第3話 第3宇宙からの戦線布告〜ゆるーく戦争の開始〜

 ガブエラとは喧嘩別れした。

 アリエルとも今は喧嘩中だ。

 何がうまくいかないんだろうか?

 悩んでいるときに、オッサンが現れた。


「おいっすぅ。アルターイちゃん元気ー?」


 挨拶だけでムカつく野郎だ。

 小太りのオッサンは腹の肉を揺らせながら駆け寄ってきた。

 ここは、俺の宇宙にある俺専用の惑星だ。

 欲しいものは全て魔法でどうとでもなるので、一人で困らない。

 そう思い、ひっそりと過ごす用の憩いの館に土足でオッサンは現れた。


「いや、もう顔見せんなって!お前と出会ってから俺はどん底なんだよ!アリエルは離れてしまったし、ガブエラとも喧嘩中だ。でも、どうせ全部知ってて来たんだろ?」


「もう、そんなに邪険にしないでね。今日はメッセージを持ってきただけだよ」


「誰からのだよ?」

 

 アリエルからのメッセージを期待した。


「ブブー!ガブエラからでしたー」


「心読むのやめてくれよ。マジではずい!」


「なんて言ってんだ?もうお前みたいな侵略者とは会いたく無い。でも、勝手にくるなら、戦争だ。だってさ」

  

 いちいちムカつく言い方だ。


「戦争ってどういうことだよ?宇宙間で戦争なんてできないだろ?」


 というか、昨日すでに侵入して10人拉致ってきた。


「なかなか行動が早いね!これは本気でガブエラは怒ってるよ。早く手を打ったほうがいいだろうね」


「やり方がよくわからんから、ガブエラと詰めるよ」


「ガブエラはアルターイと会いたく無いんだろ?」


 それじゃあ、頼るところは一つしかない。

 彼はこういう時、いつも第8宇宙へ来てしまう。

 こういう時というのは、気持ちに変化があった時だ。

 辛い時、悲しい時、嬉しい時、楽しい時、その全てを第8宇宙は包み込んでくれる。


 祭りで!


 そう、第8宇宙は祭りがテーマの惑星を持っている。

 ヒトはあらゆる魔術を駆使して祭りを盛り上げる。

 火魔術「火花」を打ち上げて夜空を照らす。

 太鼓のリズムが心臓を打ちつける。

 水魔術「果実酒」で作られた美味しい酒の香りはアルターイの鼻腔を通り抜ける。

 神輿やだんじりも出ている。

 今日は和風の祭りだ。


「やぁ、アル。今日はどうしたんだい?」


 アルターイは第8宇宙担当天使であるベルゼブを見つけた。


「おう、ベル。ちょっと酒を飲みたくなったから来たんだよ。今は何がオススメだ?」


「そうだな、今はやはり果実酒だな。中でも桃の酒がフレッシュでうまいぞ!」


 年中日焼けした素肌に白い歯が輝く。

 程よくついた筋肉に精悍な顔立ちの青年は、見た目通りの爽やかな声で答えた。


「それじゃ、それを貰おうかな!」


「いいぞ!それじゃあ、樽ごと飲んでいけ!あはは!」


 快活な笑い声を上げながら、惑星の子ども達に持って来させた。

 天使達は惑星に住む子ども達との距離感もそれぞれ違い、ベルゼブは自分のすぐ近くまで近寄らせる。

 アルターイはもちろん遠くから見守る方法を取っている。

 アリエルは天使であることを隠して積極的に関わろうとする。

 この違いがアルターイとアリエルを決別させた直接の原因であった。


 アルターイの子どもが酒を樽で運んできた。

 ここは酒場の一角だ。


「ネオン、ありがとう。今日の服は特別かわいいね」


 ベルゼブが子どもを褒める。

 すると、褒められたネオンと呼ばれた子どもは顔を真っ赤にして店の奥に引っ込んだ。


「かわいい反応だな。相変わらずお前の宇宙では楽しませてもらってるよ」


「それはよかった。それはそうと、何かあったのか?」


 お酌を受けながらアルターイは頭の中で話を整理する。

 アルターイのきおくでは、突然自分がガブエラに絡みに行ったのが原因だと認識していた。


「ガブエラの態度が気に入らなかったから、ヤツの宇宙まで行って一発かましてやってきたんだ。そしたら戦争を吹っかけられて困ってるんだよ」


「あぁ、ガブエラか。彼女は頑固なところがあるからなぁ。でも、アルが絡みに行ったんなら、やりすぎたんじゃないか?」


 図星だった。

 完全に図星を突かれたアルターイは返事に困る。


 しかし本音で語るしかない


「戦争は避けたいんだ。俺の宇宙では、戦争が何度も行われ、多くの犠牲をはらった。だから、それは避けたいんだ」


「うーん。ガブエラはそこまで考えてないんじゃないかな?だって魔法でなんとでもなるだろ?戦士の記憶操作や、死者の蘇生まで、なんでもござれ」


「そうか、俺はそれを勝手に禁止してるから、気づかなかったな。わかった。あとは場所だな。なんとかしてみるよ」


 なんとかはできないので、イヤなヤツに会うしかない。

 神だ。

 あの胡散臭いオッサンはほんとになんでもありだ。

 ありとあらゆる答えを知ってるが、教えてはくれない。

 未知なる可能性を探っているらしい。

 

「やぁ、最近よく会うね。僕のこと好きになったのかな?」


「戦争の、場所がないんだ」


 どうせ把握してるから短く伝える。


「なぁんだ、そんなことか。作ればいいんだよ。もう一つ宇宙を。戦争専用のね。コレで中立公平な戦場ができるわけだ。面白そうだから私が作ってあげるよ」


 ポンと音が鳴ると神の間に黒い塊が一つできた。

 本当にあっさり作るな。

 こうして戦争の準備は進んでしまった。


ベルゼブイラスト

https://kakuyomu.jp/users/ahootaaa/news/16817330663275504263

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