第20話 噂話 フリオside

 王立学園の高位貴族専用の食堂で、フリオは友人の1人に呼び止められた。



「なぁおい、フリオ! お前の婚約者… コンドゥシル男爵家のオメガ! あいつが昨日行ったパーティで、派手に着飾って遊んでいたけど… お前はあの婚約者を、野放しにしておいて平気のか?!」


 フリオの友人も、デシルの友人ミラドルの誕生パーティーに、招待された婚約者のエスコートで参加していたのだ。



「デシルが遊んでいた? 何だよそれ?」

 ああ、面倒だな! こいつは噂話が好き過ぎて、いつもくだらない話で長くなるんだよ! きょうはアオラに会えなくて、イライラしているのに!! だからと言って、変に無視すると今度はオレを噂話のネタにしようとするし… 本当、面倒な奴!! 


 おしゃべりで口の軽い友人に、フリオは、ムッ… としながら答えた。



「だからあのオメガ、他のアルファたちに目を付けられてたぞ?」


「どういう意味だよ?!」


「ああ、もうだからさぁ! 婚約者のお前は欠席してたし… パーティの招待客たちの間で、そろそろお前らが婚約解消するかもって、噂が流れていたんだよ! それで、あいつはあれだけ綺麗なオメガだし… コンドゥシル男爵家は裕福だから、結婚相手にちょうど良いって、独身のアルファたちが、お前の婚約者を狙い始めたっていう話だよ!」


 ベラベラとここぞとばかりに、話し始める友人。


「婚約解消なんてしないさ!」

 フンッ…! デシルが?! 俺だってアオラと結婚したいのに、あいつとは婚約の時の契約があるから、婚約解消できないんだぞ?!


「そうなのか? それにしては、あのオメガ… お前がいなくてすごく楽しそうだったから… もしかしてお前って、嫌われているのか? まぁ一人でパーティに行かせるような婚約者なら、嫌われて当然だけどな!」


「そんなことない! デシルは昔から、オレに夢中だったさ!」

 そうだよ、デシルに限ってそういう心配は無いさ! あいつはオレにしか興味が無いからな…


「昔… て、いつの話だよ?! オメガの気持ちなんて、毎日変わるものだぜ? オレの婚約者も本当、ころころ気持ちが変わるし? お前、捨てられるんじゃないの?」

 友人はニヤニヤと揶揄からかうように、嫌な笑みを浮かべた。



「まったく、デシルの奴! そんな噂を流されるなんて、あいつ注意力が足りないんだよ! これだから、平民上がりの男爵家なんて嫌なんだ! ああ、面倒だな!」


「そういう、お前の伯爵家だって、コンドゥシル男爵家と共同事業を始める前は、貧乏過ぎてコンドゥシル男爵家よりも、貧しい暮らししてたって有名じゃないか?!」


「うるさい、黙れよ! 今はお前の家より、オレの家の方が裕福なんだぞ?! 共同事業だってオレの父が、上位貴族たちにたくさん知りあいがいたから、成功したんだ!」

 クソッ! いつもこれだ! 何かにつけて、コンドゥシル男爵家の方がヌブラド伯爵家よりも裕福だったと、言われるし! ああ、ムカつく!!



「ああ、わかった! わかった! 怒るなよフリオ! オレはちょっと心配だから、昨日のパーティのことを教えてやっただけだろ?」


「フンッ…! だったら、最初からムカつくことを言うなよ!」


「とにかく、教えたからな?! 後からオレに文句言うなよ?」


「言うかよ!」


「じゃあな! オレは婚約者と昼食をとる約束してるから…」

 

 ひらひらと手を振りながら、去ってゆく友人の後ろ姿をにらみ、フリオはまた、フンッ…! と鼻を鳴らす。


「・・・・・・」

 まったく、デシルの奴が面倒なことするから悪いんだ! やっぱりオレがしつけてやらないとダメなのか?! クソッ…! 面倒だな!!



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