24. 相手の動きをコントロールしろ
「あっはっは! 基礎スキル30未満で猿2匹に突っ込んだか!」
待ち合わせ場所で待つこと1時間。以前、ロコさんからギンジさんは遅刻癖があると言われていたのである程度は心構えが出来ていた。けれど、相談内容を話した直後に大爆笑されてしまうと……なんかこう、モヤモヤしてしまう。
でも今日は私からお願いして、時間を作ってもらっている立場だ。このモヤモヤは表に出さず謙虚でいることが大事!
「あぁ、すまんな。別に馬鹿にしてるわけじゃないんだ。だからそんなむくれるな」
内心が表に出てしまっていたようだ。……コミュ力のスキル値ってどうやって上げればいいんだろう?
「まぁ、なんだ。30はあくまで目安であって、絶対にそれ以上ないと駄目だって話じゃない。それにチャレンジ精神が無くただ言われたことだけをする奴にはこのゲームは合わんだろうさ」
「チャレンジ精神は持っていたんですが、問題の解決策が分からなかったんですけどね」
「そんなことはないさ。解決策として俺に相談したじゃねぇか。相談できる相手が居るのにしないのは怠慢だ。ま、自分の頭を一切働かせる気がなく相談ばかりする奴も駄目だがな」
私に気を使って言っているのではなく、ギンジさんは本心からそう思っていることが伝わり私は胸のつかえが取れた。ギンジさんの言われていた目安である30に届いていない状態でチャレンジし、あまつさえそれに失敗して相談している状況に気後れしてしまっていたのだ。
「さて、ナツの相談に対する回答だが、言葉で伝えるより体験して学んだ方が良さそうだ。ナツ、武器を構えてみろ」
体験するという言葉に、前回ここでギンジさんにベコベコにされたことを思い出して少し身震いする。そして私は警戒を露わにしながら武器を構えた。
「前より構え方が様になってるじゃねぇか。よし、じゃぁ先に宣言しておく。今からお前さんを正座させるから、お前さんは気を抜かずに警戒し続けていろ」
「えっと、それってどういう意味で……っ!」
ギンジさんの言っている意味が分からなかったので、もう少し詳しく聞こうとした瞬間に”突然頭に衝撃を受けた”。
頭に衝撃を受けたことで後ろにのけ反ってしまい、その後続けて膝裏に衝撃を受ける。その後更に肩へ手を置かれ下へと押し付けられる……ペタンという音と共に私は正座させられていた。
「……え?」
「こんな感じだ。今何が起きたか分かったか?」
「えっと……まず頭を手刀で叩かれて、後ろに回ったギンジさんに膝裏を蹴られてから肩に手を置かれて正座させられました」
「おぉ、ちゃんと把握出来てるじゃねぇか。最初は訳も分からずって奴も多いんだがな」
「いえ、状況的に推測しただけで仕掛けられてる時は全く分からなかったですよ」
本当に全く分からなかった。短剣を構えてギンジさんをしっかり見ていたはずなのに、次の瞬間には頭に衝撃が走って気付いた時には正座していたのだ。
「今までは相手の動きを観察して回避に専念し、相手が疲れてきてから反撃するって戦略だったが、相手が複数いる場合はそれだけじゃ詰む。まぁ当たり前だわな、敵さんはただ同じ行動を繰り返すだけじゃねぇ。状況に応じて地形も活用するし連携だってとってくるAI積んでんだからな」
「それは文字通り痛い程痛感しました……」
「ははっ。やっぱ体験する以上の学びはねぇな! ……でだ、ここからが問題なんだが、そんな敵に対応するための次の戦い方が『相手の動きのコントロール』だ」
「……さっき私がされたみたいにってことですね」
「そうだ。相手に行動の主導権を渡したままひたすら避け続けるんではなく、こっちが主導権を得て相手を望む通りに動かしてやるのよ」
それからは以前ここでやった適性検査の時と同じだ。ひたすらギンジさんにベコベコにされながら、自身の行動によって相手の行動をコントロールするというテクニックを体に衝撃と共に刻み込まれる。そんな訓練を2時間程ぶっ続けで行ったあと、私が疲れて動けなくなったことで今日の訓練は終了した。
「一先ず明日は1対1で戦って、主導権を持ち続ける戦い方に慣れろ。それである程度コツが掴めてきてから2匹同時に相手するといい」
「はい、ありがとうございました。明日頑張ってみます」
今日はもうくたくただ。レキには悪いけど、プライベートエリアに帰ったらすぐログアウトして休もう。
明日は猿との訓練の後、湿地帯に連れていくから許してね。
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