【第一章完】この厳島甘美にかかればどうということはありませんわ!

阿弥陀乃トンマージ

第1章

とある依頼

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 周囲をレンガで覆われた薄暗い道を歩く若い女性が二人。


「今のところ特に変わったことはありませんわね……やはり気のせいでは?」


 長く綺麗な金髪の女性が口を開く。黒いシャツとパンツの上に白いジャケットを羽織っている。その美しく凛々しい表情には気品と自信が同居している。


「……油断は禁物」


 金髪の女性のやや後ろを歩く、黒髪のショートボブの女性がボソッと呟く、神社の巫女さんが巫女舞で着るような衣装を身に纏い、背中に何かを背負っている。こちらも端正な顔立ちだが、どこか陰なる雰囲気を漂わせている。金髪の女性がややうんざりした顔で反応する。


「……そんなことは重々承知しています」


「念には念を……」


「そのフレーズの極端な少なさ、なんとかなりませんこと?」


「口数が多いとクレームをつけてきたのはそちら……!」


「グオオッ!」


 二足歩行の白いワニのような化け物がレンガの壁をぶち壊して現れ、女性たちを襲う。


「やっとお出ましになりましたわね! 参りますわよ!」


「援護する……。~~♪」


 黒髪の女性が背中に背負っていたものから音を奏でる。白ワニの動きがピタッと止まる。


「お仕置きの時間ですわ! はあっ!」


「グオッ⁉」


 金髪の女性が掛け声を発すると、白ワニが吹っ飛び霧消する。金髪の女性が目を丸くする。


「あらら? それだけ? まだイントロすらも終わっておりませんのに……」


 薄暗い道がパッと明るくなる。黒髪の女性が諸々を確認して、頷きながら呟く。


「なるほど、締め切り間際の白いワニか……問題はクリアされたようだ……帰還しよう」


「う……うん……?」


 あるオンボロな雑居ビルの一室で、中年男性が目を覚ます。金髪の女性が覗き込み尋ねる。


「お目覚めになられましたね。いかがでしょうか。良い夢は見られましたか?」


「……は、はい、不思議と心がスッと晴れやかになりました!」


「それは何よりですわ! また何かあれば気兼ねなくご相談下さい!」


 金髪の女性が陽気な声で応える。中年男性はお礼を言って、お金を払い、その場を去る。


「ふっ、さすがは人気のある漫画家……金払いが良い……これで今月はかなりの儲け……」


 黒髪の女性が笑みを浮かべる。金髪の女性が窓から外を眺めながらため息交じりで呟く。


「これはあくまでも『副業』、早く『本業』でお金を稼ぎたいものですわ……」


「前途は多難……」


「この厳島甘美いつくしまかんび、『夢世界ダンジョン』攻略者ではなく、スーパースターになりたいですわ……!」


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