第2話 夫に一目惚れした辺境伯夫人
わたくしの気が変わらないうちに結婚させてしまえと思ったお父様が急いだせいで、なんと1ヶ月で結婚する事になった。
政略結婚は婚約期間が短いこともよくあるけれど、その中でもわたくし達の結婚はとても早い方だった。何度か顔合わせの機会はあったが、その度にお父様がなんだかんだと言い訳してロバート様に会わせてくれなかった。結婚式の日までロバート様と会えなかったのは確実にお父様の策略だ。
お父様の行動に怒った弟は、結婚式の後お父様を引退させて当主になった。
お母様と弟は結婚に反対していた。エイダを付けてくれたのもその為。エイダは身を守る術にも長けているので、いざとなれば帰って来なさいと言われていたわ。
色々覚悟を決めて臨んだ結婚式で、わたくしは初めてお父様に感謝した。まさか、多くの令嬢からお見合いを断られているロバート様がこんなに素敵な人だったなんて。
背が高くて、たくましくて、とっても優しい目をしていたわ。式の時もずっとわたくしを気遣って下さった。貴族の娘だからいつ政略結婚をするか分からないし、恋をしても辛いだけ。そう思い込んでいたせいで、わたくしは男性に興味がなかった。
けど、恋はするものじゃなくて落ちるものだったのね。僅か1時間の式で、わたくしはすっかりロバート様に夢中になった。でも、問題ないわ! だってお相手はわたくしの夫なんだもの! ありがとうお父様!
わたくしは絶対幸せになれる。ロバート様とあんな事やこんな事を……と邪な事を考えていたのがいけなかったのか、結婚式の後すぐにロバート様は出陣してしまわれた。お母様と弟は呆れてしまい、わたくしを連れて帰ると控室で怒っていた。けど、ロバート様と離れたくないから必死で2人を説得したわ。
お父様はわたくしが残ると言えば得意げに鼻を鳴らしていたけど、帰ってすぐ弟から代替わりを迫られて今は別荘に住んでいる。ほぼ軟禁ね。お母様が別荘に愛人を次々と呼んでいるそうよ。愛人を把握されてるとは思ってなかったみたいで、お父様は毎日震えているらしいわ。
ロバート様が帰って来るまでは寂しかったけど、屋敷のみんなは優しくて、義理のお父様もお母様もとても良くして下さる。
帰ってきたロバート様は、会うたびに困ったことはないかと聞いてくれる。
この間の誕生日には美しいドレスと綺麗なブレスレットを頂いたわ。ブレスレットは、毎日付けている。とっても美しくて、見るだけで幸せになるわ。
庭に咲き乱れる薔薇はわたくしの為に整備したと聞いている。隣の大陸にある珍しい品種の薔薇をロバート様の指示で揃えたそうだ。
ものすごく、大事にして頂いてると思う。本当に、幸せだ。ただ一点を除いては。
「昨日も寝室に来て下さらなかったわ。ねぇエイダ。わたくしのなにがいけないのかしら……。もしかして、嫌われてしまったのかしら?」
結婚して半年。
お仕事から帰って来られて2週間。
ロバート様は一切わたくしに触れようとしない。夫婦の寝室で待っていても、来てくれない。
こんなに好きなのに本当の夫婦になれなくて、寂しい。
「まだ戻られて2週間ですからね。後処理も残っていますし、旦那様はお出かけや泊まりも多いです。お誕生日にあれだけ盛大な祝いをして頂けたのですから、嫌われていませんよ。大丈夫です」
「そうよね。わたくしもっと頑張るわ」
「簡単な方法があります。旦那様に抱きついて、口付けしてみればよろしいのです」
「……うー……それは恥ずかしいわ……」
まだまだ前途多難だけど、頑張ろう。ああ、部下と真剣に話しているロバート様はかっこいいわ。
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