第15話 休息

ローズとパーティを組んでから半年が過ぎた。

王都ではお祭りをやっているらしい。

何のお祭りだろ。

屋台が多く出てにぎわっている。


「ねぇ。」


「ねえってば。」


ぼくの袖を引っ張るシオリ。


「あ、ごめん何?」

にぎやかで声がよく聞き取れないんだよな。


「あれ、食べたい!」


シオリは身長が随分ずいぶん伸びて、ぼくとあまり変わらないくらいになっていた。

ぼくは16歳になった。


子供って成長早い‥。

子供っていうよりも、猫って半年で大きくなるからそういう事なのかな?


赤い果実の串が刺さっている甘味を口にほおばるシオリ。

身長もだけど‥体も女性らしくなってきた。

黒い髪に黒い猫耳、黒い尻尾があって妖艶ようえんな雰囲気をかもし出している。

シオリって美人だったんだな。

邪な考えをしているぼくとは正反対に、シオリははしゃいでいる。


「日本とは違うけど、こういうのもいいなぁ。」


たまにぼくに分からない言葉を言う。

ぼくがシオリを見つめていると


「ううん。ここの世界も好きだよ。」


「良かった。」

シオリは微笑んだ。



****



ローズは酒場で飲んでいた。

冒険者も休みが必要だと思い、今日は久々の休みの日にした。


「まぁ、恋人もいないんだけどね‥。」

休みになったといっても特にすることは無く、美味しい物食べて飲んで寝るだけだ。


「そういえば、あの噂どうなったんだろ。」


魔王復活の噂‥しばらくすると急に無くなったのも何だか変な気がする。

そもそも何でそんな噂が流れたのか…。


「勇者が現れたからじゃないですか?」


ローズの思考を読んでいたように、答えが返ってきた。


「賢者オリット」


最近冒険者ギルドで見かけるようになった男性だ。

黒髪の長い髪は紐で束ねている。

茶色のレンズの眼鏡をかけていた。

目が光に弱いとか言ってたっけ。


「オリットでいいですよ。勇者の噂が流れたんでしょう、だから魔王も復活するかもとか‥。」


「なるほどねぇ。そうかもね。」


賢者と呼ばれているのには理由があり、かなりの魔法を使いこなすらしい。

見たことはないけど。


「んで、オリットさんどうしたの?何か用ですか?」


「私も貴方のパーティ ”ローズウッド” に入れてもらいたくて、どうですか?」


そんな気がしてたけどね。

なーんか胡散臭い感じするんだよねこの人。


「即答は出来ないや、ごめんね。」


「そうですか。他にも仲間がいらっしゃいますものね。そのうち会わせてくださいね。」


オリットは笑みを浮かべた。

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