話執事長side
三年後――
オエル坊ちゃま、いえ、当家の旦那様が結婚してから早三年。一時はどうなる事かと思われましたが、今では旦那様も心を入れ替え奥様を大切にされております。ですが、問題が全て解決したと言う訳ではありません。お二人は未だに清い関係を維持されたまま。
しかも……。
「その話は本当か?」
「はい。如何しましょう……」
メイド長からの相談。
それは
奥様はメイド長に「別居をするので準備をお願いする」と告げてきた。
寝耳に水の話に最初は驚いたメイド長であったが、奥様の話を詳しく聞くと、結婚当初からの条件の一つだと言うではないか!更に詳しく聞いたところ、「三年になっても子供が出来なければ大抵の家は離婚か、もしくは愛人をつくるものだわ。まぁ、旦那様に離婚の意志はないし。もっとも自分の子供をつくる意志すらないわ。養子を持つと当初からの条件ですもの。その養子を選び養育するのは旦那様のお仕事で他家の私は参加しない事になっているの。養子の子供の養育関係で別居をする事が約束ですからね。そろそろ滞在先を決めないといけないわ」と奥様が笑っておられたようだ。
その様な話、私は旦那様からは全く聞いておりませんでした。
いえ、そもそも今の旦那様は奥様との婚姻契約を覚えていないのでは?奥様のお話によれば、婚姻契約には「別居をする事は本人の決めた日で。ただし結婚三年目から三年以内の間に伯爵家を退去する。ただし、希望があれば別宅は用意する」としか明記されてないとか。
これは一度、旦那様に確認しなくてはいけない。
そう思い行動に移したのですが。結果は最悪の展開でした。旦那様は全く覚えておらず、それどころか婚姻契約をした事自体忘れ去っている様子で……。
「そんな事よりも、今年の結婚記念日は何を贈ろうかな!」
笑顔で言う旦那様に一瞬、奥様の勘違い発言だったのでは?と思ったほどでした。そんな筈はないのに。私は頭を抱えてしまった。何とかしなければならないと思いながらも良い案が浮かばぬ日々。
そして、ついにこの日が来てしまいました。奥様はこのお屋敷には二度と帰って来なくなったのです。ただ、律儀な奥様は屋敷の者達一人一人に挨拶をして出て行かれたのでした。
本当に出来た奥方様です。
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